Too much snow
モンテネグロなのにモンテブランコ

2012.12.14 / Montenegro(Hani i Hoti国境付近~Catinje) 本日 自転車57km走行 : Total 42455km走行
天気:曇のち雪 自転車折りたたみ:1 ネット:1
朝飯→パン 昼飯→パン 夕飯→パン / 宿→Hotel Sport In(22ユーロ)

(English)
 Today it was snow. I could arrive at the town but here was too much snow!



 あ~、体が痛いし、眠い。このあたり、砂利ばかりで地面がゴツゴツなのだ。たまにある芝の場所には雪が積もっていたりして、全然いいテン場がなくて。一応マットはあるのだが、薄手のヨガマットだから、それなりの効果しかなくて。そんな寝心地悪いテントなので、朝になったらすぐにテントをたたんで走り出すぞと、思っていたのにも関わらず、朝になって明るくなってもテントから出られない。外が寒すぎるのだ。今日は一段と冷える。当たり前か、だって、周囲は雪だらけだもんな。

 やっとの思いでテントから出てみると、昨日まで晴れ渡っていた空に、雲がどんよりと張っていた。ええ~、ティラナで確認した天気予報では天気が崩れるのは明日からだったのに・・・よく当たる欧州の天気予報も、この時期の気まぐれ天気にはついていけないのか。

 なんてこった。昨日、ことごとく期待を裏切られ続けたけど、青い空のしたで美しい雪化粧の山々が見れるから、この道を選択してよかったかなって思っていたのに、その最後の救いすら、消し去られるとは・・・曇天の下の山だと、魅力が半減しちゃうんだよなぁ。

 が、裏切られ続ける期待はこんなもので終わりではなかった。この後、空に漂っていた雲はどんどん怪しさを増していき、靄ともあいまって、山の姿を消してしまった。この時点で、もはやこの道をチョイスした期待は全て破棄され、ゼロ状態になったのだが、事態はゼロ状態では留まらず、マイナス方向に傾いていくことになる。怪しかった雲が、ついには、ポツポツと冷たいものを降らせはじめたのだ。

 「雨・・・?いや、雪!?」

 最初は雨だったのが、山道をどんどん上るにつれて、雪になってきた。上りの山道はまだまだ続く。このまま行くと、激しい雪の中を走らねばならなくなることが予想される。

 「またアレの繰り返しか・・・」

 オイラの頭の中でアラスカがデジャブされた。あの時も、テント泊した後雪に見舞われたんだった。そしてアラスカでは、その先の走りを断念したんだった。あの時に、<季節外れの場所を走ることの無謀さ>を体験したのも関わらず、相変わらず、季節のことを考えないルート選びをして、暑すぎるだの、寒すぎるだの言っているオイラ。学習能力がない、ただのアホやんか。

 なんてことを考えながら、降りしきるミゾレを浴びながら前進するオイラ。道の途中には雨宿りできる場所なんてなく、とりあえず、ここで断念するワケにも、引き返すワケにもいかず、なんとしてでも、次の町まではいかなければならないので、進み続けるしかないのだ。そんな次の町まで、GPSでは、あと5kmほどとなっているのだが、この5kmが、とんでもなく遠く感じる。上りの山道が体力を消耗させ、冷たいミゾレが手や足の末端を冷え切らせる。視界を遮る雪や靄が、永遠にこの道が続くように見せ、心が折れそうになる。

 「ああ、もうダメだ」

 と諦めそうになった瞬間に、目の前で車が停まった。雪が降る中、運転席から降りてきた一人の男の人が「乗せていくよ」と一言言い、荷台のドアを開いてくれた。

 た、助かった・・・

 ファニーバニーごと荷台に乗り込むオイラ。運転席に戻ったお兄ちゃんが「僕、次の町に住んでいるんだ。次の町まででいいよね。あと2kmくらい。がまんして乗っててね」と話しかけてくれた。町で一番安い宿の前で降ろしてくれることになり、一安心・・・

 と思ったのは、乗っている間だけだった。「さぁ、着いたよ」と言われて、降りた世界は、まるで雪の国だった。自分で走っている時の周辺の世界は、雪はあったものの、まぁ、ちょっと積もっているな程度だった。が、車で連れてこられたココは、ちょっと積もっているどころじゃない。雪で町ごと覆われているような世界になっていたのだ。たった2kmの移動だったのに。川端康成の<国境の長いトンネルを抜けると雪国であった>ではないが、<荷台を降りたら、そこは雪国であった>という衝撃。

 あまりの雪に、一瞬感動したものの・・・

 ふおお、この雪はシャレにならん。

 と、次の瞬間には、困った印が頭の中を駆け巡ることに。とりあえず、お兄さんには、精一杯の感謝の念を伝え、降りしきる雪の中、走り去る車を見送ったものの、振り返って、積もりに積もった雪が支えになってスタンドがなくても自立できちゃうファニーバニーを眺めながら、ため息しかでない。

 今までで、一番の大雪ゾーンに突入してしまった。

 これだけの大雪ゾーンはチャリでは絶対走れない。ちょっとファニーバニーを動かすだけで、もう、ギアに雪がからみつき、ブレーキパッドが雪で埋もれる。

 ここで、こんな大変な状態ってことは、この先、北上したらもっと大変な雪状態ってことなんじゃないの?ってことは、この先はもう進めないってこと?

 いや、その前に、この町から脱出すら難しいんじゃないの?こんな雪だったら、自転車で走れないよ。

 やっぱり、あの分岐点は、左に行って、海岸道を走るべきだったなぁ・・・海岸道だったら標高低いし、こんなに雪が積もってるなんてことにはなってなかっただろうし。

 そもそも、この時期にヨーロッパを走るのが無謀だったんじゃね?おとなしくエジプトに飛んでおけばこんなことにはならなかったのに。

 いやいや、アルバニアに来たのはよかったんだよ。その後、北上せずに、南下してマケドニアに行けばよかったんだよ。

 う~ん・・・と、後悔やら悩ましいことで頭がいっぱいになったのだが、この寒い中で考えていてもしょうがない。とりあえず、まずは、宿に入ることにしようと、宿にチェックインしようとしたのだが・・・一泊28ユーロとのこと。うむむ・・・高いじゃん。親切なお兄さんが、わざわざ「この宿が町で一番安いよ」と言ってつれてきてくれたのだから、多分、ここが一番安いのは確かなんだろう。ココに泊まるしかないのだ。どうせ、この雪の中、他の宿を探すなんて気力もないし。ただ・・・ものはためしと、「もうちょっと安くなりません?」と聞いてみたところ、「ちょっと待ってて」と受付のオネエサンが奥へ。で、支配人らしき人が出てきまして。「一泊22ユーロまでならまけてあげましょう。もちろん朝食つきでね」と。朝食つきなら、納得の値段、ということで、チェックイン。

 で、チェックイン処理をしてくれているオネエサンに「この雪、いつまで降るんですかね?」と聞いたところ、「明後日くらいまで続くみたいよ」と。

 ・・・今でこそこんな雪が積もっているのに、雪が降り続いた明後日の後には、どんな状態になっているんでしょう?この町から脱出できないじゃん。こんな雪だったら、自転車で走れないよ。

 やっぱり、あの分岐点は、左に行って、海岸道を走るべきだったなぁ・・・海岸道だったら標高低いし、こんなに雪が積もってるなんてことにはなってなかっただろうし。

 そもそも、この時期にヨーロッパを走るのが無謀だったんじゃね?おとなしくエジプトに飛んでおけばこんなことにはならなかったのに。

 いやいや、アルバニアに来たのはよかったんだよ。その後、北上せずに、南下してマケドニアに行けばよかったんだよ。

 ・・・以下、延々後悔と悩みがループして続くのであった。