Valle del Silencio
ラストイベントのその前に(パイネトレッキング十日目)

2011.1.2 / Chile (P.N Torres del Paine) 本日 自転車0km走行 : Total 25061km走行
天気:晴
朝飯→パスタ 昼飯→パン 夕飯→パスタ / 宿→Campamento Torres(フリー)

(English)
 I went to valle del Silencio. That's beautiful valley.



(Español)
 Fui al Valle del Silencio. Ése es el valle bonito.
 朝3時に目が覚めた。昨日、早く寝すぎちゃったか。寝付けなくなっちゃったので、そのまま外に出て、夜明けトーレスに日が当たるのを見ることにした。ここホテル・ロス・トーレスのキャンプ場からは、遠目ではあるが、トーレスが二本、見えるのだ。外は、満天の星空。バッチリ日の出の太陽に燃えるトーレスが見れそうだ。

 さて、5時半、日が上ってきた。そして、トーレスに当たる朝日・・・あれ、手前の山が影になっちゃってますけど・・・ん~、この時期の日の上る方角からだと、こういう風な感じになっちゃうのか。もっと朝日とともに、全身が真っ赤に染まるトーレスを予想していただけに、ちょっと期待はずれの感がいなめない。

 それにしても、天気がコロコロ変わりやすいここパイネで、昨日、今日と二日連続快晴とは・・・明日の朝トーレスの目の前でもう一度朝日を拝もうと思っているオイラとしては、あと一日、天気がもって欲しいところだ。

 一応燃えるトーレスを拝めたことだし、よかったよかったと、テントに戻って二度寝。7時半に目覚めて、朝食パスタを食べ、出発。ホテル・ラス・トーレスの売店で、単三電池を購入。2000ペソと高かったのだが、GPSの電池がなくなっちゃったのと、Optioの電池もなくなりそうなので、しょうがなしに買っちゃいました。

 さて、今日の道はしょっぱなから上り。そしてひたすら上り。なかなかタフルートだ。途中、太ったおばさんが、しんどそうに道端にしゃがんで休んでいる。そうそう、今日オイラが歩いているトーレスのミラドールに続く道は、やはりパイネで一番メインの道のようで、とにかく人が多い。オイラのような荷物をどっさり抱えている人もいるのだが、結構目に付くのが、それで、山上りですか?と思わず問いたくなるほどラフな格好をしている人。車で入り込めるホテル・ラス・トーレスが麓にあるので、そのままラフな格好で挑むのであろう。

 そんな、たくさんの人とすれ違うこのトレッキング道を歩いていたら、フランセス谷で出会ったオーストラリア人の旦那さんとシンガポールの奥さんの夫婦に出くわした。「おぉぉ、ハッピーニューイヤー」再会の喜びで、ちょいとお話をしようとしたのだが、絶えず人が歩くトレッキングルート。立ち止まっていては、歩く人の邪魔になるので、短い挨拶だけして、再び分かれたのであった。そして、しばらく歩いていたら、「ヨシ!」と前から声をかけられた。今度はなんと、ラス・カレタスキャンプ場で黄色いテントを張っていた、ロドリゲスと、ドイツ人の二人組トレッカー。いやぁ、オイラの名前を覚えていてくれたなんて、恐縮です・・・って、ゲームマニアらしいロドリゲス、オイラの名前を聞いた時「あぁ、マリオブラザーズに出てくる、ペットキャラと同じ名前かい?」と言っていたのです。詳しく言うと、あれはヨッシーなのですが、まぁ、そこはおとなしく「そうです」と答えておいたオイラ。きっと、マリオのヨッシー=オイラという図式でオイラの名前を覚えておいてくれたんでしょう。

 さて、途中にあったチレーノキャンプ場で一休みしたあと、再び歩き始める。また上り。そして、ほとんど木々に覆われた林道なため、風景を堪能できずに、歩いていてもそんなに面白くない。そんな林道を抜けたら、トーレスキャンプ場に辿り着いた。テントをはって、いそいそとトーレスのミラドールへ。ここトーレスキャンプ場から45分ほどかかるというミラドール、地図上ではそんなに距離があるように思えないのですが・・・いや、なかなかキツイ崖のような上り道が続いてました。なるほど、これなら45分の所要時間も納得。あぁ、これは、一度上ると二度と上りたくなくなる道だ。明日の朝も上らないといけないんだよなぁ・・・と早くも戦意喪失。

 なんとか、崖のような道を上り終え、辿り着いたミラドール。目の前にドーンとそびえ立つ3本のトーレス。近くでみるトーレスは、独特の威圧感を持っていて、素晴らしかった。ケド、まぁ、そんなに、感激するほどのものでは・・・やっぱり、山を見すぎてきちゃったのかな。贅沢病だ。そして、山は近くで見すぎると疲れちゃうというか、飽きちゃうというか・・・1時間ほど居たら、もういいや、って気持ちになって、キャンプ地へ戻ることに。

 さて、キャンプ地に戻ったのはいいが、時刻はまだ早い。時間をもてあましてしまう。実は、ここトーレスキャンプ場からは、トーレスのミラドールに続くトレッキングルートとは別に、ハポネスキャンプ場という場所に続くもう一本のトレッキングルートがあるようなのだ。当初、まったく行くつもりがなかった、ハポネスキャンプ場へ続くトレッキングルートだが、時間をもてあましているのと、地図を見ると、1時間くらいでいけるらしいということで、まぁ、散歩がてら行ってみることにしたのでした。

 最初林道を緩やかに抜ける道が続いたので、これは、ゆったりしていていいなぁと思っていたのだが、だんだん、岩場を抜けたり、川の脇を通ったりと、道が激しくなってきた。まぁ、それでもずっと平坦なルートが続き、次々と移り変わる景色を堪能しながら、面白がって歩いていたのでした。で、ちょうど1時間ほど経ったところで、目の前に、ビニールシートで出来たほったて小屋のようなものが見えてきた。ここがハポネスキャンプ場なのか?せっかく歩いてきたのに、ここは、木々に囲まれ見晴らしがよくない。この奥には、シレンシオ谷という絶景が見れる谷が広がっているという噂も聞いていて、ひょっとしてハポネスキャンプ場まで来れば、その絶景が見れるのかなぁと思っていたのだが・・・どうやらここからでは、拝むことはできないらしい。

 残念だ・・・と思いながら、周囲を散策していると、山へと続くトレッキング道らしきものを発見。ん、ひょっとしてこれを辿っていけば、シレンシオ谷に出れるのか?好奇心が疼きはじめるオイラ。そういえば、リョウマくんが「ハポネスキャンプ場の道、クライマー(登山家)オンリーらしいですよ」と言っていたのを思い出した。あの時は、キャンプ場までの道がクライマーオンリーなのかと思っていたのだが、実はそうではなく、ここからの道がクライマーオンリーの道なのかも。ってことは、この先は、今まで以上に厳しい道が待っているのでは・・・

 好奇心と不安感。結局好奇心の方が勝ってしまいました。ここまで来て、引くわけにはいかない。道があるのならば、前へ進みたい、いやいや、我ながら、面倒な性格です。

 ということで歩き始めたのだが、いきなり急な上り坂になった。しかも、途中からかなり険しい中での岩道。しばらく上りがつづき、ようやく上りが終わったかと思ったら、今度は、ひたすら大きな岩がゴロゴロと転がっている地帯へと突入した。この感じ、フィッツロイの脇にあった<Piedras Blancas Glaciar>を見に行った時の岩場に似ている。あのときの経験があるから、この道も、すんなりと進める。いや、トレッキングとは、経験値がモノをいいますな。パイネであたふたせずに楽しみながら毎日歩けるのは、今まで失敗を積み重ねながらも挑戦してきたパタゴニアトレッキングの下地があったから。いきなりのパタゴニアトレッキングが、パイネだったら、こんなにも、落ち着いて楽しめなかっただろうと思う。

 まぁ、なんとかなりそうだ、と思っていた矢先、目の前には切り立った崖のようなところを流れ落ちる川が見えてきた。トレッキングルートらしい道筋は、その川を越えた先に続いている。まさか、この川を渡れというのでは・・・ええ、そのまさかでした。ここを渡らないと、次へは進めない。これは、さすがに怖すぎる。一歩でも足を踏み外したら、奈落の底へとまっさかさま。しかも、川の周辺は細かい砂利が積もっていて、超滑りやすそう。ん~、ここで、引き返すべきかと悩むオイラ。とりあえず、ここだけは挑戦してみよう、この先もこんなデンジャラスゾーンが続くようならば、おとなしく引き返すことにする、と決め、ここは、挑戦してみることに。まぁ、深みにはまっていく時の心境というのはこういうモンです。ちょっとだけ、ここだけといいつつ、前に進んでしまい、いつの間にやら次第に引き返せないところに辿り着いちゃっているという。

 とにかくここは、下を見ると怖いので、なるべく見ないように。そして、滑らないよう足元に細心の注意を払いながら、一歩一歩着実に進んでいく。そして・・・ふ~、渡り終えましたよ。なんとか。しかし、帰りが怖いなココ。下り道になるから、確実に下を見ないといけないもん。

 と、ここは死ぬかもと思うほどのデンジャラスゾーンは、ここだけでした。あとは、砂利道、雪道が続くも、なんとか歩いていける道。しばらく歩いていると、左手上方に、トーレスの頭が見えてきた。ついにトーレスの裏側に辿り着いたってわけだ。ああ、ここまで来れればもういいかな、と思ったのだが、先を見ると、次の峠を越えたら、シレンシオ谷の奥が見れそうな感じ。これはいくしかないでしょ、と思ってもうひとふんばり。と、その峠を越えて見えてきたのは、次の峠。意地になってしまったオイラは、次の峠にも挑む。ハイ、ここでも深みにはまっていく人間の心理パターンそのものに陥っちゃってますね。我ながら、単純な人間です。

 結局3つくらいの峠を越えたところで、ようやく奥の氷河が見渡せる場所に辿り着いた。傍にあった大きな石に腰かける。スゴクいい景色だ。苦労して歩いてきたという想いと、完全に消化試合のつもりで訪れたここで、思いがけない風景に出くわしちゃった事実と、この圧倒的な空間に誰もおらず、オイラ一人だけという状況が重なり、なんだか妙に感激したオイラだったのでした。

 写真をとりまくりたかったのだが、あいにくカメラの電池がもうほとんどない。キャノンのカメラは明日の朝焼け撮影用に、一枚撮れるようにしとかなきゃいけないんで、もう電源入れられないし。こんな時のために、と単三電池を購入しておいたのだが、なぜかその電池でOptioが動かない。えぇ~市販の単三電池で動くっていうからこのカメラにしたのにぃ。いざという時に、いざ使えないなら、意味ないじゃーん。

 まぁ、カメラが使えなかったのが逆によかったのかもしれませぬ。おかげで、心のシャッターを何度も押しました。シレンシオ谷のこの雄大な風景は、幻想として、オイラの心の中で大きく理想化されていくんだと思います。きっとパイネで二番目にいい風景だったよ、と、人に勧めることになるのでしょう。

 そして、帰り道。やはり恐怖へと陥れられたあの川越えは無事クリアし、なんとかキャンプ地へ戻ってくることができた。時刻はすでに20時すぎ。2時間くらいのオキラクハイキングのつもりだったのに、ある意味パイネで一番ハードなトレッキングをするハメになるとは・・・

 まぁ、でも行って良かった。すっげぇ満足感で満たされている。もう、このままパイネトレッキングを終了しちゃってもいいくらい。再び味わう満腹感。いや、最後に明日の朝、朝焼けのトーレスを拝むというイベントが残されているんですケド・・・また、もうこの後はどうでもいいや、なんて建前を言っちゃうと、天気の神様が意地悪しちゃいますよ・・・

 そして、最後の晩餐。こうしてパスタを作るのもあと二回。帰りたいような帰りたくないような。山篭りは、食料さえ不満がなければ、いつまででも続けられるような気がする。計画通り、明日で食料がなくなっちゃうから、帰るけど、食料さえあれば、まだまだパイネに篭っていられる。というか、むしろ篭っていたい。ん~、すっかり山篭りに魅力を感じるようになってきちゃったな。次は、ウシュアイアに行ったら、また篭るとするかな。


































本日のトレッキング15km:赤ライン