Kayak immediately filled and sank
波乱の幕開け-あと200mに届かず・・・水没、全浸水

2013.10.1 / Poland(Natkow~Opatowiec付近) 本日 自転車0km走行 : Total 48601km走行
天気:曇
朝飯→キャンプ飯 昼飯→チキン 夕飯→キャンプ飯 / 宿→川辺で野宿

(English)
 We went down a river in a kayak.



 昨日の夜、夕飯中は、焚き火で暖をとれたおかげで、温かく過ごせたのだが、テントに入って寝た後は、寒さで何度も目が覚めた。あ~、もう野宿するには寒さが厳しい季節だぜ・・・こんな時には、焚き火だ、ということで、朝起きてすぐ、木々を拾ってきて、火起こし。

 さて、起こした焚き火で、暖をとりながら、お湯沸し。お湯が沸く頃にロベルトが起きてきたので、朝飯つくり開始。といっても、沸かしたお湯でスープをつくり、あとは、マヨネーズを塗ったパンに、チキンペーストを乗せるだけのシンプルなものだが。まぁ、野外で食べる飯ってのは、こういうでも十分美味い。

 と、朝飯を食べながら、ロベルトが「ヨシは卵好きか?」と聞いてきた。もちろん好きだよ、と答えると、昨日会った農家のおじちゃんおばちゃんに頼めば、採れたての新鮮な卵が買えるとのこと。そうか、おじちゃんたちには英語通じないから、お願いしてきてよ、と言ったら、「いや、これはヨシの仕事だ。俺はカヤックの準備をしなくちゃいけないからな」と、ロベルト。

 そう、この川下りは、ツアーじゃないんだから、オイラも、おんぶに抱っこってワケにはいかない。やるべきことは、手分けしてやっていかなきゃいけないのだ。

 しかし、言葉が通じなければ、どうしようもない。「なんて言えばいいの?」とロベルトに聞き、ポーランド語での、卵の買い方を教えてもらう。「ヤー、クピージ、ヤイカ、プローシャ」と言えば、卵くださいの意味になるとのこと。ちなみに、ヤイカが卵の意味だ。そして、受け取ったら「ジェンクイエ」と言うのを忘れないように、と。「ジェンクイエって何?」「ありがとうの意味さ」

 「ヤー、クピージ、ヤイカ、プローシャ・・・ヤー、クピージ・・・」とぶつぶつ言いながら、おじちゃんおばちゃんが居る母屋へ。ドアをノックしたら、おばちゃんが出てきたので、「ヤー、クピージ、ヤイカ、プローシャ」とお願いしたところ、いくつ?みたいなことを聞かれたので、指で6を示す。で、おばちゃんが卵を6つ包んで渡してくれたので、代金として3ズウォテを払ったら、「ちょっと待ってて」みたいなことをいって、おばちゃんは、庭の木からごっそりリンゴをとって渡してくれた。リンゴはサービスね、とおばちゃん(が言っていた気がする)。「ジェンクイエ!」といって、戻るオイラ。

 そんな感じで、オイラがガキの使いのようなやり方で食材をゲットしている間に、ロベルトはカヤック準備を着々と進めてまして。オイラが戻った頃には出発準備完了。で、二人して、カヤックを川辺まで運びこみ、川辺に着水させた後、荷物積み。カヤックは内部は空洞になっているため、前後のスペースに空きができる。そこに、荷物を詰め込むことになるのだが・・・どうみても、前後の空間だけでは、荷物全部を積み込むことは出来そうもない。

 「入りきらない荷物はどうするの?」とロベルトに聞いたところ、「そのために、コレを持ってきたのさ」と、取り出したのはガムテープ。どうやら、入りきらない荷物は、カヤックの外側に、ガムテープで固定する作戦らしい。うむむ、まぁ、バックに入った荷物類はそれでなんとかなりそうだけど・・・袋に入れているとはいえ、大きさと重量のある自転車は、固定しきれないよ、と言うと、「自転車はヨシが抱えてくれ」とのこと。

 ん~、無茶じゃないですか?

 とは思ったものの、やってみたら、まぁ、なんとかなった。輪行袋に入れたチャリをかかえたオイラを前方に乗せ、後方に乗り込んだロベルトがカヤックを漕ぐ。

 ・・・オイラ何もしなくていいんスか?

 なんとかはなったものの、これじゃぁ、オイラはパドルを漕げない。ただ乗っているだけになってしまう。

 ・・・面白くないんですけど。

 たゆたゆと流れる川の流れに身を任せ、静かな川をノンビリと下っていくのは、確かに気持ちいいし、最初はテンション上がったのだが・・・やっぱり、こういうのは、自分でもやらなきゃつまらない。この体勢で、4日間も川下りするのは、耐えられないよ。

 「やっぱり、どう考えても、荷物が邪魔だよ」とロベルトに言ったところ、「う~ん、そうだな・・・この先に、川辺のレストランがあるから、そこに荷物を置かせてもらうように、交渉することにするか。あそこなら、国道も近いから、川下り終えた後、バスに乗って戻ってくれば、預けた荷物をすぐピックアップできるし」ということで、この先にあるレストランに一旦寄ることに。

 で、レストランに行くための川辺の停船所みたいなところが目の前に見えてきて、あと200mでそこに着く、というところで・・・

 事件がおきた。

 それまで、何事もなく、川をすべるようにして進んでいたカヤックが、急に何かにひっかかる感じで止まった。「ヤバイ、川底にある岩に乗り上げた!」とロベルトが叫んだ次の瞬間、カヤックが右にゆっくりと傾きだしたのだ。

 何が起こったかすぐに分かったオイラも、ロベルトと共に、すばやくバランスをとり直し、元の体勢に戻そうと試みたのだが・・・一旦傾きだしてしまったカヤックはもう止められなかった。そのままゆっくりとひっくり返るカヤック。

 ひたひたと、水が浸水。刺すような水の冷たさがカラダを襲う。

 ロベルトに手伝ってもらって、なんとか完全にひっくり返る前に、カヤックから足を抜き出し、沈没するカヤックから体を脱出させることに成功。幸い浅瀬だったので、足をつくことが出来、すぐに立つことができた(まぁ、浅瀬だったから座礁してしまったのだが・・・)。

 と、オイラとロベルトはなんとか胸から下が濡れるだけですんだのだが・・・カヤックも荷物も、そして、相棒のファニーバニーも完全浸水してしまった。なんとかカヤックから脱出した次の瞬間に、抱えていた相棒の入った手持ちの輪行袋を、水没しないようにとがんばってみたのだが、すでに、浸水が始まってしまった輪行袋は、普段の倍以上の重さになっていて・・・支えきれずに、そのまま川の中へズブズブと入っていってしまったのだ・・・

 沈んだ後もさらに、川の流れが、輪行袋を流そうとする。こりゃ、いかん、と、めっちゃ重くなった輪行袋をなんとか担ぎ上げる。袋のファスナーからは、中に入り込んだ水が、滝のように流れ出てきた。ごめんな、相棒・・・雨に濡れることはあっても、まさか、川の中に完全浸水するとは、思ってもみなかっただろうに。

 さて、なんとか、まずは、相棒を救出し、岸に上げた後、すぐに他の荷物を救出。オルトリーブのバックは浸水仕様だし、グレゴリーのバックも、こんなこともあろうかということで、ベルリンの時に買ったオルトリーブの防水パックをインナーに入れているから、水に浸かってしまったものの、浸水被害は、表面、もくしは、いったとしても上部に入れておいた荷物だけで、水被害は大きくないだろう、と思っていたのだが・・・

 水の浸水力をなめちゃぁ、イカン。

 水没してしまうと、水ってやつは、どんなちいさな隙間だろうと、ほんのちょっとの隙間があれば、入り込んでしまうものなんですな。救出したバックを開けてビックリした。中は全て水浸し。インナーであるオルトリーブの防水バックに入れておいた衣類なども、全てびしょびしょに濡れてしまっていた。

 持ち物全てが水浸し。

 かろうじて、浸水しなかったのは、背中に背負っていたナップザックのみだった。これだけは、オイラがすぐにカヤックから脱出して、体勢をうまく立て直すことができたため、水没を免れたのだ。ちなみに、ナップザックに入っていたのは、パソコン関係。ふ~、これが水没していたら、ホント、泣くに泣けなかったよ・・・

 とりあえず、バックに入れていたものを全て出す。木製のものには水が染み込み、金属製のものは水滴だらけ、布製のものはぐっしょりと濡れ、紙はヨレヨレになってしまい、袋の閉めが甘かった香辛料やお菓子などは、水分を含んでぐちゃぐちゃになっていた。

 以前のオイラなら・・・荷物がこんな状態になったら、全てを諦めるくらい気落ちしていたことだろう。この先カヤックでの川下りはもちろん、チャリ旅だって、続ける気力を失っていたかもしれない。

 が、いろんな経験をしてきた今のオイラにとっては、今回の出来事は「ま、こういうこともあるさ」程度のものだった。たかがモノが濡れただけじゃないか。乾かせばいいだけ。いくつかは、ダメになっちゃったけど、ダメになったものは、代わりが得られるものだし。

 ということで、まずは、布ものを全部絞り、芝の上に置いて自然乾燥。その後、自転車を拭くための雑巾で、濡れたモノから取れるだけの水分をふき取る。そして、それらを並べて、これまた自然乾燥。ロベルトが言うには、2時間くらいこのままにしておけば、ある程度は乾くらしい。

 と、一安心したところで、ブルブルとカラダが震えてきた。水没した時にずぶぬれになった服は着替えたのだが、替えの服も浸水のため、濡れているのだ。今までは、気が張っていたので、寒さが気にならなかったが・・・風が冷たくて、太陽が出ていない状況で濡れた服で外に立っているなんて、ありえないこの時期。

 さ、寒い・・・

 この場所にはオイラたち以外誰も来ない、ということで、荷物はそのままにして、ロベルトと共に、暖房の効いたレストランへ。カラダを暖めるために、まず、温かいスープをいただく。

 ふ~・・・

 ようやく落着いた。いやぁ、それにしても、やっぱり、やっちゃったよ。ロベルトの大丈夫って言葉は、ホントに大丈夫じゃないかもって気づいていたけど・・・まさか、こんなにも大丈夫じゃない状況に陥るとは。でも、まぁ、これは別にロベルトのせいじゃない。全荷物をカヤックに乗せ、川下りをすることにしたのは、結局は、オイラ自身が決めたこと。

 ロベルトは申し訳なさそうにしてくれたのだが、オイラの気持ちはもう、全然おさまっていた。

 今回の川下りでは、ある場所まで行くことを決めていたロベルトは、その場所に到着するまでは川下りを続けなきゃいけないという。スープを飲み終え、チキンを食べながら、ロベルトがおそるおそる聞いてきた「ヨシは・・・まだ川下りを続ける気はあるか?」と。

 「もちろん!」

 即答するオイラ。こんなんなっちゃったからこそ、逆に、やめれないよ。オイラ自身は、まだパドルすら握っていないのに。カヤックの<か>の字も知らないのにやめちゃったら、ただの濡れ損じゃん。

 ということで、二人して、まだまだ川下りを続けることにはなったのですが・・・さすがに、沈没の反省はしまして。荷物はできるだけ軽くしようと。川下りに必要のないものは、全て、このレストランで預かってもらってから、再出発することに。

 食事をし終え、カヤックの場所に戻った後、まだ若干生乾きだったものの、とりあえず乾いたモノを再びバックに詰め込む。テント、寝袋等々、川下りに必要なものだけ残して、あとは、レストランの建物脇の納屋みたいな場所に、まとめて置かせてもらった。

 そして、持って行くテント、寝袋などは、2重にビニール袋をかぶせ、今までに増しての防水対策。といっても、これでも、また沈没しちゃったら、浸水は免れないんだろうけど・・・

 水をかき出したカヤックに荷物を積め、気持ちを新たに再スタート。

 この再スタート地点からは、オイラもパドルを握って、カヤックを漕ぐ。

 「荷物が軽くなって、動力が二人になって・・・さっきまでのは、やっぱり無茶しすぎたな。今までのカヤックはカヤックじゃなかった。ヨシ、これがカヤックだよ」と、ロベルト。

 パドル漕ぎは初体験のオイラは、改めて、ロベルトからパドルの漕ぎ方を習う。左右交互に水をかぐ際、パドルが水に入っている方の手を引くんだと思っていたのだが・・・そうではなく、パドルが水に入っている方とは反対の手を押すんだ、って教えられまして。やってみたら、なるほど、そちらの方が、漕ぎやすい。<引く>よりも<押す>方が力が入れやすいからだ。

 こうやって、すこしづつカヤックなるものが、分かり始めて、だんだん面白くなってきたところで・・・日が暮れた。今日は予定していた距離の1/10くらいしか進んでない。沈没しちゃったからしょうがないんだけど・・いやぁ、カヤック旅ってのは、チャリ旅以上に、先が読めないものだ。

 完全に暗くなる前に、砂地のある川辺に上陸。今晩は、ここにテントを張って野宿。早速木々を拾ってきて火を起こす。生乾きだった衣服を取り出し、冷えた体とともに、焚き火にかざして乾かすオイラたち。

 焚き火はいい。体を温めてくれるのと同時に、なんだか心も癒してくれる。

 ロベルトとオイラは、早くも、沈没したことを笑い話にして、笑いあっていた。

 さて、体が温まった後に、その焚き火で作った夕食をいただく。夕食後、熱いお茶をすすっていたら、ロベルトが、リンゴを木に刺して手渡してきた。

 「ヨシ、デザートの焼きリンゴだ」

 早速焚き火にリンゴをかざし、焼き色をつけて・・・カプリ。

 ・・・うむむ、リンゴは、そのままで食ったほうが、美味いんですが・・・

 でも、これはそういうことじゃぁないのだ。

 焼きリンゴってのは、味を求めるもんじゃない。雰囲気を楽しむもの。そう、野宿の夜はこうやって、楽しく過ごすものだったのだ。
















































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