(English)
I stayed in Brasov.
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日記が追いつき、サイトの他のページも、動画と動画に関連が深い音楽ページ以外は更新が終わり、話し相手になる旅人もいなくなってしまった本日、やっと落着ける時間が持てたので、ようやく、読み始めた、伊坂幸太郎の<ゴールデンスランバー>。
いやぁ、面白かった。昼飯を食うのを忘れるほど、没頭して一気読み。
相変わらずの伊坂節が炸裂しているこの作品、登場人物はいつもどおり、魅力的な人たちばかりだったし、伏線の広げ方や、回収の仕方は、毎度ため息をついちゃうくらい見事。
この人の作品は、ぜひ映画<運命じゃない人>の内田けんじ監督で、映像化してもらいたいなぁ、って思う。キャラの描き方とか、伏線の使い方とか、絶対相性がいいと思うんだよなぁ。ま、内田監督は、彼自身で魅力的なお話を語れる人だから、原作ものは、やらないか。
さて、このお話のテーマは「人間の最大の武器は、信頼と習慣だ」ってこと。伊坂作品は、作品のテーマ性を登場人物になにげなく語らせちゃっているのが特徴だったりする。今回も、主人公の親友の森田くんが、序盤に「人間の最大の武器は、信頼と習慣だ」って語っちゃってた。で、この言葉、言葉だけを聞くと、なんのこっちゃって思うはず。オイラも、最初は、これがテーマとは気づかず、何気ない言葉だなぁ、と思っていたんですよ。が、その「なんのこっちゃ」を「うんうん、その通り!」に変えてしまうのが、伊坂節。展開していく話の中で、この言葉の意味を裏付けるようなエピソードが次々と展開していくもんだから、読み終わった後には、「人間の最大の武器は、信頼と習慣だ」って吼えまくりたくなっちゃうんですよ(笑)。
確かに、自分に置き換えても、旅中は信頼こそが武器になりますもん。ただ、習慣ってのは武器になるのかいな?う~む、まだ、オイラはこの言葉を深く掴みきれていないのかもしれませぬ。
いやぁ、そんな感じで、ホント面白すぎたんですが、ただ、読後感がスッキリしなかったのが、ちと残念だった。この話は、ケネディ暗殺事件のような首相暗殺事件が日本で起こり、その犯人として主人公の青柳くんが、濡れ衣を着せられるというもの。特定の誰かではなく、<国家>というシステムから追われることになってしまった青柳くんは、立ち向かう相手が居ない戦いに、結局<逃げる>しかなく、最終的には、事件を仕組んだいるんだかいないんだかよくわからない<犯人?組織?システム?>は、そのままボンヤリあり続けるっていう、ある種のバッドエンドだったんですよ。いや、バッドエンドの作品は嫌いじゃなく、むしろ好きな方なのですが・・・この作品のバッドエンドが与えるモヤモヤ感がなんとなくイヤ~な感じだったんです。
このイヤ~な感じの正体は一体なんなんだろう、って考えたところ、ふと思いついたことがあった。この<責任の所在がない>というやるせなさは、あの原発事故の構造と同じじゃないか、と。
原発事故は、特定の誰かを犯人に仕立て上げるようなことはしなかったけど、それでも、民衆の不満の矛先を向けるために、槍玉に挙げられ、マスコミによって煽られ、糾弾された人たちがいた。事件の当事者は誰一人責任を取ろうとしないし(そもそも、責任の主体が誰であるかすら分からない)、日本のマスコミは真実を伝えない(ように見える)。そして、今も、モヤモヤを抱えたまま、厳然とそこにアル。
あの現実と、小説がごっちゃになって、なんかモヤモヤしたんですよ。
が、オイラは今頃になって読んでますが、実は、この本が書かれたのが、2007年。原発事故が2011年。うむむ、あの時点で、伊坂さんは、この構造を見抜いていたのか、と気づき、伊坂さんの先見の明さに驚かされた。原発事故の前に読んだら、読後感はまた違ったものになっていたかも。
ま、でも、伊坂作品は、そういう話の大きな骨格じゃないところが面白いので、あまり大上段に構えず、気楽に読むのも、全然ありです。登場人物たちが繰り広げる、くすっと笑える台詞とか、しみじみとするちっちゃなエピソードが、実は一番グッときます。オイラの場合、本題とは全然関係なかった、板チョコのエピソードが、この本で一番、一番心に刺さりまして。伊坂さんって、ホント、ああいう描写が絶妙に上手いんだよぁ・・・
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