(English)
I stayed in Brasov.
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ふ~、今日も、ひたすら編集作業。いやぁ、ホント、映像編集って面白い。なんていうか、パズルやブロックで遊んでいるような感覚なんですよ。ジグソーパズルを組み立てている感じっていうか、レゴブロックを組み立てている感じっていうか。パズルのピースとかレゴのブロックが、旅途中で撮影してきた1つ1つの映像素材で、まさに、それらを組み立てて一個のものを作り上げていくっていく感じ。
ちなみに、今、この宿のドミ部屋には、オイラ以外に、一人の初老のおじさんが泊まっている。で、そのおじさんも、宿に篭り派。ちなみに、おじさんは、一日中、トランプで一人遊びをしている。
オイラとおじさんの二人が、一日中、黙々と、それぞれの遊びをやっているという、ちょっぴりシュールな、今日この頃の宿のキッチンの風景。
さて、そんなおじさんの姿を見て、「飽きないのかなぁ・・・」なんて思っていたのだが、おじさんもオイラのことを「飽きないのかなぁ・・・」って思ってみているに違いない。が、おじさんが、トランプで一日遊んでいて飽きないように、オイラも、パズルで遊んでいるような感覚だから飽きないのだ。
ん?ちょっと違うか?
ま、そんな映像編集、ずっとやり続けていると、ココはこうした方がよかったとか、経験値による改良点がいろいろ見えてくるんです。で、最近、また新たに、<フランスでのバック盗難事件>の映像を編集しているときに、気づいた映像編集における重要なポイントがありまして。
それは、トーンの重要性。トーンとはなんぞや?・・・トーンとは、元CMプランナーの佐藤雅彦さんが、方法論として意識していた手法で、佐藤さんはトーンについて以下のように説明している。
たとえば、店頭で、インスタントラーメンならインスタントラーメン売場、ビールならビール売場へいってみてください。パッと見て、もうすでに大体買うラーメン、買うビールは決まってしまいます。一般の消費者もラーメンやビールくらいだと選択にそんなに時間をかけていません。僕はよく、スーパーとかコンビニにいって、みんなが買うところを観察するのですが、みんなが、よく手をとる商品の前にいくと、やはり僕もそれを手にとってみたくなります。それは新製品だから手にとりたくなる、といった単純な話ではないようです。
ちょっと大げさなようですが、みんなが手に取る商品は、ちょっと光り輝いているように見えました。
それは、商品の持つ勢いだったり、新しさだったり、シズル感だったり、そんなものがまとめて光り輝いているように思えるのかもしれません。僕は、その光り輝くオーラのような存在を「見えない衣」と呼んでいます。そして、その見えない衣を作り上げることにCMがかなりの役割を担えるのではないかと考えたのです。
この「見えない衣」を作り上げるCMの方法論を僕は考え、それを「トーン」と名づけました。
「佐藤雅彦全仕事」より
映像にオイラらしさが出るようにっていうのは、最初の段階から結構意識して作ってた。見始めたらオイラの映像だってことがすぐわかるように、オープニングのタイトルとかは、一貫して同じスタイルで作り続けてきたし、テロップの入れ方とか、そういうのも、統一感が出るように、となるべく同じスタイルでやるように心がけてきた。
これまでは、それでいいと思っていたんですよ。オイラらしい映像ってのを面白がってくれる人が楽しんでくれればいいや、って思っていたから。
そんなオイラが、<バックを盗難にあった事件>を映像でまとめていていた時、いや、それだけじゃない方法もあるんだ、って気づきまして。そして、そのそれだけじゃない方法ってのが、佐藤さんの言っていた<トーン>だったんだと、今更ながら、気づいたんですよ。
実は、盗難時、および盗難後の映像は、盗られたのを発見した時に「とりあえず、証拠映像を撮っとかなきゃ」と思って撮っておいた一つの映像素材のみしかなかったんです。その後は、気が動転していたし、警察行ったりバタバタだったんで、撮影どころじゃなかったんで。
で、編集段階で、その一つしかない映像を、事件が起こる前の平穏ないつものチャリ走り映像と組み合わせてみたものの、それだと、全然事件の重さが伝わらない。事件の重みをそれなりにでもいいから、伝えるにはなんか工夫しなくちゃなぁ、って思って・・・とりあえず、後から何かが起こるかもよ、という予兆を埋め込んだ流れにしてみたんですよ。そしたら、なんか、サスペンス調になって・・・オイラ的には、今まで冴えなかった映像が一気に、光り輝きだしたんです。あ、なるほど、これが佐藤雅彦さんが言っていた<トーン>なのか、と、ここで実感できたんですわ。
トーンとは、色調とも言える。撮影はそれなりにやっている、構成もそれなりに分かるようになっている、でも、なんか物足りないのは、色調がはっきりしなかったからなのだ。感動させたいのか、面白がってもらいたいのか、意見を述べて賛成して欲しがっているのか、音楽でいうなら、メジャースケールなのかマイナースケールなのか、アンダンテなのかアレグロなのか。これを決めるのが、色調というか、タッチというものであり、それらを盛り込んで、さらに光り輝くようにするのが<トーン>というマジックなのだろう。
佐藤雅彦さんは、本場感を出したかった<ドンタコス>のCMを作るのに、メキシコロケをして、しかも16mmのフィルム撮影、という方法を用いた。清潔感のある親しみやすさを出したかった<モルツ>のCMを作るのに、セットをドキュメント風に撮る、という方法を用いた。手にとれる憧れ感を出したかった<カローラⅡ>のCMを作るのに、パリでロケしたかわいいストーリーの映像に、感じのいい唄を乗せるという方法を用いた。
つまり、<映像をどうみせたいのか>というイメージをしっかり考え、そのイメージをちゃんと具現化するための方法をとっていくのが「トーン」という手法。
予定調和のない、旅映像では、目の前で、起こっている出来事に対し、その場ですぐに撮影しなくちゃいけないんだから、イメージを具現化する方法を考えている暇はないのが現実じゃん・・・っていうのは、たぶん単なる甘えなのだろう。以前、感銘をうけたと日記に記したことがある<旅する鈴木>さんの旅映像なんかは、<映像をどうみせたいのか>というアイデアがあり、しかも、そのアイデアをちゃんと具現化する撮り方を試みているのだ。<旅する鈴木>さんの映像こそ、トーンが込められた旅映像の好例。
そんなトーン、なんとなく掴んだだけなので、まだまだ甘い映像しか作れない。見てくれる多くの皆さんにとって光り輝く映像作品となるようなトーンを埋め込むのには、さらなる試行錯誤が必要なのだが・・・ま、そんなことを考えながら、一作ごとに、より面白い映像を作っていくっていう作業自体が、なによりも、面白いのですよ、ハイ。
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