Ultimo, revise el Andes
最後の・・・アンデス越え

2010.08.17 / Argentina→Chili (Los Penitentes~Los Andez付近) 本日自転車81km走行 : Total 21461km走行
天気:曇時々雪 自転車折りたたみ:1
朝飯→パン 昼飯→パン 夕飯→パン / 宿→テント泊

(English)
 I climbed up Andez. I think this is the last time to climb up Andez in this trip.



(Español)
 Subí Andez. Pienso que ésta es la último vez para subir Andez en este viaje.
 朝起きると、外はメッチャきれいな朝焼け。慌てて、カメラを持って外へ。こういう素敵な光は3分と続かないのです。まさにタイミング。絶景!と思った瞬間にシャッターを切らないと、残るのは後悔だけという結果に。今回もシャッターを切った瞬間に、素敵な光は逃げていってしまいまして。間一髪。なんとかカメラに収めることができやした。しかし・・・外は強烈な風が吹いていてメチャメチャ寒い。出発をためらってしまうほどの向かい風に、思わずもう一泊していこうかと思ったのだが・・・実は、微妙に喉が痛くなってきていまして。ここで気を緩ませてしまうと、一気に風邪をひいてしまうかもという思いがあったので、ココは、気合を入れて出発することに。

 とても暖かいホステルの人たちに見送ってもらい、出発。いよいよ、本日アンデスを超えてチリに入国するのだ。

 8kmほど走ると<Puente del Inca>という場所に着いた。日本語で言うと、インカの橋というこの場所、アコンカグアから流れ出る濁流がこの地の岩盤を削り、橋のようなモニュメントを作り上げていることから名づけられたそうで。このルートを走ることにして、情報収集している時に、一番最初に見つけたのが、このPuente del Incaの写真だったんです。鉱物質のおどろおどろしい色合いの写真に、一気に気持ちがひきつけられちゃって、ここを訪れるのをメッチャ楽しみにしていたのですよ。

 で、行ってみました、その橋のモニュメント。想像以上にグロテスクな雰囲気をかもし出していた橋の中腹部には、なにやら建物らしきものが・・・ここ、温泉が湧くらしく、以前は旅に疲れた人たちが体を休めるために、訪れるためにあった温泉施設とのこと。実は、このアンデスルート、10年ほど前までは鉄道が走っていたらしいのだ。確かに、自転車で走っていると、レール跡が、道と併走して見られた。が、チリの政情が不安定になった10年前、鉄道が不通になってしまい、それ以降、この<Puente del Inca>の温泉地も廃墟となってしまったという。インカの橋という名前からインカ時代の遺跡か何かなのか、と思っていたのだが・・・どうやら違うらしい。雰囲気あるから、インカの温泉跡だよと言われれば納得しちゃいそう。いやぁ、来てよかった。なかなかいいモンを見れました。

 さて、<Puente del Inca>を後にして走りはじめ、これから続く道を上るために、ギアを変えた瞬間、手元に違和感が・・・、いつもなら、ひっかかりがあるはずのギアが、カチカチとまるで手ごたえなく動くではないですか・・・前に体験して、身に覚えのあるこの感触、そう、ギアをつなぐシフトワイヤーが切れてしまった時の感触デス。自転車を止め、ディレイラー部をチェックしてみると、案の定、ワイヤーが切れていた。あぁ、よりによって、アンデスの峠越えをしている時に切れなくても・・・と嘆く。この冷たい強風が吹き荒れる中で、自転車を止め、ワイヤー交換なんてやっていたら、凍えてしまいそう。ここは、とりあえずの応急処置をして、前に進もうと決め、切れたワイヤーはそのままで、ディレイラーのネジを調節し、ギアを3段分軽くした状態で固定させ、自転車をこぎ始めた。とりあえず、緩い坂ならなんとかがんばれるものの、急な坂になるとムリ。自転車を降りて、押すしかない。Punte del Incaを出発してから、ただでさえ過酷なアンデス道が、さらに辛いものになってきた。

 上れば上るほど、風の勢いが増し、寒さが肌を突き刺すように迫ってくる。3000mを越えたあたりから、なんとなく、体の調子もおかしくなってきた。この、体に変化をもたらす、なんともいえぬ圧迫感を感じると、高いところへきたなぁと、実感する。

 さて、国境までの道、地図ではアルゼンチン-チリの国境線地帯の標高は3800mくらいになっていたので、まだまだ上らねば・・・と思っていたところ、目の先に、料金所のような建物が見えてきた。いつものごとく、料金所は自転車フリーだろうということで、素通りしようとしたところ、料金徴収のオネェサンが「そこの自転車の人、ちょっと待って」と呼び止めてくる。そして、料金所のさらに先にある山に設けられたトンネルを指差し、なにやらオイラに向かってしゃべっている。状況を把握できずに、とりあえず、立ち止まったオイラに、一人の男の人が近づいてきて「この先にあるトンネルは、自転車で通り抜けられない。車に乗せて通り抜けさせてやるから、自転車をあの車の荷台に乗せな」と言ってきた。

 そう、このルート、国境に、長いトンネルがあり、そこでは自転車は通してくれないらしいということは聞いていたのですが、まさか、こんな場所にあるとは。もっと山を上らないといけないと思っていたのに、意外に早い段階で、国境を越えることになってしまった。ちなみに高度は3200m弱。ここからはもう下りでよいという嬉しい気持ちと、もうちょっとアンデスの山上りを堪能したかったという残念な気持ちが入り混じる・・・さらに、大西洋岸のブエノスから太平洋岸のビーニャまで、自力で走りきろうと思っていたのに、車に乗せていかねばならない区間が発生してしまうことに対する残念さも交じり、複雑な気持ちに。

 トラックに自転車を乗せ、オイラは助手席に乗り、走り出す車。思ったより長いトンネル内を走る車。う~ん、確かにこの長さのトンネルを自転車で抜けるのはちょっと怖いかも。トンネルを抜けたところで、トラックは止まり、降ろされるオイラ。トンネルを抜けるとそこは、チリでしたってことで、目の前には<Bienvenido a Chili>とかかれた看板が。ん、あれっ、チリに来ちゃったようですが・・・よく考えたら、オイラ、アルゼンチンの出国手続きをしていないぞ。慌てて、車で送ってくれたおじちゃんに「アルゼンチンの出国手続きをしてないんですけど」というと、「アルゼンチンのイミグレは、さっき車を乗せたところから、20kmほど手前の場所にある」というではないですか!なんてこった、ひょっとして、戻らなくちゃいけないの!?と冷や汗タラリのオイラ。と、そこでおじさんが一言「この先4kmくらい行ったところにあるチリ側のイミグレで、アルゼンチンの出国手続きも一緒にできるよ」と。ふ~、ホッとしましたぜい。おじさんに、感謝の意を述べ、お別れ。オイラは、イミグレへと向かう。

 もう、ここからは、ひたすら下り道。あっという間に4km走り、到着したイミグレ。入り口付近に自転車を止め、中に入ると、あった、ありました。<Argentina>の文字。その<Argentina>とかかれた窓口へ行ってパスポートを提出。出国手続きをしてもらう旨を伝えたところ、受付のオジさんが「バス?車?」と聞いてくる。「自転車です」とオイラが答えると、しばし、オイラのパスポートをパラパラさせたオジさん「裏のポリシアで手続きをして」と。なんか悪い予感を感じながら、指差された方角にある部屋のドアをノックし、入ってみると、椅子に座ったオネエサンが何しに来た顔でオイラの方を見る。あちらの窓口でこっちに来るように言われたんですが、と言ってパスポートを出したところ、パラパラとパスポートをめくりながらオネエサンが言ったのは「アルゼンチンのイミグレはここじゃないわ」・・・ええ!!やっぱり、トンネルの向こうに戻らねばならないのですか!?と焦るオイラ。もう、オイラのことなんて眼中にないがごとく、次の仕事に取りかかり始めているオネエサン。いかにも事務顔のオネエサンには、情けが通用しそうにもない。最悪だ・・・

 と思っていたときに、ヒーローが現れたんです。にこやかな笑顔のお兄さんが颯爽と現れ、オネエサンとなにやら言葉を交わした後、オイラの方を見て「ついて来て」と。言われるままについていくと、笑顔のお兄さんは、先ほどオイラが行った<Argentina>とかかれた窓口へ。そこでお兄さんが一言二言、さっきのオジさんに声をかけると・・・オジさんはにこやかな顔をしてオイラのパスポートを手元に寄せ、出国手続きをし始めたではないですか!んんん?一体なにが起こったのでしょう?そして、このお兄さんは何者?と思いながらも、とにかく、手続きが進み始めたことに一安心。サックリと出国スタンプを押してもらえ、そのまま隣にあるチリ側の入国窓口へ。チリ側の手続きも、先ほどのお兄さんがついて来てくれ、窓口のオネエサンに一言声をかけてくれた。そして、まったく問題なく、入国手続き完了。いやぁ、お兄さん助かりました。アナタが何者なのかよくわかりませぬが、とにかくありがとうございます。

 これで、チリに無事入国、さぁ走り始めるぞ、と思っていたら、別のお兄さんが一枚の紙を持って近づいてきた。あ、あの紙は見覚えある。食べ物や、種子を持ち込んでいないかを記入させる紙だ。そう、チリって、入国時に食料品の持ち込みにすごく厳しい国なんです。植物、特に種関係は持っていたら没収されるとのこと。前回入国した時のサンペドロ・デ・アタカマでは、この紙に記入させられた後、全荷物をX線検査させられたほど徹底して調べられたのでした。今回も・・・と覚悟していたら、紙を記入した後、「カバンを開けて」とお兄さん。どうやら、今回は、目視検査だけで済むようです。一応食べ物の入っているバックをあけ、パンとハムとチーズが入っていることを自己申告すると「まぁ、それくらいの食べ物は持ち込んでもよし」とお兄さん。そして、もう一人チェック員が来るから、その人からハンコをもらったら、行ってもいいよと、言い残して、そのお兄さんは別の人の検査のために去っていくのであった。

 しばらく自転車の前で待っていたら、オイラがサインした紙を持って、さっきとは別の一人のお兄さんが近づいてきた。そして、また「カバンを開けて」と。今度のお兄さんが指したカバンは、食材カバン。実はこの中には、香辛料などが入っているのだ。で、カルダモンやコリアンダーはシード(種)の状態で入っているため、もし見つかったら没収されかねない。ピーンチ!と、カバンを開けると一番上位に入っていたのは、プラティパスの水筒に入れてある水。「あ、このカバンには水が入っています」と、上部だけ見せるオイラ。中を探られたらまずかったのだが、このお兄さんは「うん、分かった、水な」と納得してくれ、検査はパス。そのまま了承のハンコを押してくれ、持ち込み食料品検査は終了。意外と甘かった今回の荷物検査を無事終え、これで晴れてチリに入国できることになったのであった。

 イミグレを出ると、そこはスキー場。アルゼンチン側よりも雪の積もったスキー場で、何人もの人がスキーを楽しんでいる。そこ横を自転車に乗り、坂を下っていくオイラ。下りは、体を動かさなくなるため、メッチャ寒い。で、この坂が、またグネグネと曲がりくねってまして。七曲坂どころの話ではなく、20曲がり以上あるクネクネ坂。こういうくねった道ではスピードを出すわけにもいかず、ひたすらブレーキをかけながら、下るのであった。おかげでブレーキシューがドンドン磨り減ってしまい、クネクネ道を下り終えた頃には、もう、ブレーキが効きづらい状態になってしまっていた。ブレーキワイヤーの長さ調節をして、ブレーキが効くようにし、再び坂を下り始める。3000mから一気に2000mそして、1500mへ。いやぁ、上るときはものすごく時間かかるけど、降りるときってあっという間なんだよねぇ・・・

 さてさて、このまま、Los Andezという街まで行って、宿探しをしようと思っていたのだが、1500mまで降りてくると、周囲の寒さは和らいできた。Los Andezって、アンデスに囲まれたリゾート地らしいので、行っても、多分高そうな宿しかないだろうし・・・と考え、チリ再入国の一日目ではあるのですが、ここは、テント泊をすることにしたのでした。町から町の間も、ずっと民家があり、なかなかテン場を探すのが大変なチリ道だったのですが、ちょいと木陰もある空き地を発見し、テントを設営。

 いやぁ、なんか今日はがんばったぞ、オイラ。テントの中で、自画自賛して、あっという間に気持ちよい眠りについたのでした。