Tormenta de Patagonia
写真では伝わりませぬ・・・パタゴニアの暴風の猛威

2010.11.24 / Chile (ChileChico~Mallin Grande付近) 本日 自転車63km走行 : Total 24130km走行
天気:晴時々曇 自転車折りたたみ:1
朝飯→ご飯 昼飯→弁当 夕飯→パン / 宿→テント泊

(English)
 Today it was heavy wind too. But I started to run.



(Español)
 Hoy también era el viento pesado. Pero empecé a correr.
 一昨日から吹き荒れはじめた暴風、今日も止まず。風がふいているのをいい理由として、2日ものんびりしてしまったのだが、さすがに、休養という意味では十分すぎるほど休ませてもらいまして。相変わらず、すさまじい風が吹いているものの、本日出発することに。

 さて、出発するに際して、4泊分の宿代を支払うことになったのだが・・・一泊6000ペソのつもりだったのに、コシナ(台所)を使ったから一泊7000ペソだと言われ、いや、そんなはずはない、朝食つきだと7000だが、なしだと6000って言ってた、と言った言わないの料金問題が発生。結局証拠がないのと、オイラの説得語学力不足のため、折れることに。うぬぬ、一日1000ペソの違いだが、4日分となると、でかい。

 少々、気分を害して、チレチコを出発。いろいろ悩んだコースも、アウストラル街道を南下する、と決めてしまったら、もう迷いはなくなりまして。一週間以上前に、一度バスで通った道を再び自転車で走り始める。

 そう、このルート、一度バスで通っているため、ある程度、道の状態やら、見える風景というのは分かっている。道は、相当アップダウンが激しく、未舗装の砂利道で大変なのだが・・・この道から見える風景は、バスでチョッパヤに駆け抜けるにはあまりにも惜しい風景が広がっていたのだ。もう一度アウストラル街道へ戻ろう、と思えたのは、ここの風景をもう一度自転車で走りながら見てみたいという想いがあったというのも・・・一因だったりしたのです、実は。

 と、楽しみに走り出したのはいいのだが、風が・・・パタゴニアでは主に、西風が吹き荒れるといわれていて、本日も例外ではなく、西風が猛威を奮っている。ちなみに、オイラが向かうのは、西方向。もろに向かい風をくらうことになるのだ。この向かい風が・・・これまでくらったことがないよう爆風、いや暴風。パタゴニアの風は、雨のない台風のようだ、とはよく言ったもんで、まさにそんな感じ。下り坂でもペダルをこがないと進まないくらい、風が自転車を押し戻すのだ。今まで、風、特に、向かい風って嫌いで、自転車を漕いでいる時に、向かい風に遭遇すると、イライラしていたものなのだが、もう、ここまで凄まじかったら、逆になんか・・・楽しくなってくる。今日は、こういう日だ、と割り切って、新手の障害物をクリアしながら進む感覚で。こんな障害物があるのでは、100km走るなんて、所詮ムリ。走らなきゃという気負いを棄て、まぁ、50km走れればいいんじゃね、と気持ちを切り替えてしまうと、風に挑むことが気分的にも嫌じゃなくなるから不思議なもんだ。

 それにしても、いやはや、噂に聞いていたパタゴニアの風、これほどまでのものとは・・・向かい風となって、立ちはだかられると、恐ろしい敵となりますな。しかし、チリ側でもここまでの風を体験できちゃうとは思わなかったなぁ。パタゴニアの暴風は、アルゼンチンのパンパを走らないと体験できないって思っていたのに。それにしても、この暴風は、なぜ吹くのだろう?、と風で引っ張られ、頬を引きつりながら、パタゴニア地方に、風が吹き荒れる原因について興味が沸くオイラなのであった。

 そして、この爆風の猛威は、どう撮っても写真には写りきらないのが残念。もちろんこれは動画でと、ビデオでも撮影したのだが、どの素材も、音が猛烈な風きり音しか入っておらず、使えるのか、これは?状態。

 とにかく、上り坂になったら、もうペダルをこぐことはまったくできない。もう、降りて押すしかない。降りたはいいが、強烈な向かい風のため、進むこともままならぬ。正直、風景を堪能している余裕なんか・・・ないと思っていたのですが、いざ、素敵な風景が目の前に現れると、風なんてどうでもよくなってしまいまして。というか、この素敵な風景たちが見れる道だったからこそ、辛い暴風向かい風も、耐えて前に進むことができたんだと思う。

 ここ、チレチコ付近は、アウストラル街道から外れ、256号線を120kmほど走ってアウストラル街道にぶつかる場所にあるわけですが、これだけの距離、しかもパンパよりに離れているため、風景がアウストラル街道から見える景色とは、一味違っているのです。この周辺を包んでいるのは、険しい岩肌を覗かせた、荒野っぽい風景。オイラ好みの風景デス。湖沿いのアップダウンの激しいチャリダー泣かせの道ではあるのですが、厳しい上り坂を上りきると、そこからは、ナニモノにもかえられない絶景が見えるワケで。その絶景見たさに、上りの砂利道にも、そして、吹き荒れる爆風向かい風にも耐え、ひたすら前進するのでした。

 そして、いくつかの峠を越えたトコロで、見えてきた緑色の湖。ラグーナ・ベルデ、緑の湖と、なんのひねりもないネーミングのこの湖、前回、バスで通った時、窓からチラ見して、その不思議な色の輝きに魅せられてしまい、ぜひとも再会したい湖であったのですよ。そんな湖、確かに美しかったのですが・・・なんか前回抱いた印象と違う。若干空に雲が張っていて、クリアな日光が水面に当たっていないということや、強い風のため、水面が波立っているという点を除いたとしても、なんか、違う。うむむ、きっとチラ見でしか見えなかったことによって、想像で美化しちゃったんだろうなぁ。いやいや、十分素敵な湖なんですけどね、なんかこう・・・ちょっと残念。

 その後も、ひたすら風と戦い、坂を上っては坂を下り、目の前に広がる絶景にため息をつく。ああ、大変だけど、やっぱり自転車で走りなおしてよかった。ここは、絶対自転車で走るべき道だ。

 ヘネラル・カレイラ湖の脇を通る道は、ひたすら切り立った崖のような場所に築かれた道なのですが、時折、内陸側に入り込み、緑の平地がある場所を通る。60km走った時点で18時過ぎとなり・・・道脇にあった緑の平地が、ちょうど大きな岩の陰になった場所にあり、そこだけ風が和らいでいまして。今日はここにテントをはることにした。湖際の素敵な場所で、ガソリンストーブを取り出して、自炊でも・・・と一瞬考えたのだが、風と坂と戦い続けた体は、思った以上に疲労困憊してまして。パンをかじって、テントの中に入り、横になったらいつの間にやら眠りに・・・南半球の19時って、まだまだ昼間のような明るさなんですけどねぇ。