Pueblo dónde una persona es y no es
人がいる町いない町

2010.11.26 / Chile (Puerto Bertrand付近~Cochrane) 本日 自転車57km走行 : Total 24253km走行
天気:晴時々曇 ネット:1
朝飯→パン 昼飯→カルネ 夕飯→カレーチャーハン / 宿→Hospedaje Ana Luz(5000ペソ)

(English)
 Today I arrived at Cochrane.



(Español)
 Hoy llegué a Cochrane.
 朝、晴れ。この調子で、晴れたままアウストラル街道を通り抜けたいもんだ。テントをたたみ、走り出す。3kmほど走ると、プエルト・ベルトランドの町に到着した。特に用事はないのだが、食料と水でも補給していくか、と町へ立ち寄る。が、朝早いせいか、どこも開いていない。というか、パタゴニアにある町、人が居なさすぎ。小さな町では、せっかく町に辿り着いても人に出会えない。しゃぁない、先を急ぐか、とペダルをこぎ始めた時、目に飛び込んできたのが<ラフティング><カヤック>の文字。

 ここ、プエルト・ベルトランドの脇には、ヘネラル・カレイラ湖とつながっているベルトランド湖があり、そのベルトランド湖から溢れる水が、チリで一番の水量を誇るというベイカー川を形成している。そのベイカー川を楽しむアクティビティとして、<ラフティング>や<カヤック>がこの町には用意されているらしいのだ。実は、川や湖が多いこの地帯をずっと走ってきて、どこかでラフティングかカヤックをやってみたいなぁと思い始めていたところだったんですよ。ここでやってみるか、と思うも、看板があるだけで、オフィスらしい家をノックしてみても、誰も出てこない。まぁ、いいか、コクランもベイカー川の近くにあるみたいだから、コクランに行けばできるだろうと思い、プエルト・ベルトランドを後にする。

 プエルト・ベルトランドの町外れが、ちょうど湖と川の境目になっていた。水の流れなどないように見える静寂の水面の湖。その湖の端で、まるで、<湖>という器から水が溢れこぼれ出るがごとく、水が流れを形成し、川が出来ているのだ。そういえば、川の発生をこんなにもマジマジと、目の当たりにしたのは初めてのような気がする。なにげに、プチ感激シーンです、これ。何かが<変化する>ということ自体で、劇的なことなのに、なんといっても、ものすごい透明度のある水による、湖から川への変化なんですから。そりゃもう、言葉にできないほど、美しい光景なワケなのですよ。

 湖から変化したばかりのベイカー川を横目に走る。透き通る青々としたベイカー川。なんと美しい・・・と思うのはオイラだけではないようで、この辺、川沿いに、ロッジが立ち並んでいるんです。と、プエルト・ベルトランドから、3kmほど走った場所にあるロッジの看板に<ラフティング>と書かれていたので、ちょいと立ち寄ってみることに。ロッジの施設に入ると、管理人らしきオジさんが声をかけてきた。「ラフティングに興味があるんですけど」と言うと「ああ、プエルト・ベルトランドに行けばできるよ」「ここじゃできないんですか?」「うん、この辺だとプエルト・ベルトランドだけにしかないよ」「え?コクランに行ってもないですか?」「うん」・・・ん、どうやら、ベイカー川でのラフティングはコクランに行ってもできないらしい。

 最近もう、迷うとか戻るということに慣れてしまい、道を引き返すことにあまり抵抗を感じなくなってきたオイラ、あっさり、プエルト・ベルトランドへ引き返すことに。3kmの道を引き返し、再び、プエルト・ベルトランドの町へ。町へ着き、先ほど見かけた、ラフティングの看板の前に自転車を止めていると、旅人らしきカップルが声をかけてきた。「ラフティングに興味があるの?」「ええ」「僕たち昨日申し込んだんだけど、最低4人いないとムリって言われちゃって」どうやら、この二人は、昨日ココに到着し、ラフティングをやろうと申し込んだのだが、人数が足りなくて出来ず、結局一日この町で待ったらしいのだ。で、もう一人、ラフティングに興味があるという旅人が一人いるので、オイラが来た時点で4人揃い、ラフティングが出来ることになり、喜ぶ二人。

 早速二人は、揃ったことを伝えてくる、と、ラフティングオフィスへ。しばらく待っていると、なぜか浮かない顔をした二人が戻ってきた。「どうやら、オフィスのオジさんは、別の仕事が入って、今日、出ちゃってしまい、ラフティングは明日にならないとできないらしい」というのだ。ん~、それを聞いて、ここでラフティングをやりたいという熱が冷めていくオイラ。ラフティングをやりたい気持ちはあるのだが、一日待ってまでもやりたいってほどの思いはなくて。そもそも、まぁ、どこかで出来ればいいかくらいの気持ちだったんで。しかも、明日には・・・と言っているようですが、ここはラテンな国、明日になれば、気分次第でまたズルズルと延ばされる危険性がある。ここは、固執せず、諦めたほうが賢明だ、と判断。お二人も、同じように考えたようで、「僕たちは、これから、チレチコへ向かうことにするよ」と。

 お二人と別れ、さぁ、出発するか、と自転車のペダルに足をかけた時、お腹が減っているのに気付いた。何か食べていくか、と思うも、相変わらず、町は静かなのだ。町といってもほとんど村レベルなプエルト・ベルトランド、10時だというのに、ほとんど人は見かけない。まぁ、我慢していくか、と思いかけた時、目の前の家のドアが開き、中からオジさんが顔を出してきた「何か、困ったことでもあるかね」と親切にも聞いてきてくれたので、「お腹が減っているんです」と答えると、「うちに来い」と。え?オジさん宅、普通に家なんですけど・・・いや、もうこの辺は、レストランとかそういうカテゴリではないらしい。全ての人が、旅人に優しい。なんて素敵なパタゴニア。ということで、普通の家でも、頼まれれば食事を出してくれるようで(いや、このオジさんが特別なのかもしれないのだが)・・・2000ペソで、用意してくれるということなので、お願いすることに。オジさんが「なにがいい?」と聞くので、「魚でもいただければ」と答えると「今から釣ってこなきゃなんねぇな」とニヤリ顔のオジさん。いやいや、今日は50kmも走らなきゃならないんで、すぐに食べて出発しなきゃなんないんですけど・・・「分かっているって。カルネ(肉)なら、すぐに出来るぞ」と言いながら、オジさんは、冷蔵庫から取り出した骨付き肉を、薪ストーブの中に突っ込む。

 待つこと20分。肉が焼きあがりまして。パンと一緒にいただきました。美味かったです、ごちそうさまです、オジさん。オジさんには、次のコクランの宿も紹介してもらっちゃいまして。ホントお世話になりました。さて、腹を満たし、出発。再び、湖から川へと変貌するベイカー川の起流に見とれながら、自転車を走らせる。しばらく、ベイカー川沿いに走っていた道も、いつの間にか川から逸れ、アップダウンの激しい山道に。そして、再び見えてきたベイカー川は、クリーム色に変わっており、ちょいと残念。あの透明度の高い真っ青な水は、ホントに起流のところでしか見えなかったようだ。もうちょっと堪能しておけばよかったなぁ。というか、昨日、プエルト・ベルトランドの手前でテントを張らずに、プエルト・ベルトランドを過ぎた川のほとりでテントを張っていればよかったのに、と今更ながら後悔。アウストラル街道沿いの町って、だいたい何らかの見所ポイントがあるんですよねぇ・・・どこでもテントポイントになるから、町を避けてテント泊っていうのもいいんだけど・・・通り過ぎるだけではもったいない町がたくさんありすぎる。

 さてさて、今日の道は大変だった。まず、道の状態がひどい。未舗装なのは相変わらずなのだが、砂利が多すぎてタイヤがカラ回る。そして、延々と続く上り下り。もはや自転車に乗ってこぎならが上ることは不可能な上り坂を、重い自転車を押し押し上る。やっと下り坂になり、楽できると思いきや、砂利でズルズルと滑るので、怖くて乗っていられない。結局下り坂も自転車を降りて、重力にしたがって自然に落ちる自転車を支えながら下る始末。湖沿いの道から外れることになるから、少しは平坦な道になるかと期待したのだが、まったくの期待はずれ。やっぱり楽はさせてくれないなぁ、アウストラル街道。でも、好きなんだけどね、この道。

 とにかく大変だった山道。自転車に乗っていた時間より、降りて押したり支えたりしていた時間の方が明らかに長い。ちょっと進んだら移り変わる景色は素晴らしいのだが、自転車走りとして楽しかったかどうかは、微妙な今日の行程・・・

 そして、夕刻、ようやく今日の目標地であったコクランに到着。アウストラル街道としては、コイアイケに続く大きな町であるコクラン、久々に人で溢れる町が見れて、気分が高揚するオイラ。いやぁ、アウストラル街道を走っていると、ホント人に会わないんですよ。町に着かない限り、車に乗っている人以外に人と出会うなんてほぼ皆無だし、町に着いたとしても、今朝のプエルト・ベルトランドのように、時間によっては、人がまったく出歩いていない町もある。人が居ないところで、人と会わないのは、当たり前と割り切り、そんなに寂しい気持ちにはならないオイラであるのだが、パタゴニアに入って、ホント、人に会わない時間がず~と続く毎日を送っていると、正直、ちょいと人恋しくなってくるもんなんだなぁ、と、コクランでの心の高揚具合を見て、実感するのであった。

 さて、まず、宿探しなんですが、プエルト・ベルトランドでお世話になったオジさんに紹介された、ホスペダヘに行ってみる。5000ペソで、台所が使えて、部屋もきれい。いいんじゃないか、とここに泊まることに。この時には、まだ、この宿がアウストラル街道で泊まった宿の中で、最高に素晴らしい宿になった、ということにはまだ、気付いていないオイラ。

 シャワーを浴び、洗濯し、食料買出しにと、入ったスーパーマーケット。いやぁ、モノで溢れているのに感激。そうそう、アウストラル街道沿いの町には、もちろん、どこの町にも店はあり、モノは買えるのだが、品数が少ないし、高いのです。基本的にどこでも同じものを買うことになり、ショッピングではなく、ただの食料調達。選ぶ楽しみは皆無でして。そこへいくと、ここ、コクランのスーパーは、久々に選べる品揃え。チレチコも、それなりに大きな町だったので、スーパーではまぁある程度のものはあるのですが、品揃えはビミョーで。あ、といっても、コクランも、そんなにビックリするほどの品物はないですよ。比較論として、今までがあまりにも選択肢がなかったから、ってことで。これを読んで、コクランに行けば、何でも手に入るのか!と期待しないでくださいね。

 シャワー、洗濯、買出しと、到着したら、まずすべきこと3つを済ませたので、町をブラブラすることに。ツーリストインフォへ行って、一応、ここで、ラフティングかカヤックが出来ないか?と聞いてみたものの、ラフティングはやはりプエルト・ベルトランドでないとやっていないとのこと。カヤックは一軒、扱っているところがあるよ、と言われたので、行ってみたものの、今はやっていないと。やっぱりちょいとシーズンが早いのか・・・11月だと、こういったアトラクションを楽しむのは難しいぞ、パタゴニア。

 まぁ、なんか町の雰囲気が素敵なコクラン。散歩して、広場でボーっとしているだけで気持ちよい。ここで、明日一日ゆっくり休むとするかな。