(English)
Today I could see the most beautiful scene in Patagonia.
(Español)
Hoy podría ver la escena más bonita en Patagonia.
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昨日の晩、ひたすら降り続けていた雨は、朝になったら止んでいた。そして、空は見事な快晴。う~ん、気持ちいい。長いパイネトレッキング、天気に関しては、まぁ、それこそ天まかせで、よっぽどの雨でない限りは、淡々と進み続けようと思っているので、晴れていようが、曇っていようが、小雨がぱらつこうが、いいんですケド・・・今日だけは、晴れてほしかったんです。というのも、オイラ的には、今日のルートを歩くために、パイネに来たといっても過言ではないほどのメインイベントルートでして。
なにが、メインイベントなのかって?
氷河なんですよ。グレイ氷河。
氷河なんてもう、飽きるほどみてきたんでしょ?
今更、なんで、氷河を見るのがメインイベントなの?
パイネのサーキットルートにある<Paso John Gardner>という峠を越えると、眼下に氷河が見えるんですよ。
・・・<眼下に>氷河が見えるんです。いくつも氷河を見てきましたが、見下ろして氷河を見るのは初めてなんです。というか、お土産屋に並んでいたポストカードで、氷河を空撮した迫力満点の素晴らしい写真を見て以来、ぜひとも、どこかで、氷河を見下ろしてみたいという願望を抱き続けてきたのですよ。それが、今日歩くルートで、実現するらしいのです。これはワクワクせずにいられますか。そして、見るからには、晴れた空の下で氷河を眺めたいって願っていたワケなのです。
そんなこんなで、願いが通じ、晴れた空の下、今日も、リョウマくんと一緒にトレッキング。さて、歩き出したのはいいが・・・いきなり難所。ひたすら上りが続く林道に突入。しかも、その林道が、泥道。どうやら、通常でも小さな川が流れていて、水が溜まりやすく、ぬかるんだ道らしいのですが、今朝は、昨日の雨の影響で、ひどいことになっている。なるべく、足場のしっかりした石の上や、木の根の上を歩いていたのだが、ちょっと気を緩めた拍子に、右足が泥の中に埋まってしまった。うぬぬ・・・
悪戦苦闘して、なんとか泥道林道を抜けたら、今度は、大きな石がゴロゴロ転がっている砂利道。足場が安定せず、歩きにくい。まぁ、泥道よりはいいか、と歩いていたら、目の前に広がるのは雪。そして、その雪の上に点々と続く足跡。いやいや、ここを歩けと。なかなかハードなコースです。ちなみに、今日のこの峠越えコース、様々にはりめぐらされたパイネのトレッキングルートの中でも一番の難所とのこと。今日は、二人とも、ほとんど口をきかず、黙々と歩き続ける。ずっと続く上り。次第に高度があがっていき、風が強くなってきた。周囲に雪があるせいか、風が非常に冷たい。滑りやすい雪の上を、ゆっくりと一歩一歩踏みしめながら、上り続ける。
永遠に続くように思えたこの上り峠も、ようやく頂上に到着できた。リョウマくんと固い握手。いやぁ、なんか、この苦労を分かち合うって感じがいい。一人だと味わえないな、この感じ。
で、そのまま、峠を越えたところで・・・チラリと見える白い大雪原。あれが、グレイ氷河か!!!興奮のため、自然と足早になる。そして、駆け寄った峠の先から見えた風景に、おもわず、息を呑む。
世界の果てか・・・ここは・・・
人間が辿り着けるのは、ここまで。ここから先の領域へは、生物を一切受け付けない、という雰囲気を漂わせる厳しい美しさが、神々しい世界を作り出している。
スゴイ、スゴイ、とにかくスゴイ風景。真っ白い表面にゴツゴツと刻まれたクレバスのディテールが、心を猛烈に揺さぶってくれる。これ、これ、これを見たかった。そして、憧れていたゆえ、頭の中で相当ハードル高くして妄想していた風景以上の絶景が目の前に。これだ、さすがパタゴニア。パタゴニアは、いつだって、オイラの想像の上をいってます。どんだけハードル高く期待していても、その期待を裏切ることはない。
うひょ~
嬉しい悲鳴。そして、はしゃぐ。このテンションの上がり具合は、ウユニ以来。この絶景を前にして、リョウマくんと一緒に昼ごはん。一息ついたところで、そろそろ出発したげなリョウマくん。オイラは、もうちょっとこの風景を堪能したかったので、リョウマくんには先にいってもらうことに。次のキャンプ地カンパメント・パソで落ち合おうと約束し、一旦別れる。
他に居たトレッカーたちも、いなくなり、この雄大なる風景の中にオイラ一人ポツンと残された。この瞬間が大好きだ。スゴイ景色を見たときの興奮を共に分かち合える人がいるっていうのも素敵なことなのだが、とてつもない大自然にただ一人で向き合うというのは、たまらなく幸せを感じる瞬間なのだ。
自分の体内が、幸せな気持ちで包まれていく。
この先のパイネの風景はまだ知らないが、おそらくこの風景がパイネで最高の風景だと思う。ここを見ずしてパイネを去るのは、あまりにももったいない。オイラ的には、早くもパイネのクライマックスを迎えた気分。後のトレッキングは、正直どうでもよくなってきた。だって、この風景だけで、すでにお腹一杯になっちゃったんだもん。
相当長い時間、ここに居た、と思う。まだまだこの絶景を見ていたかったが、そろそろ動かないと、体が冷えてしょうがない。名残惜しい気持ちを残しながら、キャンプ地へと向かうことにしたのでした。
さて、歩き始めたのはいいが、ここからの下りがしんどかった。まるで、崖を降りるがごとく急な坂道を降りていかねばならない。注意しながら降りているにも関わらず、二回も足を滑らせて、シリモチをつくハメに。しかも、この下り道、林の中に作られており、脇にあの氷河の雄大な姿の気配を感じるも、その姿は見えない。まぁ、あの氷河の姿がなまじっか見えちゃったりしたら、そちらに気をとられすぎちゃって、もっと足を滑らせることになったかもしれないんで、返ってよかったのかもしれないが・・・
途中一箇所、川の先がミラドールになっている場所があり、そこから、再び、絶景の氷河を見下ろして眺めることができた。ここでも1時間ほど、その風景を眺めながら時を過ごす。
そして、しばらく歩いてようやく、パソキャンプ場に到着。このキャンプ場は、無料。一応、管理人らしきお兄さんがいて、テントはるんだったら、ここに名前を記入してね、と指示されるのだが、それだけ。適当な場所にテントをはる。ちなみに、無料のキャンプ場なのだが、一応トイレはある。そして、風除けのシェルターがあり、料理などはここで風を気にせず作ることができる。
さて、テントをはって、川の水で洗濯し、一息ついたところで、この近くで、グレイ氷河が見れるところがあるのなら、また見に行きたくなってきた。管理人のお兄さんに「この辺にミラドールはないのか?」と聞いたところ、オイラ達が来た方向とは逆方向、つまり明日向かう方向に5分ほど歩いたところに、ミラドールがあるぞ、と教えてくれた。ということで、早速そのミラドールに向かうことに。ホントに、ちょっと歩いたところにあったミラドールから見た風景は・・・
ここからのグレイ氷河もスゲー!!!
ちょうど、傾きかけた日が、氷河表面のゴツゴツの陰影を強調していて、先ほど峠から見た世界とは、また一味違った表情の世界をかもし出してくれている。ここでもしばし時が経つのを忘れて立ち尽くす。
さて、一旦キャンプ場に戻り、夕食の準備をしていたら、リョウマくんが現れた。「到着してすぐ、テントに入って、ついつい、寝ちゃいましたよ。今、起きました」と。どうやらリョウマくん、近くのあのミラドールから、まだ絶景を見ていないらしい。「この先の近くにあるミラドールからの眺めもスゴイから」と教えてあげると、「飯食べたら行ってみます」と。ということで、一緒に夕飯を作って、食べる。夕食後、リョウマくんは、ミラドールへ。そして、キャンプ場のテーブルにて日記を書くオイラ。
日記を書き終えたので、オイラももう一度ミラドールへ行ってみることに。すると、そこには、呆然と立ち尽くすリョウマくんの姿が。「ここは・・・この風景は、これまで見てきた風景の中で、一番です」とリョウマくん。でしょ~、スゴイっしょ。再び、この感激を誰かと共有できる喜びに浸る。それにしても、さっき見に来た時より、さらに陰影が深くなった氷河の表面は、これまた違った表情へと変化している。これまた、美しい・・・氷河は、夕暮れ時が絶妙な鑑賞タイムかもしれませぬ。刻々と変わっていく氷河の表情に、ウットリさせられること間違いないでしょう。
結局、日が暮れるまで、このミラドールから離れられなかったオイラだったのでした。それにしても、今日は最高の一日だった。これを満足といわずに、何を満足といおう。
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