Ultimo viaje lateral
最後に寄り道

2011.1.26 / Argentina (Tolhuin~曲がる木付近) 本日 自転車107km走行 : Total 25827km走行
天気:晴のち曇 自転車折りたたみ:1
朝飯→パン 昼飯→パン 夕飯→パン / 宿→テント泊

(English)
 At least 100km, I could arrived at Ushuaia. But I run on other road. So I didn't arrived at Ushuaia today. I went to see bend trees. These trees were amazing.



(Español)
 Por lo menos 100km, pude llegado a Ushuaia. Pero corro en otro camino. Así que hice no llegado a Ushuaia hoy. Fui a ver los árboles de la curvatura. Estos árboles estaban asombrando.
 朝、パン屋のベッドで目が覚める。パン屋の朝は早い。顔を洗いに部屋の外に出ると、もう、パン作りが始まっていた。「ブエノス・ディアス!」挨拶しながら、洗面所へ。

 出発の準備を整え、お世話になったお礼を言いに、パン屋のカウンター、そして厨房へ。「出発前に腹ごしらえだろ、まぁ、食ってけ」と、朝食に菓子パン&コーヒーをいただく。ホントにありがたい。がんばっている(とはいえ、自転車旅とは、ただの個人的な道楽なのだが)人を無償で受け入れる/応援する、パン屋さん。市場経済的に考えれば、なんでそんなことをやっているの?と思われるかもしれない。オイラも最初、そう思っていた。でも、このパン屋で、一宿二飯、お世話になって、その理由がわかってきた。このパン屋のオーナーは人が好きなんだ。多くの人が集まってワイワイする場を作りたい人なんだと思う。このオープンさが人を招く。結果的にパンが売れる、それでいいじゃないか、と。パン屋であるが、それ以上の<何か>がここには宿っている。昨日感じた幸せのかほりは、きっとその<何か>が発する奇跡の匂いなんだと思う。

 空も晴れ渡り、心地よい。こんなにも素敵な想いに包まれて、アメリカ大陸最後の走りを始められるとは、なんて幸せモノなんだろうか。これから真西に進むことになるので、風が吹いていると向かい風になってしまうのだが・・・風はほぼ無風。「俺たちはラッキーだ」と言って、先に出発するラウルを見送り、オイラも出発。今までの道はわりとパンパ的な平原を突っ切る道だったのだが、このあたりから、次第に険しい山々が見えるようになってきた。パタゴニアの山はやっぱりいい、素敵だ。

 朝雲ひとつなかった空は次第に雲に覆われてくる。そうそう、風がない日は、すぐ空が雲で覆われる、ということに気付いた。雲が動かないためなのだろう。この辺の地形では、常に雲が発生するのだが、風がある日は、その風が雲を動かし、曇天になることはないのだが、風が止んだ途端に、雲が空にたまってしまうのだ。風か曇か、どちらも選択したくない二択なのよぉ・・・トホホ。ちなみに、夜になると雲の発生が止むらしく、朝は大抵雲ひとつない快晴となる。フエゴ島では、この朝の快晴に何度騙されちゃったことか。

 しばらく走っていたら、登り坂になってきた。前ギアを取り替えて、望むところだ登り坂、と思っていたのだが、結局6段ギアで挑まなくてはならなくなった今、登りはキツい。しかも、ゆるやかに、延々と上っていく坂。風さえなければ、最後の100kmは余裕だと思っていたのだが、意外とこの坂地帯に手間取ることに。

 さて、坂を登り終え、下ったところに分岐道が見えた。右に進めばウシュアイア、左に進めば・・・パタゴニアの爆風にあおられ、斜めになっちゃった木が見える場所へ辿り着く。ブエノスの上野山荘別館に飾られていた写真を見て、ウシュアイアに行ったら絶対見ておきたいと思っていた斜めの木。ウシュアイアに到着した後、自転車でサイクリングがてら見に行くか、と思っていたのだが、プエルト・ナタレスで、ウシュアイアにすでに行ってきたタツヤくんから、この斜めの木の場所情報を聞いたところ、ウシュアイアから結構遠いとのこと。80kmも離れた場所にあるらしいのだ。自転車で行くと一泊の小旅行となってしまう。で、今、自転車で通っている3号線のこの脇道から行けば、40kmほどで辿り着けると聞きまして。未舗装だという脇道が、ひどい未舗装だったら、スルーしようと思っていたのですが、辿り着いて見てみた脇道は、そんなにひどい未舗装道ではない。砂利もすくなく、しっかりと踏み固められている。

 このまま右にいけば、今日中にウシュアイアに到着することも可能なのだが・・・まぁ、焦る必要はないか。到着は明日になっちゃうし、きっと今日はテント泊になっちゃうけど、・・・いいじゃん、最後の寄り道。

 ということで、脇道に突入。アウストラル街道を思い出すような気持ちよい林道が続く。空にはコンドルらしき鳥も飛んでいる。道の状態がよいので、未舗装道にしては、わりとスピードを出して走れる・・・が、これが落とし穴だった。周囲の気持ちよい風景に気を取られた一瞬で、道の脇にちょっとだけ盛ってあった砂利に車輪がとられた。そのままコントロールを失った自転車が、道脇のブッシュに突っ込む。コケた。

 まぁ、そんなに大コケってほど大げさなコケかたでもなかったし、体に傷も受けなかったので、よかったよかったと、態勢を立て直したところ・・・フロントバッグがブラ~ンとしている。えぇ!!!ひょっとしてフロントキャリアが折れたか!?、と、驚いてチェックしてみると、フロントキャリアは大丈夫だったのだが、フロントキャリアを支えるアタッチメントの止め具部分が折れてしまっているではないですか。あぁぁ、ここに来てこの破損・・・やはり寄り道はしないほうがよかったか、なんて想いも頭をかすめる。とりあえず、フロントキャリアをアタッチメントに紐で縛りつけるという応急処置で固定する。まぁ、これでなんとかなりそうだ。それにしても、やっぱり未舗装道は気をつけないといかんな。アウストラル街道で無事故だったのは、奇跡的だったのかもしれない。というか、アウストラル街道は、道が結構荒れてたから、あんまりスピード出さなかったのが幸いしたのかもしれないな・・・そういえば、ボニートで大コケしたときも、未舗装道でスピード出してたからだった。う~む、未舗装道ではスピード厳禁だ。

 気を取り直して、走り始める。脇道に入って30kmくらい走ったところで、突然林道が開け、目の前に海が広がった。ビーグル水道だ。あまりにも素敵な風景に、先ほどの中コケ事故はすっかり頭から吹っ飛んでしまった。いや、この風景を見に来たと思えば、アタッチメントの一つや二つ、犠牲にしてもいいじゃないか、なんて思えてくる。

 対岸はチリ領。その対岸に、家々が集まった場所がみえる。多分、あそこがプエルト・ウィリアムスという町だ。そう、実は、世界最南端の町というのは、オイラがゴールとして目指しているアルゼンチンのウシュアイアではなく、この目の前に見える、チリのプエルト・ウィリアムスなのだ。本来ならば、このプエルト・ウィリアムスを最南端ゴールとしたいところだったのだが・・・ここに辿り着くには、船で渡らなければならないんです。最後はやっぱり、走ってゴールしたいじゃないですか、自転車旅なんで。船で辿り着いて、ゴールってやっても、イマイチ・・・ね。ということで、自転車旅としてのゴールはウシュアイアってことにしているんです。ただ、最南端の町ってことで、プエルト・ウィリアムスには興味シンシン。ウシュアイアでちょっと休息したら行ってみようかな。

 そんなビーグル水道の素敵な風景に気をとられた後、ふと、周囲を眺めてみると、あちことに、枝が変な方向に曲がっちゃっている木がみえた。おぉ、これが噂の曲がった木なのか、とプチ感動。普段はこの地帯、パタゴニアの暴風が荒れ狂う場所らしく、木がこんなふうになっちゃうらしいのだ。もちろんこの木、生きてます。柳のように、風にしなるほどの緩やかさがない、南極ブナ、風に対して折れるではなく、曲がることで、対抗している。無風な今日も、曲がったまま。風の凄さってなかなか写真では伝えられないもんなんですけど・・・どうです、これで、パタゴニアの風がどんだけスゴイか感じてもらえます?

 一応、曲がった木が見れたんで満足は出来たのだが、もうちょっと奥に行くと、もっと巨大な曲がった木が見れると聞いてまして・・・せっかくなんでね。ここまで来たからには行っておくかと、巨大な曲がった木へと向かうことに。

 そして、それは、7kmくらい走ったところの道脇にあった。思っていたほど巨大ではなかったのだが、これまで見てきた曲がった木たちと比べると、二周りくらいデカイ。

 この木の前でファニーバニーにまたがった写真をパチリ。うんうん、パタゴニアを走って来た証として、このショットが撮りたかった。なんだかんだ言って、パタゴニア=風だったもんな。その強烈な風の思い出をビジュアル的に残す場所としては最適な場所です、ここ。