Fin del mundo
アメリカ大陸縦断自転車旅の終着、世界の果て。しかし旅はまだまだ終わらない

2011.1.27 / Argentina (曲がる木付近~Ushaia) 本日 自転車101km走行 : Total 25928km走行
天気:曇時々雨
朝飯→パン 昼飯→パン 夕飯→チャーハン&ステーキ / 宿→上野山荘1日目

(English)
 Today I arrived at Ushuaia!!! Here is last point of running journey through America with bicycle.



(Español)
 ¡Hoy llegué a Ushuaia! Aquí es en último lugar punto de ejecutar la jornada a través de América con bicicleta.
 朝7時前、風で揺れるテントの音で目覚める。今日こそ本当に南北アメリカ大陸自転車旅のラストラン。あと70kmほどで、世界の果ての町、ウシュアイアに到着する。

 昨日の晩開けたサバ缶の残りをパンにはさみ、ゆっくりとかみ締める。今日はなにをやっても、いちいち、気持ちがせつない。

 テントをたたみ、出発。例によって朝だけ太陽が覗く青空。ビーグル水道をのぞむ風景が、昨日より美しい。

 昨日通ってきた未舗装道を逆走し、分岐点まで戻る。さぁ、ここからは一気に、と気合を入れなおしたところで、雨がぱらつきはじめた。雲行きはだんだん怪しくなっていたので、もしやと思っていたのだが、やはり降り始めちゃいましたか。んん~、ラストランでは、雨は避けたかったのだが・・・ま、しょうがない。雨、風との戦いがパタゴニア走りなのだ。こうなったら、最後まで、徹底的につきあいますよ、とそのままウシュアイアへの道を走り始める。

 と、そんなオイラの覚悟に圧倒されてくれたのか、しばらくすると雨は止んでくれた。よし、このまま天気はもってくれ。

 途中、何人かのチャリダーとすれ違う。すれ違いざま、これから旅立つ彼等にエールを送る。

 そして、目の前に素敵な風景が広がってきた。パタゴニア特有の厳しい岩肌を露出した山々が連なる連峰。思わず立ち止まる。ちょうど、同じように風景に魅せられて止まっていた車から、おじさんと息子の親子が降りてきて、話しかけてきた。「これの自転車で、アラスカからここへ?」驚いてくれるオジさん。ええ、そうです。オイラ自身も、なんだか半信半疑です。そんなオイラたちのやり取りの隣では、目を輝かせてオイラのファニーバニーを眺めてくれる息子くんが。

 そんな親子と別れ、再び走り始める。ウシュアイアまでもう後10kmほど。風はなぜか追い風。風も祝福モードか?オイラのゴールを後押ししてくれるのか。

 連なった山の脇を走る道の先に、なにやら検問所のような建物が見えてきた。そこには<Welcome to the southernmost city in the world>の文字が。ついに、世界の果ての町、ウシュアイアにやってきたのだ。ただ、ここは、町外れの入り口。市街まではもう少し走らなければならない。工事中のルート3から外れ、海岸沿いの道へ出る。次第に交通量を増す道路、そして、目の前には、コンテナ埠頭、軍艦、でっかいフェリー船が見えてきた。

 そして、ついに、ウシュアイアのセントロに到着。とうとう、世界の果てまで来たんだ・・・オイラの心の中に熱いものがこみ上げてくる。これ、この状況、そして気持ちはぜひ写真に刻んでおきたい。しかし、この世界の果てへ到達したという気持ちを写真に定着させるにはどうしたらいいのだろう・・・世界の果てを視覚化するには・・・カメラマンとして勝手に崇めているクリストファー・ドイル師匠は、映画<ブエノス・アイレス>の撮影日記にこう記している。

 「世界の果て」はどんな様子をしているのだろうか。そこへ行ってみなければわからないはずだ。そう、それは南回帰線の表示と同様、きわめて抽象的なものにちがいない。「かぎりない地平線」という概念は、言葉にするとすばらしく聞こえるけど、<世界の果て>とロゴの入ったステッカーやTシャツといっしょくたにするわけにはいくまい。「ここが世界の果てだ」という言葉を視覚化するにはどうすればいいのだろう?

 ドイル師匠でさえ、悩みに悩んだ<世界の果て>の視覚的表現。走りきって疲れ果てた今のオイラの頭の中で思いつくはずがない。ここは、安易に<世界の果て>と書かれた看板に並んで写真を撮ることをチョイス。ま、<ウシュアイア/世界の果て>と書かれた看板をバックに自転車と並んで撮る写真は、オイラにとって、ちょっと特別な意味がある。ドイル師匠の言う<ロゴの入ったステッカーやTシャツといっしょくた>なモノとは違う。メヒコで出会ったアンドレイの見せてくれた旅写真の一番最後を飾る素敵な写真が、その構図の写真だったのだ。

 ぜひ、あの看板をバックにした写真を撮りたい、と<ウシュアイア/世界の果て>の看板を探して、町をウロウロする。しかし・・・ない。そんな看板はどこにも見たたらないのだ。グルグルと町を走り回ること3時間、ただでさえ、疲れて到着したというのに、町中を走り回って疲れ果ててしまった。とりあえず、宿に行って場所を確認してからまた来ようか・・・と、自力で探すことを諦める。

 そして、向かったのは、上野山荘という日本人宿。ブエノスで泊まった上野山荘別館の本館(?)的位置づけの宿だ。この宿も実は、オイラにとってはちょいと象徴的な宿でして。というのも、この自転車旅を思いつくだいぶ前、テレビをみていたら、<こんなところに日本人>という番組で、ウシュアイアの上野山荘のことを取り上げていたのだ。世界の果てにある宿ということで、強烈に印象に残ったここ、自転車旅を始めてからも、憧れの地として、ずっと心の中に存在しつづけていたんですよ。

 で、到着した上野山荘。ちょうど入り口で、すでに到着していたライダーのヒロさんと出会う。「今結構人がたくさん来てますよ。ひょっとしたらベッド空いてないかも」「ええぇ~!」そうなのだ、チリのストで足止めを食らっていた人たちが、スト解除とともに、どっと押し寄せてきたらしく、正月過ぎれば空くだろうと思っていた上野山荘、今もほぼ満室状態らしい。

 とりあえず、中に入れてもらい、ブエノスから、ウシュアイアの管理人へと移ったルミさんと再会し、泊めてもらえるようお願いする。「エクストラベッドでよければ、一つだけ空きはありますけど」ええ、泊めてもらえるなら、全然かまわないです。なんなら、床に寝袋だって大丈夫ですから。ということで、なんとか、ここに泊まれることになり、ホッと一息。

 で、宿の壁に貼られた旅人の写真を眺めていたら・・・例の看板をバックに到達記念を残している人の写真を発見。よくよくその写真を見てみると、背景が港。ん~、これはなんとなく見覚えがあるぞ・・・なんと、そこは、3時間町を彷徨っている時に、何度も通った港の景色。なんだ、あそこにあったのか・・・

 今日はもう、宿でゆっくりしようかな、と一度宿内に持ち込んだ自転車を再び外へ出す。やっぱり、こういう写真はその日のうちに撮っておかなきゃ。明日でも撮れるかもしれないけど、きっとオイラの気持ちが違う、写り込む雰囲気が違くなる。

 実は、セントロから3kmほど離れている上野山荘。またフル装備で、えっちらほっちらと、セントロまで自転車を走らせる。そして、先ほどの写真から、おそらくここだろうと推測した場所へ行ってみると・・・あった、看板。っていうか、ここ、先ほど何度も通り過ぎていたんですけど・・・なんで見落としちゃったんだろ???

 とにかく、ここで、記念撮影。パシャ。ああ、なんか、これでようやく、辿り着いたって実感が湧いてきた。記念撮影ってあんまり好きではないんですけど・・・心の区切りをつけるという意味で、アリですな。今更ながら、そんなことに気付く。

 スーパーによって食材の買出しをして、再び宿へ。改めてチェックイン手続きをしていると、ルミさんが、「そうそう、チャリダーのヨシさんに渡してくださいって、預かっていたものがあるのよ」と言って、奥から持ち出して手渡してくれたもの。小さなビニール袋に入った当然切手なんて貼っていない届け物。開けてみたら・・・弓場で知り合ったマミちゃん&ブエノスで出会ったユウキくんからだった。二人からのメッセージカードとともに、入っていたのが、ミサンガ。実は、弓場でミサンガつくりを始めたというマミちゃんに「いいな、欲しい」とポロリと言ったのを覚えててくれて・・・わざわざ作ってくれ、そして、なんと別れた後、彼女の旅先であったメヒコのカンクンから、ブエノスに向かう旅人に託して、届けてくれたのだ。で、本来ならば、ブエノスに戻った時に受け取るはずだった、この素敵なミサンガ、ウシュアイアに管理人としてやってきたルミさんが、気をきかせて、持ってきてくれ・・・最南端に到着した日に、素敵な贈り物として受け取ることが出来たってワケで。

 僕らの思い出の地、
 弓場のある国ブラジルカラーのミサンガ

 いや、これはホント感激でした。

 涙がでました。

 ミサンガを作ってくれたマミちゃん、一緒にメッセージを添えてくれたユウキくん、そして、二人が託した贈り物をブエノスに運んでくれた旅人マホちゃん(オイラは直接会ってない人デス)、そして、ブエノスからウシュアイアへ持ってきてくれたルミさん・・・皆さん、ありがとー。郵便というシステム化されたネットワークには乗らず、知り合いから知り合いへ託され、中南米という混沌の地を、ある意味オイラの自転車旅と同じくらい濃いドラマを背負って届けられた、ミサンガ。世界はこうしてつながっていくんだ。素敵すぎでしょ。あぁ、ただでさえ、想いが濃くなる世界の果て到達記念日なのに・・・こんなにも心温まる贈り物が、今日、この瞬間に手元に届くなんて。ウシュアイア到達の思い出がさらに彩るエピソード。最高の世界の果て到達記念日になりました。

 早速、手首につけたミサンガは、なぜかデカイ。お礼のメールを送ったマミちゃんとユウキくんから、後日つっこみの返信メールがダブルで届いた。「・・・それ、足用に作ったミサンガですよ」と。