Happy Cycling
トリハダたちました

2011.6.4 / Lesotho(Mokhotlong付近~Sani Top) 本日 自転車44km走行 : Total 27885km走行
天気:晴
朝飯→パン 昼飯→パン 夕飯→チャーハン / 宿→Sani Top Chalet(175マロティ)

(English)
 Today I arrived at Sani Pass.



 夜明けとともに、目が覚める。今日はサニパスという峠の頂上に辿り着かねばならない。距離的には40km強らしいのだが、おそらくひたすら上り道が続き、時間がかかると思われるので、早めに出発。

 それにしても、寒い。冬に2200mを越えた山の中の朝は、しばれる。温度計を見ると-5度。そりゃ、水筒に入れておいた水も凍るっちゅうねん。

 そうそう、普段は、一日の水を朝水筒に補給してから走り始めるのだが、レソトでは、前の日のうちに補給しておかねばならない。というのも、ここんところお世話になっているところでは、各家に水道はなく、水は、共用のタンク水道からゲットすることになるんですが・・・これが外にありまして。朝になると、凍っちゃって、蛇口がひねれない。ひねれたとしても、水がでないんですよ。

 そんな極寒のレソトの朝、上は、アンダーシャツにTシャツ、フリース、ダウンジャケットを着込んだ上にウィンドブレーカーを羽織り、下は、パンツに、ももひき型タイツ、サイクリングパンツの上に7分裾のズボンを履き、アラスカで買った耐極寒用手袋をして、走り始める。

 出発した村が最後の村だったのか、以降、家々が集まった場所がなくなった。人影がほとんどない道をひた走る。たまに、家畜を放牧しているレソト人にすれ違う程度。そして、しばらくは平坦な道が続いた。サニパスは2800mよりちょっと高いくらいと聞いていたので、高低差にして600mくらい。一日かけて上る高さと考えれば、そんなにキツイ勾配ではない。このままゆるやかに上っていくのなら、今日はそんなに大変なことにはならなさそうだ、と心がゆるむ。

 と、だんだん上り始めた山道、気づいたら2800mを越えているではないですか。そして、目の前にはまだまだ続く上り坂。峠の頂上らしきものは、まだ見えてこない。

 あれ?

 どうやら、今日の道、最終目的地であるサニパスは2800m強の高さになるのだが、その前に3000mを越える峠が控えているらしい。今オイラが持っている地図は、距離は記されているものの、高低が記されておらず、そんな峠の存在なんて、聞いてなかったよ状態。いやぁ、オイラの場合、ルート計画って、実は、あんまりちゃんとやってなくて、意外と行き当たりばったりなんですよ。ま、だからこそ、怖いもの知らずってことで、無謀な道に突入しちゃったりするんですケドね。

 えぇ~、いったいどこまで上るんですか・・・

 結局3250mまで上ったところで峠越え。1000mアップはやっぱりキツかった・・・が、このトップから眼下に広がる風景のすばらしいこと。ウンウン、無謀だからこそ辿り着ける境地ってのがあるんです。あらかじめ大変さを知ってしまい、避けてしまっては、訪れ得ない場所ってのがね。

 ここからは、緩やかな下りとなった。岩砂利道で下りになっても、さっぱり楽にならない道に悪戦苦闘しながら、前に進む。

 そして、一旦下りきり、残り5kmとなったサニパスに向けて、おそらく最後になるであろう緩やかな上り道を上り始めた時、いきなり体がゾクッとして、両手にトリハダがたった。

 これは、寒いからじゃない。

 朝は寒いレソトも、昼間、太陽が照っている間は、むしろ暑いくらいなのだ。このトリハダは、寒さのせいなんかじゃなく、心が起こしたものだった。サニパスは、レソトと南アの国境にある。つまり、サニパスに辿り着くことが、レソト旅の終わりなのだ。二週間と、あっという間だったが、大好きになったレソト。素敵な人たちと出会え、お世話になったレソト。後半の山道走りがひたすら辛かったレソト。レソト旅のゴールとなるサニパスを目前にして、いろんな想いが心の中から湧いて出てきた。

 郷愁?安堵?悲しみ?

 言葉では、どう表現してよいのか分からない感情が体を覆い、その想いが、トリハダとなって、体の表に出てきたのだ。

 なんか、特別な国になっちゃったなぁ、レソト。

 アフリカに来るまで、存在すら知らなかったちっちゃな国。でも、今、オイラの中で、とても大きな存在になりつつある。う~ん、この感覚の変化、うまく言葉にできないんですけど・・・この心の変化に旅の本質が隠れているんです、きっと。日常では起こりえない、体の反応が、それを示してくれたような気がする。

 そんな想いを抱きながら到着したサニパスの頂上サニトップ。広大な山岳風景の中にポツリとレソトのイミグレとともに、数軒の家々が立ち並ぶだけの場所でして。緩やかだったレソト側の道とは異なり、イミグレを越えた南ア側の道は切り立った崖状態。丘陵の峰峰を眼下に臨むその景色は、神が見る風景。

 絶景だ・・・

 この絶景をテラスから眺められる位置に建っている宿<Sani Top Chalet>。今日はココに泊まって、サニパスの絶景を堪能することに。で、宿にチェックインしようとすると、一泊175マロティと、かなり高めのお値段。ちょいと悩んだのですが、ここんところテント泊続きで、宿代は節約できているし、ま、この景色が眺められるんだったら、いいかと、泊まることに。とりあえず、一番安いバックパッカー部屋をお願いしたオイラ、案内されたのは、絶景が見れるテラスから歩いて5分ほどの場所にある離れの建物・・・えぇ?・・・ここからだと絶景が見れないじゃないですか・・・う~ん・・・ま、とりあえず、5日ほど浴びていないシャワーを浴びようと思って、シャワー室に入ったところ、お湯どころか、水すら出ない。離れなのはしょうがないとしても、あの値段を払ってシャワーすら浴びれないのは納得がいかん、とレセプションに文句を言いにいくと、「そうなんだ、シャワーが使えない、それが問題でね」と。「水が出ないんなら、175マロティは高すぎる。安くしろ~」と言ったら、「シャワーが使えないのは君だけじゃないんだ。そして、他の宿泊客の部屋の値段をしっているか?600マロティ以上なんだぞ。君の泊まっている部屋はそれと比べたら十分安いじゃないか」という論理で説得攻撃に。うぬぬ、皆さんは、一日だけしかも車で来ているから、シャワーを浴びなくてもいいんだろうけど、オイラは5日もシャワーを浴びてないんだぞ・・・と言いたいところでしたが、引き下がるオイラ。レセプション脇の窓から見えるサニトップからの眺めを横目に見ていたら、なんだか、宿のサービスなんて、どうでもいいやって思ってきちゃって。

 夕暮れまでずっとテラスから眺めてました、この絶景。5日ぶりのシャワーは結局浴びれなかったけど、ああ、とっても幸せ気分デス・・・