At Tanzania border
警戒してたのに、タンザニア国境

2011.10.11 / Malawi→Tanzania(Karonga~Tuyuyu付近) 本日 自転車82km走行 : Total 33703km走行
天気:曇時々晴 パンク:2
朝飯→パン 昼飯→ライス&ビーフ 夕飯→ライス&ビーフ / 宿→New Life Resthouse(シングル8000シリング)

(English)
 Today I entered Tanzania.



 さて、タンザニア国境まであと50kmほど。出発する時、ボーダーまであと45kmと書かれた看板を撮影していたら、子供たちが寄ってきて、カメラのアングルに入り込んできた。いやぁ、このあつかましさ。最初は、マラウイ人のグイグイくる感じに、ちょっと引き気味のオイラだったのだが、もう、すっかりこのグイグイ感に慣れてしまいまして。今や、このグイグイくる感じがないと、寂しくてしょうがない。

 いやぁ、この感覚と今日でおさらばなんて・・・まだまだマラウイを去りたくないよぉ。

 なんて思いながら、走り続け、午前中には、国境に辿りつけた。マラウイの出国手続きは何事もなく、サクッと完了。そして、国境のゲートをくぐり、タンザニア側へ。と、ここで、「シリングいる?」と両替商のおじさんが声をかけてきた。マラウイでは、思った以上にお金を使わず、結構マラウイクワチャを余らせてしまっていたオイラ、ここで、両替しておくか、とおじさんに交渉。1マラウイクワチャ=7.5シリングというレートを示してくれたので、お願いすることに。

 そうそう、この国境での両替、とある人のブログに、両替時に、先にお金を渡してしまったら「お金なんて受け取っていない」といわれ、大損した、と書かれていたのを読んで、「なるほど、お金は、相手から受け取った後に、渡すべきなんだな」と、警戒心を抱きながら、臨んだんですよ。

 が、結果的に、オイラも、まんまとお金を騙し取られるハメになるとは・・・

 本日は、その巧妙な両替詐欺のテクニックを解説することにいたしましょう。

 まず、闇両替だから、ということで、トラックの陰につれていかれる。そこに、両替交渉したおじさん以外にも、何人かのおじさんたちが集まってくる。ま、物陰につれていかれるのも、複数人が来るのは、よくあることなので、大して気にはしていなかった。

 で、13,000マラウイクワチャを持っていた、オイラ、計算機で計算し、97,500シリングくれるよう、おじさんにお願いする。もちろん、ここではオイラからはお金を出さず、シリングを渡してくれるのが先だ、と交渉。と、おじさん、10,000シリング札を11枚くれるではないですか。お、なんだサービスか?とほくそえむオイラ。ここで、気持ちが浮ついてしまったのが一つ、敗因だった。ここで、きちんと、計算したとおりの額を受け取っていれば・・・

 お金を受け取ったので、オイラが手持ちの13,000マラウイクワチャをおじさんに渡したところ、「いや、さっきのは1枚多かった」と言って、オイラに渡したシリング札から10,000シリング札を抜き取るおじさん。そう、先ほど、お金を余分に渡したのは、計算された彼らの詐欺手段。お金を渡したところで、すぐに去られてしまわないよう、足止めするための、布石だったのだ。

 そして、畳み込むように、別の両替商のお兄さんが「10,000シリング札ばかりだと、不便だから、細かいのに交換するぞ」と言ってきた。今思えば、10,000シリング札だって、全然町なかで使えるので、悩む必要なんてなく、そのまま立ち去ればよかったのだ。もちろん、このタイミングで、別の両替商のお兄さんが声をかけ、オイラの気をそらす、というのが、これまた、計算された彼らの詐欺手段。連携プレーのテクニック。この時は、そうか、不便か、とそのお兄さんに気をとられてしまったオイラ。オイラが、お金を渡したおじさんから目を離してしまったのだ・・・

 で、ここで、さきほど、オイラと両替したおじさんが、「7.5は売りのレートだった。買いのレートは、6.5だ。さらに10,000シリング返せ」なんて言い出してきた。なんだそりゃ、と思ったオイラ。もらいすぎた10,000は悪いと思ったからそのまま返したが、レートを後出しジャンケンで変えるのは、ナシだ、と言い張る。が、おじさんは引かない。周囲には、ワラワラと、両替商の人たちが集まってきて、このまま言い合いをしていると、めんどうなことになりそうな雰囲気に。揉めるのは嫌だなと思ったオイラは、このおじさんに両替してもらうのは止めにした方がいいと判断。「他の両替商に頼むから、もういい。先ほどのお金を返せ」と、オイラが渡したお金を返してもらい、オイラももらったシリング札を返し、その場を離れた。

 あれっ、やけにすんなり解放してくれるな、なんて思いつつ、改めて、返してもらったマラウイクワチャを数えてみたら・・・8000クワチャしかないじゃないですか。やられた・・・おじさんのことは注意して見ていたつもりだったのに、いつのまに、取ったのだ・・・あ、そうか、オイラが、「細かいのに交換するぞ」というお兄さんに気を取られてしまった隙にか・・・ああやって、何人かで取り囲んで、別の人が囃し立て、注意をひきつけるっているのは、手口だったんだな・・・と、ここで初めて気づいたオイラ。

 慌てて戻ったのだが、時すでに遅し。先ほどのおじさんたちはクモの子を散らすように、いなくなっていた。

 悔しい・・・?いや、実はこの時感じたのは、お金を取られた悔しさより、見事に騙されたことへの感心する想い。いや、悔しいと言えば悔しいんですケドね、でも、それ以上に、なるほど、こういう状況で、人は騙されてしまうのか、という自分の心の中を振り返っての、心理状況分析の方に、興味がいってしまった。話を聞いた他人は、「なんでそんな手口で騙されたの?アホじゃん」って思うだろうし、実際、自分でも後から振り返ってみたら、アホじゃんって思うんだけれども、舞い上がってしまっているその場では、コロッとだまされてしまう、という詐欺テクニック。

 おじさんたちは、そもそも、最初から、オイラとは金の交換をする気なんてなかったのかもしれない。だって、両替商にしてはあまりにも、お金の扱いがルーズだったし(おじさん、自分で計算しなかったし、渡すお金も適当だったし)。後だしジャンケンで、「レートが違う」なんて言い出したのも、オイラが「もういい、止める」と言い出すのを誘う狙いだったのだろう。もし、オイラがそのままつっぱねようとしたら、「8000クワチャしかもらってないぞ」と、抜き取った後のお金を示して、両替額を減額させようとしたに違いない。

 全ては計算づくの攻撃・・・

 お金は先に渡さない、なんていう警戒心だけでは全然充分ではなかったのだ。詐欺というのは、こちらの警戒心の上手に、二重三重の罠をかけて仕掛けてくるものなのだ。ああ、キューバで学習してきたつもりだったんだけどなぁ・・・まだまだ勉強不足か。各国でお金が違う以上、両替は今後も付きまとうことだしなぁ・・・きっとこれからも、オイラの警戒を超えた罠があるに違いない。こればっかりは、勉強代を払いながら学習するしかないのか・・・だとしたら、その勉強代は、なるべく少ない額ですませられるよう、心がけるとしよう。正規でない両替は、一度にたくさんの額やらない、これが、まだまだ未熟な今のオイラにできるベターな対策方法だ。

 減ってしまった8000クワチャをシリングに交換してもらうべく、別の両替商のおじさんを探すオイラ。警戒心をさらにレベルアップしたオイラ、今回は、仕掛けの罠をかいくぐり、無事、シリングゲット。

 興奮冷めやらぬまま、タンザニアのイミグレへ行き、タンザニア入国手続き。50ドルのビザ代を支払い、無事、入国手続き完了。そして、そのまま、近くのレストランで、飯を食べ、気を落ち着かせることに。ご飯とビーフシチューをオーダー。これにコーラをつけて、2500シリング。200円しないお値段。そして、タンザニアも米がうまいのが嬉しい。

 そうそう、タンザニアに入ったら、急に、英語が通じなくなった。お店のオネエサンは、スワヒリ語でまくしたててくる。分からなくて困っていたら、ちょうど食事中のおじさんが通訳で入ってきてくれて助かった。一応ね、英語しゃべれる人もいるんだけど・・・これまでのアフリカでは(モザンビークは別として)、ほとんどの人が英語しゃべれていたのに比べたら、タンザニアではしゃべれる人の割合は極端に低い。東アフリカでは英語で乗り切れるって思っていたんだけど・・・久々に、言葉が通じない苦労を味わうことになりそうだ。

 そして走り出したのだが・・・いきなり山道に突入。ひたすら続く、上り道。

 ちなみに、タンザニアも、道脇は民家と畑だらけだった。子供たちは相変わらずアスングー砲を放ち、たまに、ギブミーマネー攻撃を浴びせてくる。さて、日が暮れてきたんで、野宿をしようかと思ったのだが、そんな状況なので、人目につかない適当なテン場は見つからない。しばらく走っていたら、町に着いてしまった。そこで、目に入ったのが、ゲストハウスの看板。小さな町だったが、宿があるようだ。と、そのゲストハウスを探すも・・・どこにあるのか分からない。タンザニアの町って結構カオス。ゴミゴミしているし、裏道はクネクネしているし。困っていたら、「案内しようか」と声をかけてくれたタンザニア人のお兄さんが。よさげな人だったので、お願いすることにしたら、なんかもう一人、ついてきた。うむむ・・・この人は・・・めんどくさそうな感じ。案の定、人のよさげなお兄さんは、宿に連れてきてくれた後「じゃぁ、旅、気をつけて。ミクミでライオンに食べられないようにね」と爽やかに去っていったのだが、もう一人ついてきたおじさんは「チップくれよ」とうるさくねだり、立ち去ってくれない。あんたはついてきただけで、何もしてくれてないじゃないか・・・そう、実際、宿までつれてきてくれたのは、爽やかお兄さんのほうだったし、最初10,000シリングと言われた宿代を8,000シリングに値下げ交渉してくれたのも、爽やかお兄さんだったのだ。むしろ、爽やかお兄さんのほうになら、チップをあげてもいいと思ったくらいだったのに・・・

 お金を払おうと思った人は受け取らなくて、お金を要求してくるのは渡したくないと思った相手。こんな不条理が世の中の真実だったりするのが、いとおかし。


【今日のイラストメモ】