Battle of Post Office
郵便局に戦いを挑みに

2011.11.29 / Kenya(Nairobi) 本日 自転車0km走行 : Total 35067km走行
天気:曇時々雨 ネット:1
朝飯→サモサ&チャイ 昼飯→ピラウ 夕飯→ムシカキプレート / 宿→Destiny Hotel(850ケニアシリング)

(English)
 Today I stayed in Nairobi.



 「さぁ、合戦に臨むぞ!」

 朝、ネット屋へ行って、EMSの配達状況ページをチェックしたら、本日朝7時、救援物資がナイロビに到着したとのこと。いざ、郵便局へ・・・ん?なぜ合戦かって?

 日本から送られてくる荷物を受け取る際に、関税検査なるものがあるのですよ。まぁ、自国の産業やら経済を守るために、外国からの物資には税金をかけるのは普通。郵便物も、当然、課税の対象になりまして。受け取る荷物の中身をチェックされ、課税対象品には、その場で税金額を言い渡され、そのお金を支払わないと、荷物を受け取れないことになっているのです。で、ポイントは、<課税対象品には、その場で税金額が言い渡され>るってところ。届いた荷物をチェックするのが、郵便局にいる職員さんであり、何をチェックするか、そして、そのチェックした品物にどう税金をかけるか、は、その職員さんのサジ加減となるのです。

 職員さんに、いかにして低い関税額を言わせるか・・・これが、戦いとなるのですよ。前回の救援物資受け取り地であった、アルゼンチンはブエノスアイレスの中央郵便局では、見事に惨敗。郵便局の関税職員の言うがままに、2万円あまりのタックスを支払うハメになりまして。

 ブエノスでのショックが若干トラウマとなりつつある、郵便受け取り。今回は、そのトラウマ感から、またビックリするくらいのお金を払わされてしまうのではないかという不安半面と、そのトラウマを払拭するためにも、なんとしてでも勝つぞ!という気合半面で郵便局へと向かったのでした。

 ちなみに、今回は局留めで送ってもらってまして。宿が下町の怪しいゾーンにあるため、配達してもらうのはちと危ういかも、と判断したからだ。局留め発送は、やってみると結構簡単。宛名に自分の名前を書き、その下に、<Care of EMS Nairobi GPO>と書いておけばいいだけ(ナイロビの場合)。ちなみに、GPOとは、General Post Officeの略。

 さて、ナイロビの中央郵便局、通常の郵便業務の建物とは別に、EMSだけの建物が裏に設けられている。おお、これは、分かりやすい。待合室で待っている人たちは、EMSの荷物受け取りの人だけってことになるからね。すべての業務がひとところで行われていたブエノスの郵便局では、ものすごい数の人で埋め尽くされた待合室、誰が、どんだけ待っているのかサッパリ分からず、延々と待たされる身としては、不安心だけがあおられるカタチになっていましたから。

 で、EMSの建物に入り、窓口で、荷物の受け取りナンバーを告げる。「そこで待ってて」と指差されたソファーには、4組ほどの客の姿。むむ・・・荷物受け取りに待っている人は4組か、これは手早く済みそうだ、と一安心。

 ・・・で、待たされること40分。ようやくオイラが呼ばれた。一組10分程度時間がかかっているってことだ。ちゃんと取り調べられるのかも・・・これは、結構な額を言い渡されるのを覚悟しておかなきゃいけないかなぁ・・・ま、50ドルくらいまでだったら、素直に払うことにするか・・・なんて考えながら、<カスタム>と書かれたドアの中へ。多数の荷物が詰まれている倉庫のような部屋の一角にある、テーブルの前に座らされた。

 「ハロー」少しでのいい印象を与えておこうと、笑顔で検査官のおじさんに挨拶するオイラ。仏頂面だった検査官の唇が少し、微笑んだように見えたのが、緊張する心をちょっとだけ緩ませる。

 「これがキミの荷物か?」と検査官のおじさんが指差すのは、テーブルに置かれたダンボール。送り先はグリーンサイクルステーション。確かにオイラの荷物だ。「ハイ」と答えると、「何が入っているんだ?」と検査官。「自転車パーツです」「自転車のなんだ?」「タイヤです。中古の。」「いくつだ?」「5つです」「5つ?なんでそんなに必要なんだ。売るのか?」「いや、自転車で長旅をしているので、スペアのタイヤが必要なんです」

 売り物だと、確実に高い関税がかかる。これは、あくまで自分が使うものだということを主張。そして、売り物ではないということを強調するため、<中古だ>とうそぶくオイラ。

 「分かった。」と、検査官のおじさん。おおっ、分かってくれたか、このまま検査終了か?ノーチェックで荷物受け取りか?と思った途端、「箱を開けて、中身を確認するぞ」と、やっぱりな流れに。カッターでガムテープが切られ、箱の上部があけられる。

 チェックされることは、みこしていたため、品物は全て、包装箱や値札などは取り除いて入れてもらっている。あくまで、自分が使うため、新品ではない、ということを分かってもらうためだ。で、箱を開けて眼に飛び込んできたのは、むき出しのタイヤ。確かに申告どおりの5つのタイヤが並べて詰め込まれていた。が、そこに詰め込まれているタイヤは、キレイすぎた。どう見たって、新品だ。「・・・これが中古か?」と、一気に厳しい眼になってしまった検査官のおじさん。「え・・・ええ・・・」ウソを突き通せないオイラは、もう、防戦体制に。チェックされたら、すぐばれるようなウソなら、つかなければよかったのに・・・

 怪しいと思ったのか、箱の中をゴソゴソと探りはじめた検査官。タイヤ以外は、ビニールのプチプチでグルグル巻きにしてもらっていて、中身が分からないようにしてある。一見すると、タイヤを保護するのためのクッション材のようにも見えるので、チェックがスルーされる可能性が大なのだ(これ、結構効果が高いテクニック)。が、検査官は、一番上にあったプチプチを破り、包まれていた品物を取り出してしまった。「これはなんだ?」

 取り出されたものはカホンだった。今回わがまま要求で一緒に入れてもらったカホン、知らない人が見れば、ただの木の箱。「自転車に荷物を載せる時に使う台です」とオイラ。「そうか、そうか・・・」これを見て、他には大したものは入っていないと判断してくれたのか、チェックされたのは、このカホンと、タイヤの横に入っていたリムだけですんだ。ラッキーだった。これが、カメラだったら・・・(幸いというか、戦略的にというか、プチプチでグルグル巻きにしたカメラは箱の一番奥に入れてあった)

 「自転車用品には税金がかかるからな」と計算をはじめた検査官のおじさん。「日本では、タイヤはいくらだ?」と聞いてくる。値札は取り除いてあるため、言い値だ。「一本5USドルくらいです」「このタイヤがそんな値段なワケないだろう」「・・・いや、15USドルくらいだったかな・・・」ああ、ビビリなオイラは、ウソを言い通せませぬ。だったら、はじめからウソを言わなきゃいいのに・・・検査官の心象を悪くするだけなのに・・・

 まぁ、これくらいのウソのやりとりは、お手の物らしく、検査官のおじさんは淡々と15USドル換算のタイヤ5本と、10USドル換算のリム2本の品物代に、関税率をかけて、タックス代を計算し始めた。よくわからない計算式(っていうか、紙に書いてくれたのだが、おじさんの字がきたなすぎて、読めなかった)が展開され、はじきだされた数字が<2705>。一瞬、USドル数字かと思ってドキリとしたのだが、そんなはずはない。「ケニアシリングですよね」と確認してホッと一安心。

 隣の窓口に行って、2705ケニアシリング(2700円くらい)のタックスを支払い、もらった領収書を検査官のおじさんに渡して、救援物資を受け取る。

 おおお、思ったより、安くすんだぞ。今回はオイラの勝利だ。今回の勝因は、チェックされたのが<カホン>だったってこと。一見、安そうなものを最初に見られたため、大したものは入っていないと判断してくれたと思われる。これは運というか・・・狙ったのか偶然か、こういう箱詰めをしてくれた平田さんのおかげ。

 さてさて、宿にもどって、早速ダンボールから救援物資を取り出す。今回送ってもらったのは・・・

・前輪&後輪ホイールリム
・タイヤ(マラソンプラス)x4本
 (それに、マラソンレーサータイヤが1本おまけ)
・18インチチューブ x5個
・ハンドルグリップ
・フロントアタッチメント
・BD-1前輪サスペンション用バネ
・BD-1後部固定用のヒンジ
・Canon SX230HS(デジカメ)
・SDHCメモリーカード
・SX230HS用ウォータープルーフケース
・カホン

 いやぁ、助かる。とりあえずの応急処置でしのいでいたBD-1を不安ないものに直せるのが嬉しい。ここ、ガタガタなんだよな・・・とか、ここ、壊れるかも・・・って思いながら自転車をこぐのは、精神安定上よくない。旅を思いっきり楽しめなくなるしね。早速メンテ・・・といきたいところだったけど、今日はもう、疲れちゃったから、メンテは明日にしよっと。

 そして、新たに手にしたのが・・・旅カメラとしておそらく究極のカメラと言える、コンデジSX230と、前々から旅のお供にぜひとも欲しいと思っていたカホン。これでオイラの物欲は、ほぼ終了です。もうこれ以上欲しいモノはありません。

 と思っていたのだが、平田さんが品物を送るのに使ってくれたダンボールが、ふと気になった。ん・・・これ、ブロンプトンの箱じゃないか!ブロンプトンとは、BD-1と人気を二分する、イギリス製の折りたたみ自転車。その存在は知っていたのだが、気になっちゃったのは、この箱の大きさ。折りたたんだBD-1のサイズを身にしみて知っているオイラとしては、無理なく抱えられる程度の大きさの箱に感激させられた。折りたたむことでこの箱にすっぽり入っちゃうのか・・・ブロンプトンは。BD-1より一回り、いや二回りくらい小さくコンパクトになるようだ。むむむ、ブロンプトンで、チャリ旅っていうのもいいかもしれないぞ・・・あれっ、これって新たなる物欲?いやいや、そんなことを考えると、ファニーバニーがへそを曲げちゃうかもしんないからな。この野望は、胸の中にそっとしまっておくことにしよう。