Go and back
道を戻る時に気づいたこと

2011.12.7 / Kenya(Kericho~Nakuru) 本日 自転車106km走行 : Total 35508km走行
天気:晴 ネット:1
朝飯→サモサ&ティー 昼飯→ピラウ&サモサ 夕飯→ビーフ&チップス / 宿→Dakaka Lodge(600ケニアシリング)

(English)
 I run to west. But I noticed that I wanted to run north side of Nakuru after arriving at Kericho. I decided to go back to Nakuru.



 昨日走ってきた道、特に後半は、峠道だったし、道の状態も悪くて、大変だったのだが・・・走っていて心地よかった。ちょっと雲が多かったが、青空が見える中、緑溢れる山岳道を走るのは、やっぱり、いいものなのだ。東アフリカ走りをサッサと終わらせてしまおう、と思っていたオイラだったのだが・・・昨日、この道を走り終え、ケリチョの宿のベッドの上で、一息つきながら、ミシュランの地図を眺めていて、ふと、思ってしまった。

 「ケニア走り、サッサと終わらせるのはもったいないんじゃないの?」

 頭の中には、今も、断念した、ナクル北部道が残っていた。越えるのが大変そうだからと敬遠した峠、トゥゲン・ヒルと、チェランガニ・ヒルには、実は、その間にケリオ・バレーという谷間を挟んでおり、ここが、メッチャ素敵そうなのだ。最初面白そうだと思っていたボゴリア湖は、どうでもよくなったのだが、ケリオ・バレーが気になってしょうがなかった。にもかかわらず、昨日の朝は行かないという選択をしてしまった。が、やはり迷った場合は、無難なほうではなく、興味があるほうに行くべきだったのだ。山岳道を走り終えた夜の現在、ケリオ・バレーも走ってみたいという気持ちがムクムクと湧き上がってきてしまいまして・・・

 「やっぱり、走ってみるか、ナクル北部道」

 と、思ってしまった。オイラの性格上、思ってしまったからには、もう止められない。当然、この判断により、ナクルへ戻ることになる。昨日走ってきた道を戻ることが、超めんどくさいことだと、分かっているのだが・・・ここは、もう戻ろう、と。そうしないと、心が納得しないのだ。一応、別のルートを通って、ケリオ・バレーに行けるかどうか、検討してみたのだが、やっぱりナクルから北上するのが、一番素直っぽい。

 もともと、ココから先は、キスムを通って、カカメガの森を見た後、ウガンダ国境へ向かう予定だった。このルートだと、早ければ3日後には、ウガンダに入国できてしまっただろう。消化試合のような走りをしていたオイラだったら、このルートでよかったかもしれない。が、突然、また、走りに目覚めてしまったオイラには、物足りなく感じられてしまった。こういう気持ちは突然来る。パタゴニアの時もそうだった。チロエ島で盛り上がらず、パタゴニアは消化試合だな、なんて思っていたのに、アウストラル街道を走り始めた途端、走りがたまらなく、楽しくなってきちゃったのだ。そのテンションが、オイラに、ヘネラル・カレイラ湖を一週半もさせてしまった。今の気持ちは、あの時の感じに似ている。そう、旅のモチベーションなんてものは、自分自身でどうにかするものではない。<その場所にどうにかされちゃう>ものなのだ。ようし、峠でもなんでもやってこい!ドMチャリダーは、それでこそ燃えるってもんだ、なんて気持ちが、沸いてきちゃった今、ウガンダへサクッと進むルートより、ナクルに戻るルートの方が、ドキドキしてしまうのだ。だから、戻る。

 非合理だ・・・普通に考えればそうだろう。あと3日でウガンダに行けるのに、ルートを変えることで、一週間後にウガンダに入れるかどうかも、怪しくなってくる。さらに、大変な思いで走ってきた道を、わざわざ戻るなんて、合理的に考えれば、ありえない話だ。でも、これは、旅なのだ。合理的に前に進むことを目的になんかしていない。戻ればいいだけじゃないか。ドキドキする気持ちの方を優先する・・・この非合理さこそが、旅なのだ。

 ということで、戻ることにしました、ナクルへ。

 今日も、天気は快晴。ひょっとしたら、小雨季はそろそろあけてきたのだろうか?だとしたら、ますます、ケリオ・バレーに向かう判断は、グッドチョイス、ということになる。一応、晴れた空の下で、雄大な風景が見れるよう、オイラに憑いている天気の神様に念入りにお願いしておくとするか。

 来た道を逆走しはじめたオイラ。昨日走ってきた道なのに・・・見える風景が違うのに気づいた。昨日走ったのは夕刻、しかも雲が多くかかっていたのに比べて、今日走っているのは、太陽光がまぶしい朝だ、という違いがある、というのは大きな要因だとは思う。でも、それだけじゃないのだ。ある方向に進みながら見えるものと、その逆方向に進みながら見えるものというのは・・・違うものなのだ。

 例えば上り道。上りながら前方に見えるのは、峠の頂のみ。が、この道を逆走する場合、ここは、下り道となり、目の前に見えるのは、雄大に広がる下界の風景となる。

 基本的に上りがメインだった昨日、前に進むのに躍起になって、前方しか見ていなかった。その道の後ろ側には、こんなにも素敵な風景が広がっていたんだ、ということに、下りがメインの今日の道を走っていて、気づかされた。

 キツイのぼり道に挑んでいると、余裕がなくて、ガムシャラに前のことばかりにしか目が行かなくなっちゃうのだが・・・たまには、後ろを振り向いてみるといいのかも。今の苦労の報酬は、この先に待っているだけじゃない。苦労して歩んできた道の方にも、素敵なものが積み上げられているものなのだから。