There is only 10km left
あと10kmが遠かった

2012.6.5 / Mauritania(Tiguent~Nouakchott手前) 本日 自転車96km走行 : Total 38174km走行
天気:晴 パンク:1
朝飯→パン 昼飯→パン&ビスケット 夕飯→サンドイッチ / 宿→レストラン前で野宿

(English)
 I run on Mauritania. Today I wanted to arrive at Nouakchott, but I couldn't. Wind disturbed my running.



 昨日走って、やはり砂漠の日中は暑さが半端ナイということが分かり、今日は作戦変更。朝早くから走り出し、涼しいうちに距離をかせいで、昼間の一番暑い時間帯は、影になるところで休み、夕刻ちょっと暑さが和らいできたら再び走り始めるということにしようと。ということで、今日は早起きして出発。サンルイで寝坊癖がついたオイラに朝早い出発は、ちとツライ。

 さて、昨日は緩やかなアップダウンに苦しめられたのだが、今日、走り始めたら、平坦な道がずっと続いていた。これは、走りやすいぞ、目標の街であるモーリタニアの首都ヌアクショットまで110kmちょいあるみたいだが、結構早めに到着できるのではないか、と心が弾む。都会に入るのはあまり好きではないオイラなのだが、今回は早く街に行きたい。街に行って、おいしいものをたらふく食いたい・・・が、そんな甘い期待は、すぐ打ち砕かれることとなった。風が吹いているのだ、正面から。めんどくさいことに北風だ。北上するオイラにとっては逆風。まぁパタゴニアの暴風を経験したオイラからすれば、そんなに強い風でもないし、涼しい風なので、最初は邪魔にならず、むしろ心地いいと思っていたのだが、一時も止むことなくひたすら吹いている風は、ボディーブローのように、ジワジワ効いてくる。道は平坦なのだが、常に上り坂を上っているような感覚になるのだ。延々続く上り坂感覚・・・これ、結構な地獄。

 この道、ご親切なことに、1~2km間隔で、ヌアクショットまでの距離表示が置かれてまして。なので、いやでも、あと何キロ走んなきゃいけないかが、目に入ってくる。で、この数値が、イライラするほど、減らない。向かい風が自転車のスピードを殺すので、全然距離が進まないのだ。スゲェがんばってこいだつもりなのに、2kmしか進んでないとか、ホントありえない。道脇に示されている、この、ヌアクショットまでの距離表示を蹴り倒したくなる衝動に何度駆られたことか。まぁ、蹴り倒そうとしたところで、距離碑はコンクリで出来ているので、足を痛めるだけで終わるのだが・・・

 とにかく、距離表示を見ながらがんばるしかない。まだ残り50kmか・・・まだ残り46kmか・・・まだ残り40kmか・・・まだ残り34kmか・・・時間だけが刻々と過ぎていくのに、距離が伸びない。途中1時間くらいは休憩しても余裕でヌアクショットに到着できるな、なんて、朝の時点では計算していたのだが、だんだん怪しくなってきた。休んでいると、到着できないような状況においこまれてくる。

 一応、常に吹いている風が、それなりに涼しい風だというのが、まだ助けになっていた。風が涼しいからなんとかがんばれる。休もうと思っていた昼間の一番暑い時間帯も、涼しい風に助けられ(?)走り続けることができた。これが、熱風だったら、確実にギブアップしていただろう。

 それにしても・・・シンドイ。

 残り30kmってところで、時刻は16時になってしまった。普段だったら30kmなら3時間もかからずに進めるので、日暮れである19時半には間に合うところなのだが・・・今日は1時間に10kmも進めない。疲れてるし、風も強くなってきてしまった午後は時速7kmくらいしかだせなくなっている。単純計算して、日暮れまでには、25kmくらいしか進めないってことになり、街に入る前に、日が落ちてしまう。

 まぁ、向かっているのは首都だから夜になったら街灯がついて、それなりに走れるだろうとか、でも、首都だからこそ、夜走るのは危険じゃね?とか、首都に近づくと野宿しづらくなるだろうから、いっそのこと、この辺でテントを張っちゃうかとか、でも水がなくなってきているから、水を補給できる場所でないとダメだとか、いろんな想いが頭をよぎる。

 まぁ、頭でいろいろ考えるんですけど、結局決断するのはカラダ。ヌアクショットまであと10kmってところで、肉体的に限界がきちゃって。もう、太ももはパンパンだし、マタズレがひどいことになって内股のところがヒリヒリと悲鳴を上げている。なにより、パンだけで過ごしてしまったことによる空腹が、この先を走る気合を完全に削いでくれた。

 首都ヌアクショットの周辺町なのだろう、オイラの肉体がギブアップ信号をだしてきた残り10km地点には、ガソリンスタンドやレストランっぽい建物が立ち並んでいた。とりあえず、飯、と、町の入り口にレストランがあったので、入ってみる。そして、ひょっとしてここは宿併設で、泊まらせてくれちゃったりしないかな、と思って、聞いてみたのだが、ここは食事だけで泊まりはないとのこと。「テントを持っているんだけどダメ?」とモノは試しで聞いてみたら、「だったら、そこに張りなさい。この店は安全だから大丈夫。もちろんタダでいいよ。その代わり、うちの店でタンと飯を頼んでね」と店前を指差してくれるじゃないですか。

 おお、おじちゃんありがと~、モーリタニアの人はなんだかとっても親切です。

 ということで、本日、レストランの屋外テーブルでお客さんが食事をする横に蚊帳テントを設置。飯を食った後、疲れていたので、他のお客さんの視線など気にしてられず、そのままテントにもぐりこみ、倒れこむようにして、就寝。

 ああ、今日ほどキツイ一日だったのはいつ以来だろ・・・