Enter to Morocco
これが噂のタジン・・・ついにアフリカ縦断最終国モロッコに突入

2012.6.14 / Mauritania→Morocco(Nouadhibou~西サハラ:Guerguarat) 本日 自転車61km走行 : Total 38290km走行
天気:晴
朝飯→チーズパン 昼飯→タジン 夕飯→タジン / 宿→Hotel de Frontiere(100ディルハム)

(English)
 Today I entered to Morocco.



 昨日水道で汲んでおいた10Lの水を詰め込む。このヘビー級装備にも慣れてきた。というか、こんだけの重さのモノを積むことで、積荷具合に絶妙なバランスが出来ちゃったんで、逆に、今度は、荷物を軽くする際に、バランスが崩れることで妙なことが起きやしないかが心配。ま、でも、そんなことを思っているのは荷物を背負わない気軽なオイラだけであって、実際に荷物を運ぶ相棒のファニーバニーは、一日も早く、この重装備から逃れたいって思っているに違いない。

 さて、道は北上、風は相変わらず北風。ええ、逆風です。今日も逆風です。ホント、写真で風の威力をお伝えできないのが、もどかしくて仕方がない。写真で見ると、ただ砂地が広がっているだけに見えるもんなぁ。その中に一直線に通る舗装道を走っていけばいいだけのように見えるもんなぁ。ここには常に正面から風がビュービュー吹いていることなんてこれっぽっちも写らない。メッチャこいでいるのに時速9kmしか出せないこのもどかしさが、写真にはまったく写らない。

 ここに、これだけの風が吹いていること、しかも、常にっていうことを伝えることができれば・・・オイラのように、知らないがゆえに、無謀にも北上ルートを挑んでしまう人が減るだろうに。オイラとて、ここにこれだけのメンドクサイ風が吹いているって知ってたら、きっと南下ルートをとっていただろうに・・・いや、一応知ってはいたのですよ、この辺、ずっと北風が吹いているって。そして「北上すると、ずっと風に悩まされることになりますよ~」っていうアドバイスももらっていたし。でもね、まぁ、なんとかなるんだろうって思っていたんです。まぁ風だし。大変なようだったら吹いていない時間帯に走ればいいだけじゃんって思って・・・舐めてました、ここの風を。こんなにも威力のある風が、ずっと吹き続いているとは・・・

 はぁ~、今日も、憂鬱です。

 一応ね、走り始めはテンションあがったのんですよ。500kmワープと連泊を絡めて、久々の走りだったし。そうそうめったに見るものではない<砂しかない風景>にワクワクさせられたんです。が、砂漠の風景って・・・飽きる。いや、追い風ビュンビュンで、気分よければ、テンション高くこの砂漠の風景も楽しみながら走ることができるんだろうけど、向かい風ビュンビュンだと、テンションが下がっちゃって下がっちゃって。もう、砂漠の風景なんて、どうでもよくなっちゃうんです、ハイ。

 と、そんな感じで、なるべく何も考えないようにして、ひたすら風と格闘しながら、前に進む作業だけをこなしていたら・・・「ガツン!」という音とともに、自転車が揺れた。そして、すぐスレスレ脇を大型バスが走り抜けていく。「ガツン」という嫌な音は、大型バスがファニーバニーのリアバックに当たった時の衝撃音。接触事故に巻き込まれたのだ。

 これまで、長い間激しく車が行き来する道を走り回ってきたのだが、不思議と車との接触事故はまったくなかった。路肩の端っこを走るよう心がけていたし、バックミラーはつけていないが、音で後ろから近づいてくる車の様子が分かるようになっていたし。さらに、西アフリカは、車の通りが多くないし、近づいてくる車もオイラを大きく避けて走ってくれる車が多かったので・・・完全に油断していた。向かい風と戦うのに精一杯になってしまい、注意レーダーの感度が鈍っていたのかもしれなかった。

 幸い、ひっくりコケさせられるほど強い当たりでもなく、自転車が一瞬ヨロヨロしただけだった。なんでこんな対向車も来ない道路で、路肩スレスレを走っていく自転車にぶつかっていくネン!ワザとか?ムカッ!!!と腹立て、当て去ったバスを見ると、スピードを緩めて停まろうとしている。おお、おお、なんだ、当て逃げするワケじゃないんだな。ん、ひょっとしてこっちに因縁吹っかけてくるつもりなのかい?賠償請求してくんのかい?悪いのはそっちだからな、こっちは一歩も引かんぞ・・・と思って、停まったバスの運転席の隣にチャリをつけ、運転手を睨もうとしたら、手を差し伸べられた。「いやぁ、ゴメンゴメン。当たっちゃったね。大丈夫だった?」と、まず、詫びの言葉。気勢をそがれた・・・うむむ、どうやら、ワザとではないらしい。ひたすら丁寧に謝ってくれる運転手さんと、好奇心と面倒なことが起こったぜ早くバスを出せという気持ちが入り混じったバスの乗客の視線に負け、本当は、カバンに入っているハードディスクが壊れたんじゃないかとか、カメラの防水ハウジングキットのプラスチックが割れたんじゃないかとか、当てられたカバンの中の状態がめっちゃ気になったのだが「いえいえ、こっちももっと気をつけるべきでした。大丈夫ですから、ノープロブレム」と、眉にシワを寄せながら、握手し返すオイラなのであった。

 幸い、この接触事故で故障したモノはなし。結構デカイ音がしたんだけどな・・・とにかく、何事もなくてよかった。

 さて、その後、深層心理的にダメージを食らったのか、後ろから車がくる度に、若干ビビリながら、走っていたら・・・前方から、汽笛が聞こえてきた。おお、貨物列車だ!!!

 そう、昨日、一応、世界一長い貨物列車を見たんですが、ちょっと距離が離れて見ちゃったんでまだ未練が残っていたんですよ。で、今日、走り始めたら、道の隣に線路が走っているじゃないですか。これは、走っていたら隣を列車が通り過ぎるタイミングがあるかも、って密かに期待しながら走っていたんです。

 で、期待通りにやってきました貨物列車。慌てて自転車ごと道路わきの砂地帯に突入して、カメラを取り出す。この長~い貨物列車、今日は、写真で、と一瞬思ったのだが、やはりあまりにも長すぎて、写真では、この長さを捉えきれない。今日も、録画ボタンを押し、ビデオで撮影開始。列車が目の前を通り過ぎるのを、ひたすらカメラを構えて撮影。そんなオイラの様子に気づいた列車の貨物の上に乗っていた人が手を振ってくれたので、あいた手で振り返す。

 今日の世界一長い貨物列車撮影映像の尺は、4分6秒だった。記録更新、昨日のより長い。今日の列車が世界一。そして、昨日より近い距離で列車が見れたせいか、昨日より、ちょっと感激した。

 しかし・・・モウモウと砂煙をはいていく列車をずっと撮影していたためか・・・砂が入ってしまったのだろうか、カメラのレンズが開閉するたびに異音を発するようになってしまった。ふおお、なんか嫌な気分。砂地帯はカメラに厳しいって分かっていたのに。だから、ハウジングキッドに入れて使うか、予備のカメラに交換して使うかすればよかったのに・・・って、分かっていたのにめんどくさがってやらなかったオイラが悪かった。これくらいの砂なら大丈夫じぇね?って、カメラの性能を過信したオイラが間違いだった。やはり砂漠地帯の砂はカメラの強敵。こんな場所で、カメラをむき出しで、長時間撮影なんてするもんじゃありませぬ。あああ・・・カメラの電源を入れるたびにヘンな音がする。後悔先に立たず、覆水盆に返らず・・・今更、ハウジングキットにカメラを入れても、もう遅い。

 そんなこんなで、カメラの調子が悪くなって、さらに手持ちのパンしか食べれないことによる空腹から、ちょっとテンション下がり気味で、15時ちょい前に、ようやく国境に到着。いよいよ、モーリタニアを出国し、アフリカ縦断旅最後のアフリカ国となるモロッコに入国だ。

 さて、ここは、何もない砂だけの空間にいくつかの建物がポツリポツリと建っているだけの国境の町。レストランや宿があるだけで、生活できるような場所ではない。ただ、人が通り過ぎるだけの町。そんな町に入ると、人がすぐに寄ってきた。国境恒例の両替商のおじさんだ。手持ちのウギアを、モロッコの通貨ディルハムに交換してもらう。

 その後、ポリスステーションに行って、パスポートに出国スタンプを押してもらう。特に問題なく、無事通過。で、次は国境越えてモロッコへ・・・と思ったら、ポリスステーションの先に検問所があって、止められた。パスポートを出せと。さっき、ポリスステーションでパスポート見てもらったもらったばかりなんですけど・・・100mも行かないうちに再チェックとは・・・なんだこの二度手間な仕事・・・と思ってたら、パスポートチェック中、暇そうな他の係官が寄ってきて「お金、お金」と言ってきた。ああ、なるほど、チェックいう名の賄賂関門だったワケですか、ここは。いや、払ういわれのない金を払うつもりはない。言葉が分からないフリをして、ひたすらごまかす。すると「じゃぁ、タバコは?タバコくれよ」と言ってきたので、それもムシ。

 パスポートチェックが終わって、パスポートを返してもらったところで、更なる賄賂攻撃を食らわないようにと、サクッと出発しようとしたら、チェックしてくれた係員が、「あ、まだダメ。犬を連れてくるからちょっと待ってて」と、オイラの出発を止めてきた。つれてくる犬とは、どうやら、麻薬犬のようだ。で、待たされている間にまた「タバコくれよ」攻撃を食らう。ああ、めんどくさい。

 さて、当然といえば当然だが、麻薬犬はオイラの自転車やカバンにはまったく興味を示さず、無事検問通過。今度こそ、モロッコへ・・・と言いたいところなのだが、これまた、関門が待ち構えていた。

 モーリタニア、ここまで、基本的には道はずっと舗装道路が続いていた。そして、これから先のモロッコも、イミグレからはずっと舗装道路が続いているらしい。が、このモーリタニアの最終検問地点から、モロッコのイミグレまでの間が・・・未舗装だった。なんでも、モーリタニアとモロッコは仲が悪いらしい。なので、両国をつなぐ道は、国としてはちゃんとつなぐ気はないらしく、ほったらかし。通る人は勝手に通ってくださいという状態。一応、ココを通る車によって踏み固められ、道らしきものが出来ているので、それにそって行けばいいのだが・・・ゴロゴロした石がむき出しになっていたりと、ガタゴト道になっていて、とても自転車に乗って走っていける道じゃない。しょうがないので、降りて押していく。未舗装とはいえ、基本的に踏み固められて砂道じゃないのは助かった。3~4kmあるこの道、ところどころにある砂道トラップで苦労させられて・・・全面砂道だったら泣いていたよ。ちなみに、この道、通る車が道を作っていくので、通る車の数だけ道が出来上がっちゃってる。こっちのほうが走りやすいだろうと思ってわきに反れた車が新たな道を作っていくので、一種の迷路状態を作り上げちゃっているのだ。そんな迷路道の国境、以前起こったモロッコとモーリタニアの戦争の負のお土産である<地雷>が、まだ撤去されきれておらず残っているらしい。迷路道に迷い込み、誤って地雷を踏んだら・・・おお、怖い怖い。

 モロッコとモーリタニアが仲が悪い原因・・・それは、これから入る西サハラという国(?)が関係してくる。え?これから入るのはモロッコじゃないの?アフリカ縦断最後の国モロッコへって言ってるじゃん、って皆さんお思いと思いますが、実は、これから入るのは、地図上では西サハラと言われる国なのです。が、この西サハラ、現在、モロッコが実効支配していまして。なので、モロッコ的には、ここから先は俺の国ってことで、ここにあったであろう西サハラのイミグレをとっぱらい、モロッコのイミグレを置いちゃったんです。なので、この国境を越えてパスポートに押されるのは、モロッコのスタンプ。なので、一応、「これからモロッコに」って言っているワケなのですが・・・一応、西サハラなる国はまだ存在することになってまして。そう、ココは、国際社会のビミョウな力関係が拮抗する場所。<国>という単位とは、いかにして成りうるものなのか、ということを考えさせられる、複雑な場所。

 西サハラ、別名サハラ・アラブ共和国。ここは、アフリカ連合(AU)には国とし加盟しているらしい。が、国連には加盟していないということで、日本では、<国>として知られざる場所になっている。もともと、スペイン領サハラとして、スペインが収めていたこの地域、スペイン撤退後、この地を巡って、モロッコとモーリタニアが領土権を主張。と、同時に、国内では独立を目指すポリサリオ戦線なるものが立ち上がり、激しい戦争が巻き起こる。ポリサリオ戦線は、モーリタニア軍を撃破して、モーリタニアに、この地を独立国と認めさせることは成功。が、その後、入り込んできたモロッコ軍を撃退することが出来ず、紛争は長引き、国連が介入することで、停戦協定が結ばれることになったそうです。が、国力で勝るモロッコがその後、この地にジワジワと入り込み、停戦の1988年から現在に至るまで、実効支配しているというのが現状のようです。

 そんな、モロッコ(西サハラ)へ。ようやく舗装道路になった道を進むと、こちら側にもまず検問所があり、ここで、パスポートチェック。パスポートを出せっていうから、てっきり、スタンプを押してくれるのかと思いきや、ただ、チェックしただけ。入国のポリスステーションはこの先にあるから、と、返してもらったパスポートとともに言われる。うむむ、この国境は両国とも、結構ガッチリしているねん。両国のピリピリ関係がヒシヒシと感じられる。

 さて、イミグレの前にもう一箇所荷物検査場所なるものがあったのだが、ここは、自転車荷物の検査がメンドクサイのか、「コレには何が入っているの?」「服です」「あ、そう、じゃいいや」という、投げやりなチェックで終了。その後、イミグレでモロッコのスタンプをもらい、入国。うっし、ついにきたぜぇ、アフリカ縦断最後の国。いや、まだエジプトとか行くと思うし、西アフリカに再び舞い戻ってくる可能性があるんですが、とりあえず、ケープタウンから始まった、アフリカ縦断旅は、モロッコで最終国になる予定なんで。モロッコからスペインに抜けるんです。モロッコのタンジェ港に行ってフェリーに乗り込んだら、アフリカ縦断が終わる・・・ああ、永遠に終わらないような気がしていたアフリカ旅も、ついに終わりが見えてきた・・・

 と、ちょっぴり感慨を抱きながら、モロッコ(西サハラ)の地を自転車で走り始める・・・と、いや、今日は、この国境の町で泊まるんです。この先、80kmくらい進まないと次の町がないから。時刻は16時と、ちょっと早めなのですが、本日はもう、宿に入ることに。

 イミグレから門を出てすぐ脇にあるレストラン兼ホテルの宿に泊まることに。ベッドがあってバス&トイレつきの部屋もあったのだが、絨毯だけのサロンみたいな部屋だと100ディルハムと安かったので、その部屋で泊まることに。う~ん、でもこの部屋で100ディルハムか・・・モロッコに入ったらもうちょっと宿泊費が安くなるかと思っていたのだが、意外と高いままなのかな。

 さて、とりあえず、自転車と荷物を入れて、すぐ、飯。モーリタニア側国境にもレストランはあったし、あの時点で猛烈に腹が減っていたんですが・・・我慢してここまで来たんですよ。なぜなら・・・モロッコに入ると<タジン>というモロッコ名物の料理が食べられると聞いていたから。これがウマイらしいのですよ。でも、これ、セネガルとモーリタニアでは全然見かけなかったんですよねぇ・・・隣国なのに。セネガルとモーリタニアは、結構似たような料理だったんだけど、モロッコに入るとガラリと変わるらしいのです。ま、それも、ピリピリした関係が伺える証拠なんですけどな。陸は続いているのに文化がガラリと変わるって・・・どんだけお互いにお互いの文化を取り入れようって気がないかってことの証拠ですよ。ま、旅人的には、国境を越えても全然変わり映えのしなかった東アフリカより、国境を越えるごとに、ガラリと変わっていくセネガルからの北上旅が、なかなかスペクタクルで面白い。

 さてさて、もちろん、噂のタジンを注文。さすが定番料理。常にスタンバイ状態になっているらしく、頼んだらすぐ出てきた。三角屋根の蓋がついた土鍋による蒸料理なタジン。中身はいろいろあるらしいのですが、今回オイラが頼んだのは、チキン・タジン。マメやオリーブと一緒に蒸されたチキンの上に、フライドポテトがふっかけられていた。で、早速、パクリ・・・ん~、ウマイ!スパイスは、クミンが効いていてほんのりカレーテイスト。思ったより味が濃いんで、食後は結構な満腹感。もうちょっと期待していたんだけど・・・まぁ、合格点なお味で。モロッコ料理、タジンだけでなく、おいしい料理がたくさんあるらしいからねぇ、ふふふ、モロッコは食で楽しむことにするかな。

 それにしても、アフリカ、もっと食べ物で困ると思ったんだけど、全然食べ物には苦労しなかったなぁ。砂漠地帯は途中に食う場所がなくて、困ったけど、それでも、おいしいフランスパンを買い込んでいってたから、不満はなかったし。他では食べ物がない、なんてことはなかったし。そして、マズイ飯なんて、なかったし。アフリカ旅むしろ、ウマイ飯に巡りあってばかりだったような気がする。アフリカは飯が・・・なんていうのは、ただのイメージ。ここには、豊富とはいえないが、ちゃんと食材があるし、ちゃんと料理があるのデス。