Broaken Camera
壊れるって分かっていたのに

2012.6.15 / Morocco(西サハラ:Guerguarat~C.Bir Gandouz) 本日 自転車86km走行 : Total 38376km走行
天気:晴 ネット:1
朝飯→オムレツ 昼飯→チーズパン 夕飯→タジン / 宿→Hotel Barbas(100ディルハム)

(English)
 I run on Morocco (West Sahara) road.



 今日も相変わらず逆風がキビシイのだが、まぁ、次の町まで80kmだし、ってことでがんばって走っていくことにした。その先は、150kmくらい補給所としてのガソリンスタンドもないような砂漠道が続くさらに過酷な地帯になるらしいので、これまた、一気にワープをしてしまいたい気持ちもあるのだが、とりあえず80kmは走ってみることに。

 さて、出発しようと、装備を完了した自転車を宿から出す。この際、朝の客でごった返す食堂を通っていかねばならないのだが・・・まぁ、異様な量の荷物を積んだチャリは目立つワケですよ。人々の視線を感じながら、食堂ゾーンを抜け、いざ走りだそうとしたら、「ちょっと、そこの自転車のあんちゃん」と、一人のおじさんに声かけられた。こういう時って大体ひやかし。興味本位で突っ込まれる、そんなのわざわざ聞かなくても分かるでしょ、という質問に答えなきゃいけないのが、ちょっとシンドイ。まぁ、聞くほうとしては、お話のきっかけとして質問をぶつけてくるのだから、質問が当たり前だろうがなんだろうが気にしてないのは分かるんだけど。で、今回も、ひやかしの質問をされるのかと思ったら「水、漏れてるよ」ときた。

 「おおっ」

 確かにリアに積んだバックから水が滴り落ちている。慌てて荷造りを解き、バックの中をチェック。10Lのペットボトルの蓋が見事に半開きになっていた。ふ~、危ない危ない。走り始めたら後ろのバックなんてチェックしないもんな。このまま気づかずに走ってたら、途中で水を補給しようとカバンを開けて愕然としていたに違いない。入れたはずの水がダダ漏れして、砂漠の真ん中で水がきれました、なんてシャレにならん。死んでたかもしんないな。ある意味、このおじさんは、命の恩人だ。冷やかしの質問かい、なんて思っちゃってゴメンナサイ。

 さて、走り始めたら、道脇に距離表示碑が見えた。<ラヨーンまで825km>と書かれている。ラヨーンとは西サハラのほぼ北端に位置する西サハラの首都とされている街。西サハラを縦断するだけで800kmちょっと走らなければならないのだ。この逆風の中を。んで、ようやくモロッコ本土にはいるけど、そこから先もしばらく砂漠で北風ビュービューが続くはず・・・う~ん、クラクラしてきた・・・

 とにかく、今日はひた走るしかない。向かい風を受けながら、時速9kmくらいで進む。80kmを時速9kmだから・・・9時間くらいで到着できるか、とそんなことばかり考えながら、とにかくこぐ。

 ひたすらまっすぐ続く直線道路、車はたまに通るだけ。この辺を通る車は、モーリタニアへ行くかモーリタニアから来るかくらいしかないからね。そんなに仲がよくない両国間を行き来する車なんて、そうそうあるもんじゃない。たまに通る車が、挨拶で窓から手を出して振ってくれるのが嬉しい。

 と、そんな感じで、また一台、正面から車がやってきた。窓から手を出して振ってくれている。この車、他の車と違って、結構離れたところから、手を振ってくれていた。それに気づいたオイラが、手を振り返したら、あっちはすぐに手をひっこめてしまった。で、近づいてきた車、再び出された手には、水の入ったペットボトルが握られていた。「ほらよ、プレゼント」と言って、すれ違いざまに、ペットボトルが投げられた。直線道路であるため、おそらく130kmくらいは出ていると思われる車から投げ出されるペットボトルは、ちょっとした武器。こんなの直接受け取められるワケない。道に転がったペットボトルを受け取るオイラ。お礼を言おうにも、スピードを緩めず走り去った車は、もう、点のようになっていた。

 いや、ありがたいですけど・・・もうちょっと、ほら、止まって手渡しとかそういうのがあるんじゃないの?そしたら、こっちも感謝の意を伝えられるのにぃ・・・とは思ったのだが、まぁ、そういうのはいらないんだろうな。とにかく、水は、ありがたく頂戴しました、ハイ。

 そんなことがありつつも、延々続く砂漠道。まぁ、相も変わらず目に入るのは何もない荒野と砂の山だけ。しかし、6月に入ったらちょっと天気が崩れて太陽が隠れてくれるかと思っていたのに、そんなことはなかった。太陽がガンガン照らしてくる。北風が海からの風で、寒流からの冷たい空気を運んでくれるため、体感温度が、うだるような暑さにならないのが、一応助けにはなっているものの、照りつける太陽光線は、容赦なくオイラから水分を奪っていく。

 モーリタニアでは水道水が飲めたので、10Lのペットボトルに水をいっぱい入れて走り始めていたのだが、今朝までいたモロッコの国境宿では、水道水はしょっぱくて飲めなかった。なので、ミネラルウォーターを買わねばならないことになったので、水を4.5Lしか追加しなかった。もともと1.5Lあまっていたし、まぁ、80kmくらいなら1日で着くだろうし、一日なら6Lあれば大丈夫だろうと思っていたのだ。が、全然足りなかった。先ほど1.5Lの水を放り投げていただいたのに、足りなくなりそうな気配。これはヤバイかも、がぶ飲みする水の量を減らさなきゃ、と思うものの、一回に飲む水の量が減るだけであって、すぐ喉が乾くから、水飲み休憩が増える。結局、距離当たりで摂取している水の量は変わらない。町はまだ遠いのに、水はどんどん減っていく。

 と、ヘロヘロ状態になりつつあるオイラの横を時速160kmくらいの猛スピードで後ろから車が駆け抜けていった。いや、いくら一本道で車どおりが少ないからって、スピード出しすぎ。後ろからの車は、昨日の接触事故の影響でちょっと過敏になっているオイラは、あまりのスピードによる風圧で自転車をヨロヨロさせながら、「バカヤロー、もっとスピード落としやがれ」と、心の中で悪態を。と、その瞬間、その車は、オイラの遙か前方で、停止。そして、ウィンカーランプを点滅させながら、バックしてくるじゃないですか。ええ~、なになに、オイラの心の叫びが聞こえちゃったの?すまん、心の中でちょっと言い過ぎたから許して、と、これまた、心の中で言い訳をしながら、バックしながら戻ってくる車を目で追っていた。

 で、その車がオイラの横についたとき、後部座席から、おにいちゃんがにこやかな顔で「ハイ、これ。がんばって」と、またまた1.5Lのペットボトルを差し入れしてくれるじゃないですか。ありがと~ごぜ~ます。ふ~、助かった。ただ、これでも足りなさそうなんだよなぁ、と、ちょっと考えちゃったオイラの顔色を読んだのか「あ、ちょっと待って。念のためもう一本あげるよ」よ、さらに1.5Lのペットボトルをくれちゃいまして。なになに、おにいさん、読心術できんの?と、ちょっとビックリしながら、ペットボトルを二本も受け取る。

 ホント、ありがとうございます。マジ、助かりました、と感謝を伝え、再び猛スピードで走り去る車に手を振る。ああ~、なんかモロッコ(西サハラ)の人たちもいい人たちばかりですぅ~。

 人々はいい人たちばかりなのだが、対峙する自然は厳しい局面ばかり。午後になって、さらに強さを増した向かい風、疲労と、お腹が満たされないっていうのもあいまって、もう時速7kmくらいでしか進めない。普通に押して歩いたって5.5kmくらいは出るのだから、もはや、押していくのと大して変わらない。今日の走りも辛かった。モーリタニアでヌアクショットまであと10kmって地点でダウンしたあの日以上にキツイ。たかが80kmがえらく遠い。いや、山越えなら分かる。山越えで80km届かなかったというのなら分かる。が、平坦な道なのに。どこまでもただ一直線な道なのに・・・朝早くからこぎ始めたというのに、日が暮れそうになるのにまだ80km到達しないなんて。肉体的疲労感より、精神的な疲労感が、オイラの心をポキポキと折っていく。ホント大変だった。40kmを過ぎた後は、5kmごとに休憩を取り、60kmを過ぎた後は、2.5kmごとに休憩をとっていた。今日の後半は、たかが、2.5kmが永遠に辿り着かないような距離に思えるような状態になっていたのだ。

 途中、横風になった地点があった。正面からでない分楽に走れるかも、と思ったのだが、大して違いはない。いや、元気なときならまだ違いはあったのかもしれないのだが、疲労困憊した夕刻の横風は、全然助け舟にはならなかった。

 そして、ついに距離表示碑が<あと9km>を指す地点にやってきた。いつもならあと9kmなんて、ラストスパート気分なのだが、今日は、永遠に辿り着かない2.5kmがあと4回という気分。うんざりです。こんなにも遠い9kmを感じたことなんて、あったけかな・・・

 もう、精根尽き果てる中、ようやく道の向こうに建物が見えてきたときには、そりゃもう、嬉しかったさ。たぶん、見えはじめてから5kmくらいあったんだろうけど、一気に走っちゃったさ。火事場のバカ力ってやつですな、これが。

 で、辿り着いた町、っていうか村。南へ行けば国境しかなく、北へ行っても200kmくらいいかないとそれなりの町に辿り着かないという砂漠のど真ん中にあるこの場所には、似つかわしくない立派なホテルが建っていた。いや、もう恐縮しちゃうくらいいい雰囲気の立派そうなホテル。さぞかし高いと思いきや、宿代はなんと、国境でのカーペット部屋と同じ値段。え~、なんだその値段設定。っていうか、国境の宿が高すぎだったのか。ぼったくられたか・・・

 ま、とにかく、今日は快適宿で、ユックリと疲れを癒すことに。ネットもフリーでWiFiが飛んでるし、言うことなし。あ~、なんか、ヨーロッパに近づいてきてるって実感しましたよ。アフリカ旅が終わるんだなって、実感しちゃいましたよ。う~ん、西アフリカに入れば入るほど何が変わってくるかって、宿のクオリティなんですよ、ウン。

 さて、そんな快適宿なのですが、気分よくってワケにもいかなくて。本日カメラが絶不調。音だけでなく、挙動も不振になってきてまして。電源オフにしたのに「レンズエラーです」とか言って、ズームレンズが伸びっぱなしで収まんなくなっちゃったり。昨日ヤバイって思った時点で、使用を控えればよかったのに。砂漠道を走りながら、今日も、いつもどおり使っちゃから・・・あ~、これは、かなりのショックだ。何気に落ち込んでます。いや、単にカメラが壊れたから落ち込んでるっていうことじゃなく、この地帯で使うと壊れるかもよって、思っていたにも関わらず、何の対処もせず使い続けて結局壊してしまった、という自分のアホさ加減に、落ち込んでます、ハイ。