Hardest day in Morocco running
山道は想定していたけど・・・この熱風が誤算だった

2012.7.19 / Morocco(Agadir~山の中) 本日 自転車88km走行 : Total 39161km走行
天気:晴 自転車折りたたみ:1
朝飯→パン 昼飯→チキンの煮込み 夕飯→ビスケット / 宿→野宿

(English)
 I left from Agadir. Today's running was touch for cycling. Because it was too much hot.



 さて、ようやく重い腰をあげ、本日アガディールを出発。10日くらい滞在しちゃっていたんだな。作業していたから、あっという間だったのだが、改めて振り返ってみると・・・長い。

 10日ぶりの自転車。10日自転車に乗らないと、もうチャリダーのカラダじゃなくなっちゃうんですよ。特にオイラの場合、長期滞在中は、作業ばかりになるので、カラダを動かさなくなるし。あ、いや、アガディールではショッピングセンターに行くのに自転車を使っていたから、正確に言えば10日ぶりではないのだが・・・まぁ、カラダがすっかりなまちゃっているという事実には変わりはない。そんなカラダに鞭打つべく、街外れから続くちょっとした上り坂を、全力で上ってみた。新品の靴だったし、新品のグローブだったので、気分がよく、テンションがちょっと上がっていたんだな。で、上りきったところで、振り返ってみたら、素敵な港町な風景が広がっているじゃないですか。これはちょっと写真に撮っておこう、と、道路わきに自転車を止め、ガードレールから身を乗り出して、眼下に広がるアガディールの街を写真に撮った時・・・

 目の前がクラッとした。

 あ、ヤバイ。たまに起こる貧血だ、と分かり、すぐにしゃがもうとしたのだが・・・時すでに遅く、次の瞬間は、「ガツン!」という衝撃音とともに、左の頬に強烈な痛みを感じた瞬間だった。

 どうやら、立ちくらみで意識が遠のき、倒れてしまったらしい。で、倒れた先にガードレールがあったため、しこたま左の頬を、そのガードレールに打ち付けてしまったようなのだ。一瞬何が起こったのかわからなかったのだが、そんな瞬間でも、カメラからは手を離さなかったのには、我ながら褒めてあげたかった。顔をガードレールに打ち付けておきながらも、カメラは手にしっかりと握りしめており、堅守していたのだ。顔を打ち付けた衝撃でカメラを手放してしまい、カメラを道路に落としていたら、また故障ってことになっていたに違いない。買ったばかりなのに、すぐ故障って・・・泣くに泣けないでしょ。ふ~、とにかくカメラが無事でよかった。

 それにしても、立ちくらみ・・・ちょっとした貧血だったのかな。このところ肉を食ってないしなぁ。ま、一番の原因は、運動不足だったにもかかわらず、いきなり全力で坂道をこぎ上ってしまったことなんだけどね。もう、若くないんだから、そんな無茶したら、カラダのほうがヘンな反応するのは当然。

 で、ガードレールに打ち付けた左頬が、いつまでたっても痛いので、鏡代わりに、デジカメで左の頬を撮って見たら、切れてちょっと血がにじんでいた。ああ、血が出るほどの衝撃だったのね、ふぃ~、痛いはずだよ。まぁ、なんにしても、これくらいの被害ですんでよかった。自転車に乗っている時に立ちくらみが起こって、自転車ごと倒れて車に轢かれちゃったなんてことも、最悪考えられるケースだからな。うんうん、調子に乗って、無理はしないよう、気をつけなきゃ。

 さて、ちょっと走ったら、小さな町に出た。ここで朝食休憩。海岸線がずっと続くこのあたり、ビーチで泳ぐ人や、サーフィンをする人たちが集うらしく、そういう人たちが宿泊する宿のある町が、海岸沿いの点々と存在するのだ。

 朝飯後、海岸沿いのちょっとしたアップダウン道を上り下りしながら、進む。Tamriという町までは、割と順調に走れた。ちょうどいい時間だったので、ここで、昼飯を食べ、後半戦に備える。結構いいペースで来ているから、後半もこのペースで進めれば、今日は、思っていた以上に進めるかも・・・と思っていたのだが・・・

 このTamriという町を出てからが大変だった。アップダウンが今までとは比べ物にならないくらいキツイものになった。キビシイ峠が次々に現れる。いや、この辺り、峠が多いっていうのは、ミシュラン地図の道のうねり具合から想像できたし、他のチャリダーのブログとか見ると、峠越えが大変って書いてあったから、覚悟はしていたんです。それに、まぁ、高くても400mちょいくらいの峠だから、まぁ、泣くほど辛くもないだろうって思っていたし。

 ええ、想定内だったんですよ、これくらいの山道なら。

 が、ここの走りは、泣くほど辛かった。

 この道がこんなに辛いとは、思ってもみなかった。大変だとは思っていたが、これほどとは・・・そう、誤算があったのだ。その誤算とは・・・風が熱かったんですよ。まさか、この海沿いの道に熱風が吹いているとは。アガディールから続く海沿い道だから、涼しい風が吹いているだろうって思っていたんです。今までがそうだったから。海沿いは、海を流れる寒流からの冷たい風が吹く、これ、このあたりの常識だと思っていたんです。で、その風、Tamriを過ぎたあたりから、北風が吹き始めたんですが・・・この風がなぜか熱風だった。海が見えているのに、吹いてくるのは熱風。この熱風が体力を根こそぎ奪い取っていく。

 サハラ越え、文句を言いながらも、なんとか耐えてこれたのは、涼しい海風があったからなんですよ。逆風で強敵ではあったんだけど、あの涼しさにはずいぶん助けられた。逆に言うと、風がなかったら、砂漠越えは出来なかったと思う。あの涼しい風がなかったら、灼熱の太陽がカラダを熱しあげるだけの、拷問の大地ですもん。確実に、ギブアップしてましたな。

 今日の後半戦は、そんな<拷問の大地状態>での走りになってしまったのですよ。カラダから水分がどんどん蒸発していき、喉がとにかく乾くので、水をがぶ飲み。5Lの水を積んできたのに、途中の町でまた5Lの水を追加・・・したのに、まだ足らなくなりそうな勢い。とにかく、いくら飲んでも、すぐに喉が乾く。汗で塩分がカラダの外に出ちゃっているっていうのもあるのだろう。いくら飲んでも、カラダの中に水が入っていく感じがしない。ああ、ここでこんな状態になるのなら、アクエリアス粉末、まだ残しておけばよかった。サハラ砂漠を越えたらもう、必要なくなるだろうと思って、サハラ越えの時に全部使っちゃったんだよねぇ・・・

 で、追い討ちをかけるように、昼間に食べたタジンに似た煮物チキンがいけなかったのか、それとも、水の飲みすぎがいけなかったのか・・・久々にお腹が緩くなる症状が・・・

 とにかく、そんな<拷問の大地状態>での、峠越えは、キツすぎた。峠越えだけだったら、なんとかなっただろう。また、熱風が吹いていたとしても平ら道だったら、なんとかなったかもしれない。が、このダブルパンチは、ホント、キツすぎた。もう、バテバテ。

 夕刻、峠をいくつか越えた後、何もない山の中に、ポツンと食堂があるだけのホントに小さな町に到着した。今日はもう、ダウン。ここで、休むことに。当然宿なんてないことは分かっていたのだが、食堂のおじさんに一応、「ここ宿あります?」と聞いてみた。当然のように「ないよ」という答えが返ってくる。そこで、「あ、宿はなくても、テントを持っているんで・・・この辺に張らせてもらえませんか?」と間髪入れずにお願い攻撃。すると、店前の広場になっているところの端を指差し、「あの辺ならいいよ。誰も文句言わないとおもうから」とお許しをもらえた。ということで、今日はここにテント泊。こんな灼熱の地では、Aktoだと蒸し風呂状態になるから、蚊帳テントで・・・と思ったのだが、ここ、妙に多くの人たちが通るし、風が砂を巻き上げて吹き付けてくるので、フキッ晒しの蚊帳テントだといろいろ不都合。ということで、Aktoを使ったのだが・・・やっぱり予想通り、中が蒸し風呂状態に。ああっ・・・

 ということで、テントに入るのは、もっと日が暮れて涼しくなってからにすることにして、それまでの間は、先ほどの食堂の椅子に座って休ませてもらうことに。せっかく食堂に入っているのだが、暑さにバテすぎちゃって、食欲がぜんぜん沸かない。ジュースを飲むので精一杯。食べなきゃ元気がでないぞ、というのは分かっているのだが、カラダが固形物を受け付ける準備をしてくれない。手持ちのビスケットを二つほどポリポリ食べたくらいで、気持ちが悪くなってきた。

 ふ~、今日の道は、サハラ砂漠越えに挑んでいたどんな日よりも、キツかったぞ。サハラよりモロッコ内部の方がキビシイなんて・・・聞いてないよぉ。これは夏だからか?今の季節がいけないのか?うん、絶対そうだ。夏のモロッコ道を走るのが、失敗だったんだ。夏のモロッコを舐めちゃいかんですな。夏以外の季節であれば、この道も、そんなに大したことないに違いないと思うのだが。

 うむむ、そして・・・エッサウィラ以降、モロッコ内陸部に入っていく予定なんだけど、そこは確実に熱風が吹きつけてくると予想される。きっと今日以上の大変さになんだろうなぁ・・・あ~、今日、一足先に、夏の内陸モロッコの灼熱のツラサを実感しちゃったもんだから、余計憂鬱になってきちゃった・・・

 ・・・必殺バスワープか・・・