I'm sorry Sara...
ゴメンよ、サラ

2012.9.19 / Spain(Zaragoza~Taragona~Cambrils) 本日281km移動(自転車0km走行) : Total 40182km走行
天気:曇時々雨 ネット:1
朝飯→シリアル 昼飯→ボカジージョ弁当 夕飯→ピザ / 宿→カルロス宅

(English)
 We were back to Cambrils from Zaragoza. We went to some good place on the way to Cambrils and... visited to Taragona. Taragona was place where Sara was working. Just in Taragona this week was fiesta <Santa Tecla>. This fiesta was parade with tambor. I like tambor so this fiesta was very fan for me!



 今日、いよいよサラゴサを出発。5日前、カルロスに「サラゴサって町に行くよ」と言われ連れてこられた時は、「サラゴサ?どこですか、そこ?」という状態だったのだが、今ではすっかりお気に入りの町になってしまいまして。こういう自分の意思ではなく、旅の偶然によって誘い込まれた場所って、意外と印象に残るもんなんですよ。期待感が小さいから、ちょっとしたことが楽しく思えたりするからなのかな?

 さて、今朝は早くから家を出ちゃうというカルメンおばちゃんとカルロスおじちゃんとは昨日の晩のうちにお別れをしてまして。猫のアガタに別れを告げて、カルロスの実家を出発。

 車の中では、オイラのお気に入りのラジオ局<RadiOLE>をかけてくれているカルロス。この<RadiOLE>、フラメンコをはじめとする、スペインの民俗音楽を専門にかけるチャンネルなんですよ。いつもオイラ好みのご機嫌なナンバーがかかっている素敵なラジオ局。カルロスはもっとハードロック寄りの音楽が好きみたんなんですけどね。時々変えちゃうカルロス好みのチャンネルも、オイラ好みの音楽だったりするから、カルロスの車の中は、居心地いい。

 さて、帰りの道も、カルロスのサービス精神は止まらない。ただ帰るのはなんだからと、途中にあるモネステリオ・デ・ルエダという場所に寄っていくことに。このモネステリオってところは、かつての修道院だったところらしい。大勢の修道士さんたちがここに住み、共同生活をしながら、ひたすら神に尽くす生活を送っていたとのこと。日本で言えば、お寺での住み込み修行生活ってところか。

 そして、モネステリオの近くの町に寄り、カルメンおばちゃんがお弁当として作ってくれたボガジージョ(スペイン風サンドイッチ)をカルロスと二人でパクつく。

 で、昼食時、カルロスが「サラゴサ、いろいろ連れて行ったけど、どこが一番面白かった?」って聞いてきた。オイラ的には、やっぱり、カランダのパブロおじちゃんの所が一番テンションあがったので、正直に「パブロおじちゃんの家かな」って答えたら・・・「そうかぁ・・・」とちょっと悲しげ。むむ?カルロス的には、自分が案内したところを挙げて欲しかったのかな?カランダは、パブロおじちゃんのキャラクターが全てだったからな・・・と思い、「いや、カルロスが連れて行ってくれた、カスティージョ・デ・ロアレとか、ロス・マジョス・リグロスとかもよかったよ」と慌ててフォロー。いや、ホントに全てが心地よい体験だったのですよ、カルロス。で、カルロスは、さっそくパブロさんに「ヨシが、カランダ体験が一番面白かったんだって」と<What's Up>というアプリで連絡。そうそう、今、スペインでは、皆さん<What's Up>というアプリで頻繁に連絡をとりあっているようなのですよ。メッセンジャーみたいなものなんですかね?意外とネットトレンドは追いかけているつもりなんだけど、初めて聞いたぞ、このアプリ名。

 その後も、面白そうな町を見つけたら寄ってくれたりと、ブラブラしながら、タラゴナの町へ。え?向かっているのは、タラゴナ・・・?カルロスの家のあるカンブリルスじゃないの?とカルロスに聞くと、実は、タラゴナにサラの職場があり、帰って来るのを待っているサラにまず会いにいくのだ、と。

 あ~そうだよなぁ。しばらく離れていたんだもんなぁ・・・

 いや、オイラのために申し訳ない、カルロス、と言うと「いや、ヨシのおかげで僕も助かっているんだ」とカルロス。どうやら、カルロスは田舎(サラゴサ)が大好きで、気心知れている友達もたくさん居るし、ちょくちょく帰りたいんだけど、サラはそれを快くは思っていないらしいのだ。今回は、オイラにサラゴサを案内するという名目があったから、サラも、ま、それならいいわ、と許してくれたとのことなのだ。ふむふむ、そう言ってもらえると、オイラも気が楽になる。せっかくの休みにこんなにもオイラに付き合ってもらっちゃって、ホント申し訳ないなぁって思っていたところだったんで・・・カルロスはカルロスで楽しんでいたのなら、まぁ、よかった。

 さて港町タラゴナに到着し、高級船が停めてある港を歩いていたら、脇に建っている建物の上部の窓が開いた。サラだ。

 「とりあえず上がってきて」

 というサラの職場にお邪魔するオイラたち。お仕事中なんですが、突然の訪問者にも、にこやかに対応してくれる皆さん。一人一人が、一旦仕事を停止して、ちゃんとオイラと挨拶してくれるんだもんなぁ・・・なんかこういうの素敵。

 ちなみに、サラの仕事は、タラゴナの港に入ってくる船にまつわる諸々のことを扱う仕事らしい。やることはホントにいろいろあるようなのだが・・・話を聞いて一番驚いたのは、港に停まっていたいくつかのデッカイ船、何十人も乗せる客船なんかではなく、個人所有のクルーザー船、とのこと。ええ~、あの大きさの船を一人の人のために動かしているの!?どこの金持ちですか、持ち主は・・・と聞いたら、どうやらドバイのおえらいさんらしい。あ~なるほどねぇ、石油でがっぽり儲けたりすると、こんな船を自分のために動かせるようになるのかぁ。

 さて、ちょうどいい頃合だったということもあり、サラは今日の仕事は終え、オイラたちと一緒にタラゴナの町歩きをすることに。ちょうど、今、タラゴナでは<サンタ・テクラ>というお祭り期間とのこと。「いい時期に来たわね」と、サラの同僚のお姉さんが<サンタ・テクラ>のパンフレットを渡してくれた。

 さて、会社を出たところで「カルロスに会えなくて寂しかったのよ~」とオイラに言い始めるサラ。冗談で言っているように見えて、いやいや実は本気の目。「う、ごめんよ、サラ・・・カルロスを独り占めしちゃって」と謝るオイラに、苦笑いのカルロス。・・・って、なんだ、この三角関係。

 タラゴナのセントロの方に歩いていくと、ちょうど人が徐々に集まり始めているところだった。パレードが行われるらしく、いい場所で見ようとする人たちが、早くも場所取りを始めている。オイラたちは、とりあえず、バルでビールを飲みながら、盛り上がり始めている町の雰囲気を楽しむ。

 と、6日前、レウスで会ったアルベルトとマリーナが、ちょうど今タラゴナに居るとのこと。っていうか、彼らの家は実は、タラゴナにあるとのこと。オイラたちが戻ってきたので、ぜひまた会いましょうと、サラが彼らに電話をかけてくれ、広場で待ち合わせ。

 で、やってきたアルベルトとマリーナ。アルベルトは、英語はカタコトなのだが、オイラに対して、懸命にコミュニケーションをとろうとしてくれるいいヤツでして。で、そんな彼、英語とスペイン語を交えて話してくれるのだが・・・彼のスペイン語がビミョウに違う。アレッと思っていると「そうそう、アルベルトはカタラン(カタルーニャ語)を話すんだ。スペイン語とは似ているけど違うんだ。例えば、<ブエノス・ディアス(こんにちわ)>は、カタランでは、<ボン・ジア>と言うんだ」と、カルロスが解説してくれた。

 カタルーニャとは、バルセロナを中心とするこの辺一帯のスペインの地域を指す。で、ここカタルーニャの人たちは、独立意識が強く、スペイン人であるというより、カタルーニャ人であるということを強く意識している人たちらしい。なので、言葉も、独特のカタランを持っているのだ。

 スペイン国内なのに、一地方が一つの集合体として強いまとまりを持っている・・・そうか、このパトリオット的な郷土愛があるから、EUのような大きなまとまりを作って、国境をなくしても、<国>という単位が消えちゃったりしないのか、と、この話を聞いてEUの無国境の謎がオイラの中で解けた気がした。

 前の日記に書いた気がするのだが、EU(シェンゲン協定)加盟国間には国境がない。旅行者としては便利だけど、こんなことをして、国としてのまとまりがなくなっちゃわないんだろうか?という疑問を感じていたのだが、そうではないということに気づかされたのだ。

 国の中ですら、地域によってカラーが違うヨーロッパ。これは、それぞれの人たちが<俺達はここで生まれ育ったんだ>という土地と密着したアイデンティティを持っているからこそ成立する。だから線があろうがなかろうが、その土地に暮らす人たちは、その土地ならではの文化や風習を重んじ、ちゃんと引き継がれていく。もちろん、近くの地域の人たちとの文化の融合などは起こっていくんだろうけど、それは、非常に緩やかにしか進まないのだろう。

 もともとは持っていたであろう郷土愛を明治政府によって引き剥がされ、<国に帰属することを強要された>日本人は、逆に、<国という線引き>がないということが理解しづらい。

 それにしても、こんにちわが、<ボン・ジア>というなんて・・・それってポルトガル語じゃん。う~ん、ポルトガルとはスペイン本土を挟んで離れたこのカタルーニャの地で、同じ発音の言葉が話されているだなんて、これは、なんだか不思議で、ちょっと興味深い。

 そんなことを考えていたら、いつのまにか、広場には大勢の人たちが集まり、もうすぐパレードが始まる、という雰囲気になっていた。小太鼓を抱えたちっちゃい子供達がスティックを持ち、太鼓の試打ちを勝手に始め、リーダーのおじさんに「まだ、鳴らしちゃダメ」と怒られたりしている。

 で、6時きっかり。花火が打ち上げられ、それを合図にして、広場に集まっていたいくつかの太鼓グループが一斉に太鼓を打ち鳴らし始めた。おお、この一斉に始まる感じがいい。ちょっと鳥肌ものだった。

 この後は、もう、大騒ぎとなった。町の通りは、パレードする人たちと、そのパレードを見たりついていったりする人たちで溢れ、大変な状態に。ふむむ、これがスペインのお祭りか・・・スペインの祭りと言えば、牛追い祭やトマト祭が有名で、オイラもぜひその二つには参加してみたいって思っていたけど、実はスペインにはたくさんの魅力的なお祭りがある、ということを知り、むしろ、そちらのほうに、惹かれるようになってきたオイラ。太鼓祭りとか、オイラにとってはテンションあがりまくり。

 さて、そんな盛り上がるタラゴナの町を堪能した後、アルベルトとマリーナの家で、夕飯を一緒に食べようということになり、宅配ピザを注文。ピザが届くまで、ハムとビールとオリーブのベルムーで小腹を満たす。

 それにしても、スペイン、飯はホント素晴らしいんだけど、食事時間がビミョウ。朝、軽めに食べた後、昼飯が14時くらい。そして夕飯は21時くらい。飯の間隔が離れているから、小腹を満たすためになにか、ちょっとしたつまみをという小皿料理であるタパス文化が生まれているのかも、なんて思ったりもする。

 そして、スペインは、自分達の国がヨーロッパだという意識は薄いようだ。「バルセロナはヨーロッパだよ」と、明日バルセロナへ行くと話したオイラに言ったアルベルトの言葉は、裏を返せば「バルセロナ以外はヨーロッパじゃないよ」という意識から出たもののような気がする。

 カルロスも「スペインでは高速をチャリで走っちゃったり、信号無視しちゃっても、まぁまぁ、で済まされるけど、ヨーロッパに行ったら違うから、気をつけてね」なんてアドバイスをくれたりするし。

 確かに、スペインってビミョウにヨーロッパっぽくない気はする。

 「ピレネーを越えたらアフリカだった」という言葉をふと思い出した。あれっ、この言葉を言ったの誰でしたっけ?