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お言葉に甘えて、来ちゃいました

2012.11.10 / Italy(Agordo付近~Padova) 本日 自転車122km走行 : Total 41858km走行
天気:曇時々雨 シェンゲン72日目
朝飯→パン 昼飯→パン 夕飯→ジョバンニおじさんとドナッテラおばさんの手料理 / 宿→ジョバンニおじさんとドナッテラおばさん宅

(English)
 I arrived at Padova.



 朝、ポツポツという音で、目が覚める。慌てて飛び起き、テントの外を見ると、空には一面に怪しい雲。そんな雲が、ちょうど雨を降らし始めたところだった。だいぶ下の方に降りてきたこのあたりは、降り注ぐのは、ただの雨粒だが、雲で覆われちゃっているドロミテの山の中は、きっと雪が降っちゃっているにちがいない。

 天気予報どおり、天気は崩れた。

 さすが、よく当たるヨーロッパの天気予報。

 ふ~、結局、昨日、ドロミテ街道の方に突っ込まないで正解だったってことだ。あの分岐点で、「知らなかったら、悩まずに、このままドロミテ街道に突っ込んでいたのに。知らなかったほうがいいこともある」なんて、思っちゃったけど、やっぱり、情報は知っててなんぼだ。

 テントはもはや、朝露で濡れちゃっているので、今更雨が当たろうが関係ない。濡れたままテントをたたみ、カバンの中へ。そして、手早く出発準備をして、小雨の中、チャリをこぎはじめる。

 すぐに、道脇にバー&レストランを発見。雨宿りがてら、中へ入って朝食。イタリアのバー&レストラン、軽食としてサンドイッチが置かれている。これ、安くて美味い。中の具にいろんなバリエーションがあったり、トーストといって、オーダーした後に、外側をこんがりと焼いてくれるのもある。

 ここで、ちょっと休んでたら、雨が止んだので、また走り始めることに。さてさて、南へと漕ぎ進めていくと、途中途中で辿り着く町が、次第に、イタリアっぽくなってきた。町の入り口にギリシャの銅像が飾ってあったりして。そして、そんな町に辿り着く間隔が短くなればなるほど、道が複雑になってきた。北部では走りやすかったイタリア道も、この辺は、他のヨーロッパと同じく、カオス。道が入り組んでいて、どちらに走ったら、目的地に辿り着くのか、分かりづらい。とにかく、次の目的地である<パドヴァ>と書かれている看板方向に、走っていたら・・・道がいつのまにやら、高速道路となっていた。基本的には車しか走っていない。チャリで走っているのはオイラだけ。ただ、道のどこにも、自転車進入禁止の看板はないし、車専用道路ってワケでもない(車専用道路は、ちゃんとそういうように表記されている)ので、ここ、チャリで走っても大丈夫だとは思うのだが・・・ホントにいいのかいな?ま、怒られたら怒られた時だ。その時に「ごめんなさい」と言って出ればいいや、ということで、そのまま走り続けるオイラ。

 高速道路走行は、素敵な景色は期待できないが、とにかく、最短距離をいい状態の道路で走ることができるため、速い。この曇天ではどうせ、景色を楽しむことができなかったワケだし、今日は、高速道路走行で大正解だった。この高速道路走行のおかげで、今日、ひょっとしたら辿りつけないかも、と思っていた、本日の目的地<パドヴァ>に、日が暮れる前に辿り着くことができた。

 <パドヴァ>・・・聞いたこともない町で、隣にはあの水の都ヴェネチアがある。普通だったら、ヴェネチアへと向かうところなのだが・・・スペインのバルセロナの北方にある海岸沿いのクネクネ道を走っていた時に、出会ったイタリア人のジョバンニおじさんとドナッテラおばさん。このお二人が、住んでいるのが<パドヴァ>なんですよ。出会った時に「イタリアに来たときにはうちに寄りなさいよ」と言って、付箋紙に住所を書いて渡してもらってまして。ということで、お言葉に甘えて、お二人の家を訪問することにしたんです。

 iPod Touchの地図におばちゃんから聞いた住所を打ち込み、地図上でマーキングしておいたお二人の家。実際には、パドヴァの町中心からはちょっと離れた郊外にあった。ちょうど、オイラが走ってきた高速道路を降りたところから、すぐだったため、あまり迷うことなく、家の前に到着。

 しかし・・・今回の訪問、メアドを聞いてないから、メールで連絡なんてしていない。一応電話番号は聞いていたのだが、お二人と出会ったとき、英語もスペイン語も通じず、雰囲気イタリア語で、なんとなくな意思疎通が出来た程度だったんで、電話したところで、いたずら電話だと思われる可能性もある、と思って、電話もしてなかったんですよ。

 ということで、突然の電撃訪問ってワケでして。いや、電撃訪問って、失礼っていうか、迷惑だろうなぁ、っていうのはジュウジュウ承知しているんですけど。でも、こちらが予定は未定な旅をしているチャリダーってことは分かってもらえているはずだし・・・という甘えに近い感覚で、なんとかなるだろうと、家の呼び鈴を鳴らすオイラ。

 すると、門のインターフォンから、イタリア語の反応が。うむむ、何を言っているかよく分からない。それに対して、「え~、と、アイ・アム・ヨシ。ビアホ・エン・ビシクレタ・・・え~、ベンゴ・デ・エスパーニャ・・・」と、英語スペイン語混じりのよく分からない自己紹介を返すオイラ。

 で、プツッと切れるインターフォン。「いたずらだと思われちゃったかな」と心配した次の瞬間、門が開かれた。そして、門の向こうには、ジョバンニおじさんとドナッテラおばさんの姿が。

 「あらら~」

 オイラのことは、すぐにスペインで出会った日本人チャリダーだと、思い出してくれたようなのだが、ホントに来ちゃったの?的な驚き反応のお二人。

 お言葉に甘えてきちゃいました。

 もちろん、優しいお二人。すぐに温かく迎えてくれまして。「すぐに、部屋を用意するから、自転車はここに置いて、中に入って休みなさいよ」と、ドナッテラおばちゃんが、居間へと案内してくれた。思っていたよりかなりデカイ、素敵な家に通されて、恐縮なオイラ。居間の椅子に座って待っている間に、おばちゃんたちは、寝室となる部屋をバタバタと片付けている模様。「いや、ホント、突然でスイマセン」的な感じで寝室を覗くと、「いいのよ。気にしないで。どうせ片付けなきゃいけなかったんだから」とドナッテラおばちゃん。

 「どうせ片付けなきゃいけなかった・・・?」そういえば、この家はなんかちょっと変。荷物がダンボールに入れておかれてたりして・・・まるで、引っ越してきたばかりの家みたい。そういえば、家は新築っぽい・・・

 なんかいろいろ疑問がわいたのだが、その疑問をぶつけるだけの語学力がないオイラは、おとなしく、寝床を用意してくれるのを待つ。で、しばらく待ってたら「出来たわ」との声。「ここがあなたの部屋だから自由に使って。あ、あなたの名前なんだったけ?ヨスィ?え、違う?ヨシィ・・・そう、ヨシィね」と、ドナッテラおばちゃん。

 その後、「洗濯ものたまっているでしょ。出しなさい、洗ってあげるから」「お風呂いれておいたわ。入って疲れをとりなさい」と、旅人がまず、何をやりたいかを分かってくださっている、適切なもてなしをテキパキとしていただきまして。

 いや、ホント、ありがたい。特に、ここんところ、ずっとテント泊だったからねぇ・・・ベッド、洗濯、お風呂・・・ああ、心に染み入ります、ハイ。

 で、お風呂、シャワーだけかと思っていたら、なんと、湯船にお湯をはってくれまして。あぁ~お湯につかるのなんて、いつ以来だろう・・・と、オイラがノンビリとお風呂に入っている間に、食事の用意もしていただいてまして。二人で並んでキッチンに並んでいる姿がなんだかとっても、ほほえましい。そんなお二人に、「お風呂、ありがとうございました」と、言うと「ヨシィは、フランス語は喋れるの?」とドナッテラおばちゃんが聞いてきた。「ちょっとだけ・・・いや、ほとんど話せないです」と答えると「私はイタリア語とフランス語なら喋れるのに。ヨシィは英語とスペイン語か。難しいわねぇ・・・いろいろ話したいのに。じゃぁ、コミュニケーションをとるために、夕食に、英語が喋れる友人を呼ぶことにするわ」ということに。

 ちなみに、この辺の会話の流れは、たぶん、こういうことをおばちゃんたちは言っていたんだろうという推測の元に再現してます。実際の現場では、こんなスムーズなコミュニケーションなんて成立しておらず、「??」「????」と、手探り状態でした・・・

 さて、ということで、ご友人たちがやってくるまで、薪ストーブのある部屋で暖まりながら、アペリティーボとして、ワインとサーモンスライスを出していただきまして。このサーモンスライスが、めっちゃウマだった。パンに乗せて食べると、そりゃもう、絶品。

 で、アペリティーボをしながら、ジョバンニおじちゃんと話していて、オイラが元電話屋だったということを聞いたおじちゃん、部屋の奥から、ハブと電話の子機を持ってきまして。「これ、インターネットにつなぐ機能があるみたいなんだけど、やり方がよくわかんないで、困っていたんだよ。ヨスィ、分かるか?」と。「ジョバンニ、ヨスィじゃないわ。ヨシィよ」という、おばちゃんの突っ込みに、まぁ、どちらでもOKです、と答えながら、おじちゃんが持ってきたイタリア語の解説書に目を通すオイラ。が、やっぱり読めない。ま、こういうのは、いじってみればなんとかなるものさ、と、とりあえずそれっぽくいじりながらセッティング。結構適当にやったんですけどねぇ・・・結果的にはうまくいきまして。家の中ではローカルLAN接続ができるようになるところまで、セッティング成功。あとは、外部の回線業者にインターネット接続をお願いすれば、もう、この家でインターネットが使えるようになりますよ、という状態までもっていくことができまして。ふ~、早速、お役に立ててよかったよ。これで、オイラを招いてよかったと、少しでも思ってくれると嬉しい。

 で、そうこうしている間に時間が経ち、ご友人のご家族がやってきまして。ディナータイムに突入。ご友人の息子のメケレくんが、英語ができるということで、オイラと皆さんの通訳をやってくれることに。が、頼みのメケレくん・・・英語は正直言ってビミョー・・・まぁ、オイラも堪能な方ではないので、なかなかコミュニケーションはうまくいかず、相変わらず、たどたどしいコミュニケーションが飛び交う夕食の席・・・ちなみに、メケレって、マイケルのイタリア語読みらしい。

 ドナッテラおばちゃんは、オイラの旅のことをいろいろ聞きたいみたいで、メケレくんに、弾丸のように、イタリア語で、質問をぶつけている。それを、メケレくんが「え~と・・・」と、英語とイタリア語交じりで、オイラに投げてくる。一応英語の部分から、質問を類推して、たぶん、こんな感じのことを聞きたいんだろうな、と判断したオイラは、貧困なボキャブラリーを使って、なんとか英語で答えをつくって、メケレくんに託す。そんな英語をどこまで分かってくれているのか分からないメケレくんが、イタリア語で、おばちゃんに説明。おばちゃんは、あんまり納得していないような顔をしながら、メケレくんの話を聞いているという・・・

 まぁ、でも、楽しい夕食でした。ジョバンニおじちゃんが作ってくれたリゾットは最高に美味しかったし、ドナッテラおばちゃんが作ってくれたパプリカの炒め物と、鶏肉の衣焼きは、これまた、ほっぺたが落ちるくらい美味かった。なんていうか、家庭料理って、外で食う飯とは全然味わいが違うモンナンデスよ。この違いってなんなのかなぁ・・・そもそもの味が違うのか、それとも、家庭で食べるっていう雰囲気が違いを感じさせるものなのか・・・

 さて、食事をしながら、メケレくんと、たどたどしいながらも、話していたら、オイラと同じくドラマーだということが判明。というか、メケレくんは、ちゃんとヤマハの音楽学校に通ってドラムを本格的に習っているようで、我流のオイラとは、基礎が違う。そんなメケレくん、<ドラゴンフライ>というハードロックバンドのドラムが叩きたいんだ!って言っていた。ドラゴンフライ?と聞いたことないバンドだったのですが、携帯に音源を入れていたメケレくんが、「これこれ、これがドラゴンフライですよ」と聞かせてくれまして。ほぉ、結構オイラ好み。メケレくん、趣味が合うじゃないか、とハードロック&ドラム談義で盛り上がる。

 と、美味しいメインディッシュを食べつくした後、メケレお母さんが作ってきたというケーキをいただく。これまた美味しくて・・・ああ、なんて幸せ・・・

 よかったよぉ、おじちゃんとおばちゃんのところを訪問して、と実感。腹ペコチャリダーは、とにかく、飯で釣られますんで、ハイ。

 さてさて、夕食がひと段落したところで、一人の男の人がこの場に入ってきた。イケメン男性、どうやら、ジョバンニおじちゃんとドナッテラおばちゃんの息子さんらしい。で、このマテオさんが、英語が堪能でして。ここでようやく、円滑なコミュニケーションがとれるようになりまして。

 マテオさんが通訳に入ってくれて、「ああ、さっきの話は、そういうことだったのね」と、オイラも、ドナッテラおばちゃんも、ようやく合点がいって、うんうん、とうなづきあったりして。

 と、まぁ、そんな感じで盛り上がった今夜のディナータイム。そろそろお開きの時間となり、メケレくん一家が帰りの準備。と、よく見ると、帰りの準備をしているのは、メケレくん一家だけではない。ジョバンニおじさんとドナッテラおばちゃんも、なぜか帰り支度をしているじゃないですか。

 あれ?

 と思うオイラ。ああ、メケレくん一家を送っていくのかな、と思っていたら、そのままおじちゃんとおばちゃんも「ヨシィ、また明日ね。寝るときは戸締り忘れないでね」と言って、そのまま車に乗って去っていくじゃないですか。

 ???

 残されたのは、マテオさんとオイラ。この家は、マテオさんの家なのかいな?いや、実は二世帯住宅であるこの家、マテオさんの家は二階だと言っている。

 とにかく分かったのは、この家の一階は、今夜はオイラ一人だけということ。

 謎です。この家は一体、どういうことになっているんでしょうか?

 さて、とりあえず後で二階の家に戻るものの、しばらく話をしようぜ、ということで残ったマテオさんとお茶を飲みながら談笑していたら、マテオさんの彼女が登場。ここで、また、ひと盛り上がり。

 結局12時もすぎてしまい、そろそろ寝ましょうか、ということで、二階にあがっていったお二人を見送る・・・と、そういえば、戸締りしてねとは言われたけど、戸締りの方法を聞いてなかったぞ、と慌てて、マテオさんを呼び止めるオイラ。

 戸締り方法を聞いて、最後の鍵を閉め・・・このデカイ一階の家に、ポツリと残された、オイラ。誰も彼もが、当たり前のように振舞ってましたケド・・・はて、この状況は、なにかがおかしい。

 ※この謎は三日後に明かされることになります