Villa
パドヴァ名家だったおばちゃんの案内を最後にパドヴァを出発・・・一気にシチリアへ

2012.11.13 / Italy(Padova~Mirano~Genova~) 本日 自転車2km走行 : Total 41875km走行
天気:曇時々晴 自転車折りたたみ:1 シェンゲン75日目
朝飯→パン 昼飯→パン 夕飯→パン / 宿→船内泊

(English)
 I left from Padova today. I would go to Sicilia by ferry.



 今日、パドヴァを発つ。相変わらず朝オイラ一人だけのこの家のキッチンのテーブルの上に、イタリア語-英語の辞書が置いてある。ドナッテラおばちゃんの辞書だ。オイラとコミュニケーションがとりたいからと、おばちゃんは、二日目から、この辞書をもちこんできた。基本的にはイタリア語でマシンガンのように話してくるんだけど、オイラが分からず困った顔をすると、「え~っと、この言葉は英語ではなんていうんだっけ」と、その場で辞書をひいて、英語で言い換えてくれていた。

 そんなおばちゃん、昨日、オイラが、明日にはパドヴァを発ちますと言った時、「ヨシィが日本に戻ったら、日本に行くわ。その時までには英語を話せるようにしておくから」と、この辞書を片手に言うおばちゃん。嬉しいことを言ってくれるじゃないですか。ええ、その時までに、オイラもイタリア語を・・・いや、難しいか。その時には、イタリア語辞書を片手に・・・イタリア語をしゃべれる友人を連れてきます、ハイ。

 さて、今日は11時半の電車に乗って、ミラノ経由でジェノヴァへ行くのだが、電車に乗るまでの時間で、連れて行きたいところがあるから、と言うドナッテラおばちゃんが、9時に迎えにきてくれた。車に自転車と荷物を乗せ、おばちゃんの運転で、どこぞに連れて行かれるオイラ。こういう時、折りたたみチャリは便利なんですよ。普通の乗用車でも、折りたたんじゃえば、自転車、楽に乗せることができちゃうんで。

 さて、おばちゃんがつれてってくれたのは、なにやら、雰囲気のある古い洋館だった。「ママの家なのよ」というおばちゃん。うむむ、やっぱり、介護しているおばあちゃんがいるのか。最後に、オイラに会わせようとしてつれてきてくれたのか・・・と思ったのだが、実際は、全然そうではなかった。

 連れてきてもらったこの雰囲気ある古い洋館は、<ヴィラ・デル・ブレンタ>と言うらしい。ヴィラとは、上流階級の人々が田舎に建てた家屋を意味するとのこと。ブレンタとは、パドヴァを流れるブレンタ川を指し、<ヴィラ・デル・ブレンタ>とは、ブレンタ川沿いのカントリーハウス(別荘)、という意味。

 で、このヴィラ・デル・ブレンタ、「ママの家」という意味は、「おばちゃんの母から引き継いだもの」という意味だった。いや、正確に言うと、ジョバンニおじちゃんのお母さんから引き継いだものらしい。ジョバンニおじさんは、ここパドヴァの名家の生まれの人で、代々、このヴィラ・デル・ブレンタを別宅として、所有しているとのこと。

 う~ん、お二人には、どことなく品を感じていたのですが、やっぱり、名家の人だったんですね・・・ちなみに、ジョバンニおじちゃんは、今日はお仕事で、もう不在とのこと。昨日、ちゃんと別れの挨拶をしておいてよかったよ。

 1600年~1700年の17世紀に作られたというこのヴィラ、今や文化財級のものでして。そんなヴィラに、ジョバンニおじさんと、ドナッテラおばさんは、今<住んでいる>のだった。毎晩、帰るのは、このヴィラだったのだ。おばちゃんが言うには「こういうところは、文化財だからってほおっておくと、返ってダメになるのよ。むしろ、住んでいたほうがいいの。大事に思うからこそ、私達は、このヴィラで暮らすの」と。もともとヴィラとは、別宅としてのカントリーハウスらしいのだが・・・今のお二人にとって、ヴィラが本拠地みたい。プライベートなんで、あんまり写真は載せられないのだが、こちらのヴィラの方が、オイラが泊まらせてもらった家より、よっぽど生活感があふれていた。

 古い建物なんで、いろいろ不便なところもあるから、あの家を購入して、移住計画も立てているらしいのだが、やっぱりこの家を離れるワケにはいかず、二重生活が続いているとのこと。あの家を買ってからもうだいぶ経つそうなのだが、引越し作業は遅々として進まず。オイラが来た事で、あの家もちゃんとしなきゃと思って、ここ数日に、用意してあったパソコンとかテレビを運び込んだってことらしい。なるほど、引越し途中な雰囲気の家の謎とか、おばちゃんたちが、夜になると、あの家を空けていなくなる謎がようやく解けました。そういうワケだったのか。

 「中を見たいって言ってくる観光客がいっぱいいるんだけど、基本的には見せないの。だって、ここは私達のプライベート空間なんだもん。でもね、ヨシィには、見せてあげようと思って。今とも繋がっている古きイタリア。これも、イタリアだってことを感じて欲しくてね」

 と、ありがたい言葉をいただきながら、おばちゃんに、ヴィラの中を案内してもらう。応接間、リビング、キッチン、寝室、書斎・・・それぞれに趣きがある。部屋はきちんと飾りつけられていて、壁には年代モノの画がかけられている。「これ、サンピエドロ大聖堂よ。ローマに行ったら本物が見れるから、ぜひ見に行ってね」と、おばちゃん。

 そうそう、ヨーロッパはキリスト教が盛んなのだが、イタリアは特にキリスト教信仰が強い気がする。それは、ローマ(ヴァチカン)にカトリックの総本山であるこのサンピエドロ大聖堂があるというのも大きいだろう。昨日の晩、飯を食べている時、ちょっと宗教の話になり、リカルドさんから「ヨシはクリスチャンかい?」と聞かれ、一応無信教なのだが、それはそれで、そう答えると、説明がメンドクサイことになるので「いや、ブッディスト(仏教徒)だよ」と答えたんですよ。すると、「ゲット・アウト・ヒア~(クリスチャン以外は出て行け~)」と、冗談で言われちゃうくらい、キリスト教徒であることが当たり前のお国柄。

 ちなみに、ここには、おじちゃんとおばちゃんが結婚した時の若き日のお二人の写真も飾ってありまして・・・その写真のお二人は、めっちゃ美男美女だった(いや、今も素敵なお二人ですけど)。なるほど、マテオさんがイケメンなのも納得。このお二人の息子なら、さもありなん。

 さてさて、そんな貴重なヴィラを見せてもらっただけでも、ありがたい話だったのですが、「時間ギリギリまでパドヴァ周辺の見所を案内するわ」と、その後、引き続きドナッテラおばちゃんによる、パドヴァ周辺観光が始まりまして。

 ヴィラの後、連れてきてもらったのが<ヴィラ・ピサーニ>というこれまた、イタリア貴族の大別宅。ここは、あのナポレオンも泊まったことがあるという由緒ある建物。(ちなみに、後から知ったのだが、日本語ロンプラの第一版の表紙はこのヴィラ・ピサーニでした。うむむ、イタリアを代表するアイコンとして使われるほどの建物だったとは・・・おばちゃんに案内されている間は、そんなこと全然知らず)

 ヴィラ・ピサーニの後は、パドヴァ大学へ。「ガリレオって知ってるでしょ。この大学で、ガリレオが教えていたのよ」とおばちゃん。ほおお、そういえば、イタリアって、ガリレオといい、ダ・ビンチといい、優れた科学者を生んでいるんだよなぁ。

 そんなこんなで、楽しいドライブも、時間がきてしまいまして。最後、パドヴァ駅へ行って、降ろしてもらう。いやぁ、ドナッテラおばちゃん、ホント、おちゃめでキュートで素敵なおばちゃんでした。マテオさんが「うちのゴッドファーザーだから(笑)」という、ちょっぴりぶっきらぼうなジョバンニおじちゃんが、おばちゃんのマシンガントークに無反応だったりすると、「べぇ~」って顔をしかめて、こういう人なのよということを示すしぐさとか、いちいち立ち振る舞いにかわいげがある、おばちゃん。

 大好きですよ~、おばちゃん。

 また一人、世界に母と呼べる人が増えました。

 名残惜しいおばちゃんとの別れを振り切って、オイラはパドヴァ駅へ。次の目的地はシチリア島。シチリア島へはジェノヴァからフェリーが出ているそうなので、ジェノヴァまで行くことにしたのですが・・・パドヴァからジェノヴァへは直通の電車は出ていない。一旦ミラノに行って、ミラノで乗り換えてジェノヴァへ向かうことになる。ちなみに、パドヴァからジェノヴァまで、電車代は27.65ユーロ。自転車持込追加料金はなし。

 ということで、まずは、ミラノ行きの電車に。自転車持込OKよ、と切符を買うときにオネエサンに確認して乗りこみ、一応、それっぽいスペースはあったのですが、チャリをそのまま入れるには、キツすぎるスペースだった。まぁ、なんとか入れることができたので、そのままミラノへ。で、ミラノに着いて、すぐに、ジェノヴァ行きの電車に乗り換え。この電車も自転車持込OKのはずだったのだが、さっきの電車より、さらにチャリ置き場スペースが小さい。無理して入れ込んだのだが、通路をふさいじゃって、乗り降りする人たちや、車両間を移動する人たちの邪魔。これは迷惑だよなぁ・・・と思っていた矢先、切符確認のために訪れた車掌さんが「自転車車両は先頭の車両だよ。そこに移りなさい」と。イタリア電車、他の国の電車のように、自転車搭載車両のマークが車両の側面には記されていない。で、真ん中あたりに連結されている車両に、今回オイラがチャリを入れ込んだような空きスペースがあるのだが、これは、自転車用ではなく、大きな手荷物を置くため用のスペースだったらしい。自転車用には、もっと大きなスペースが先頭の車両に用意されていたのだ。

 ということで、次の駅に停車したタイミングで、一旦チャリを降ろし、先頭の車両に乗り換え。運転席の後ろが大きなフリー空間になっており、ここに楽々チャリを入れることが出来た。なるほど、イタリア電車はこういう仕組みになっているのか。イタリアで、電車ワープを考えているチャリダーの皆さん、何も書いてないけど、自転車持込は、先頭車両ですよ。うん、たまには、こんな感じで、使える情報を書いておかないと。

 さて、ジェノヴァに到着し、電車駅から、ちょっと離れたフェリー乗り場へ。一応、今日発のシチリア島・パレルモ行きのフェリーがあったのだが・・・出発は23時。今、17時だから、6時間くらい時間がある。ま、Wifiが飛んでいるマックがあるようなので、そこで、ネットしながら時間をつぶせばいいや・・・と思ったのだが、このマックのWifi、フリーなんですが、ユーザー登録が必要で。しかも、そのユーザー登録が、イタリアの携帯電話番号を持っている人しかできない仕組みになっている。最初の登録画面で、携帯電話の番号を入れる項目があって、パスワードは、その番号にSMSで送られてくるのだ。ということで、携帯電話を持っていない人は、使えない・・・(イタリア、この手のフリーWifiが結構あって、のちのち、少々ネット接続には苦労することになる)

 ま、しょうがないということで、とりあえず、チケットを買いに。フェリーはGrandi Navi Velociという会社の船で、切符は、最低料金の席で60.12ユーロだった。自転車追加料金はなし。ちょっと高い気がするが、ジェノヴァからパレルモまで20時間という長時間移動となることを考えれば、まぁ、妥当な価格ではあるのだろう。

 さて、ネット接続は諦め、シチリア島のガイドブックを読んで時間をつぶすオイラ。20時になったら、乗船OKとなったので、待合ロビーから出て、船へ。で、乗り込んだ船は、思っていた以上にでかかった。船の中も、まるで一流のホテルのような雰囲気をかもしだしている。うむむ、豪華客船。チャリは、車の駐車スペースの脇に、そのまま置かせてもらう。チャリと船移動は相性がいい。非常に乗り込みが楽。で、貴重品の入ったリュックサックだけを持って、客室へ。

 この豪華客船、高い金を払えば、個室もあるのだが・・・最低料金の切符を買ったオイラは、椅子がたくさん並べてある大広間的な部屋で過ごすことになる。が、このいわゆるオフシーズンの時期、客があんまりいないため、この大広間部屋でも十分快適に過ごせた。前方の大画面テレビでは、映画がやっているし、部屋の奥には、シャワーつきのトイレがあるし、基本的に、座席がめっちゃ空いているので、4つくらいの椅子を占用して、横になって寝ることができるのだ。

 ということで、横になりながら、テレビで流れているXメンを見ながら、いつのまにかウトウトと眠りにつくオイラなのであった。