The Godfather & Nuovo Cinema Paradiso
ゴッドファーザー&ニュー・シネマ・パラダイス

2012.11.17 / Italy(Corleone~Giuliana付近) 本日 自転車79km走行 : Total 42027km走行
天気:晴 自転車折りたたみ:1 シェンゲン79日目
朝飯→惣菜パン 昼飯→惣菜パン 夕飯→パン / 宿→道端で野宿

(English)
 I went to Corleone and Palazzo Adriano. These villages are cinema village.



 いよいよコルレオーネ村まであと4km。どんな村なんだろう・・・ハードル上げちゃいかん、と思いながらも、いやがうえにも、期待しちゃう自分がいる。

 緩やかな坂を上ったところに、コルレオーネ村があった。イタリアン・マフィアのドン・コルレオーネが生まれた村・・・ん?村ですか?ここ・・・めっちゃ栄えている感じなんですけど・・・

 村というより町の雰囲気だった。入り口付近には、大きめのスーパーマーケットとかあって、なんだか普通のイタリアの町って感じ。入り口から続く道脇は、商店街のようになっていて、イタリアの町によくあるバー・レストランが並んでいた。

 なんだよぉ、かつさん・・・こんな場所で、よく胸熱になれたなぁ。

 と、正直ガッカリ。で、お腹が空いたままだと、気分がさらに落ち込んでいくので、バーに入って、朝飯を食べることに。ちなみに、イタリアのバー・レストランは、朝、めっちゃ人で混みあいます。イタリアの皆さんは、朝、ここに来て、パンを食べ、濃ゆいエスプレッソをクイッと飲む。これが、イタリアの朝食風景。ちなみに、濃ゆいというエスプレッソ、どれくらい濃ゆいかというと、砂糖を入れても、入れた砂糖がまったく溶けないくらい。液体はコーヒーで飽和状態。

 とりあえず、お腹を満たし、気分が落ち着いたところで、もう一度町並みを見てみたのだが、どうみても、普通のイタリアの町。これじゃぁ、ゴッドファーザーに思いをはせるなんてことはできやしない。

 まぁ、しょうがないか、かつさんが来たのは13年前だっていうしな。変わっちゃったんだろうな・・・

 ということで、次の目的地に向かうことに。次の目的地は、映画<ニュー・シネマ・パラダイス>の舞台のパラッツォ・アドリアーノ村。パラッツォ・アドリアーノ村も変わっちゃって、残念ってことにならなきゃいいけど・・・

 なんて思いながら、コルレオーネ村の中へチャリを進めていったところ・・・

 突然風景が一変した。

 丘陵地帯の坂に、古きよき家々が立ち並ぶ、細い路地ゾーンに突入したのだ。

 ふおお・・・

 急に、ゴッドファーザーの世界に包みこまれた。いや、この地で映画をロケしていないことは知っている。だから、映画のシーンのデジャブで、ゴッドファーザーを感じたのではない。そうではなく、もっと深遠な部分で、あ、ここが、ゴッドファーザーの世界か、という感覚に襲われたのだ。

 これこれ、この感じが味わいたかったのよ。

 かつさん、ここにありましたよ、ゴッドファーザーの世界が。

 なるほど、これは、胸が熱くなる。

 先ほどの<町>の部分は、新市街だったのだろう。旧市街であるこのあたりは、おそらく、昔から変わっていないと思われる。古きイタリアのカホリが漂っていた。

 そんな雰囲気に包まれ、オイラのテンションは、うなぎのぼりにあがりっぱなし。新市街でガッカリして、ハードルがなくなった分、何を見ても、テンションがあがる。旧市街にあったバーの壁に映画のワンシーンの看板を見つけて、小躍りしちゃったり。

 テンションが低かったら、石畳の上り坂を上るなんてことは絶対やらないのだが、テンション上がったオイラは、石畳の上り坂もなんのその。雰囲気ある方へある方へと、コルレオーネ村の中を走りまわっていたら、いつの間にか、村の上にある高台へとやってきた。ここからは、コルレオーネ村が一望できる。周囲を切り立った岩山で囲まれているコルレオーネ村、高台からの眺めが素晴らしかった。

 ああ、ゴッドファーザーの世界・・・

 さて、満足したコルレオーネ村の次に向かったのは、パラッツォ・アドリアーノ村。先ほども書いたように、映画<ニュー・シネマ・パラダイス>のロケ地となった村でして。ジュゼッペ・トルナトーレ監督のニュー・シネマ・パラダイス・・・この映画もオイラの好きな映画なんですよ。この映画では、映画技師のアルフレードおじさんとトト少年が、不思議な寓話のやりとりをする。その寓話に<人生の意味>が隠されているのですが・・・この映画ではその<答え>を言っちゃうような野暮なことはしません。あくまでも寓話は寓話として。ただ、その寓話の答えを見ている人たちそれぞれが感じれるように、映像構成がなされているという、上品で、秀逸なイタリア映画なんです。

村を出ろ

ここは邪悪の地だ

ここにいると自分が世界の中心にいると感じる

何もかも不変だと感じる

だがここを出て2年もすると

何もかも変っている

頼りの糸が切れる

会いたい人もいなくなってしまう。

一度 村を出たら

長い年月 帰るな

年月を経て帰郷すれば

友達や──

なつかしい土地に再会できる

今のお前には無理だ

お前は私より盲目だ

 これは、映画の中で、アルフレードおじさんが、とある寓話を元にして、トト少年に言う言葉。この言葉、今のオイラの心には、ズシンと響く。

 もしかしたら愛してくれたかも、なんていう幻想に逃げてはいけない。幻想、郷愁、これらはすべて人を縛り付ける<邪悪>なものでしかないのだ。そんなものに、惑わされる暇がないほど、<今>を生きろってことか。

人生はお前の見た映画とちがう

人生はもっと困難なものだ

行け

ローマに戻れ

お前は若い

前途洋々だ

私は年寄りだ

もうお前とは話さない

お前の噂を聞きたい

 人生は踏みとどまるものではなく、踏み外すもの。映画のように、結末まで一本のリールが繋がっているものではない。このアルフレードおじさんの言葉を、理解した上で、最後の<コマ切れのキスシーン>のシーンを見ると、もう、とめどなく涙が溢れてきます。多分、オイラは、今もそのシーンで泣けます。よくある浪花節のお涙ちょうだいの定型とは対極の、詩的で散文的なこの映画に泣かされます。この涙がなんなのか・・・よく分かりません。この分からなさが、<ニューシネマパラダイス>の素晴らしいところなんだと思うのです。

何をするにしろ自分のすることを愛せ

子供の頃に映写室を愛したようにそれを愛せ

 名言です。

 そんな大好きなニューシネマパラダイスだったんですが、映画のロケ地が、シチリア島だったとは知らなかったんですよ。安藤さんから、メールで教えてもらって、慌てて調べたという・・・ちょうど、コルレオーネ村からちょっとだけ離れた場所に、ロケ地となったパラッツォ・アドリアーノ村があるということが分かりまして。だったら、コルレオーネ村を訪れたついでに訪れれるじゃん、ラッキー、ということで、訪れたパラッツォ・アドリアーノ村・・・ここは、もう、あの映画の世界そのものだった。ロケ地として使われたワケだから、当然っちゃ当然なんだけど・・・ふ~、ここもテンションあがりまくりましたねぇ。

 いやぁ、今日も、チャリ走り最中のシチリア島は絶景続きだったんですが・・・大好きな映画二本のゆかりの地巡りの印象が強すぎて・・・風景のことは忘れてましたねぇ。写真を見て、あぁそうだった、こんな素敵なところを走ったんだったって思い出す感じで。とにかく、今日は、全てにおいて大満足。なかなかないですよ、こんなに満足度の高い日っていうものは。

 そうそう、そういえば・・・シチリア島、調べてみると、まだまだ、オイラの好きな映画のロケ地として使われているんですよねぇ・・・例えば、リック・ベッソン監督の<グラン・ブルー>とか。ただねぇ、グラン・ブルーのロケ地は、東海岸のタオルミーナの町付近らしいんですよねぇ・・・うむむ・・・ゴッドファーザーの<ロケ地>に近いのか・・・今回は、時間に余裕がないので、シチリア島西だけ攻めるつもりだったのだが・・・東海岸も行ってみたくなっちゃったなぁ・・・

 シチリア島、面白すぎる。