All's well that ends well
終わりよければすべてよし

2012.11.18 / Italy(Giuliana付近~Alcamo) 本日 自転車93km走行 : Total 42120km走行
天気:雨 ネット:1 パンク:1 ブレーキパッド交換:3 シェンゲン80日目
朝飯→惣菜パン 昼飯→クッキー 夕飯→豆パスタ / 宿→トマッソさん宅

(English)
 Today it was bad weather...



 昨日走っている最中、前輪のブレーキをかけたとき、異音がするようになっていた。ドロミテ、シチリア島と、アップダウンが多い場所を走ってきたため、ブレーキパッドがすっかり磨り減ってしまっているようなのだ。このままではリムを傷つけてしまうため、朝起きて、まず、ブレーキパッド交換。

 で、パッド交換をしている間に、ポツポツと雨が降り始めた。慌ててテントをたたんで出発準備。今日は、快晴だった昨日までと違って、空一面にどんよりとした雲が広がっている。う~ん、やっぱり雨になったかぁ・・・いや、今日の天気が崩れるのは、天気予報を見ていたから分かってたんですよ・・・なので、シチリア島走り初日にコルレオーネ村に行って、二日目にはパレルモにトンボ帰りして、雨の今日は、どこか停滞できるところで休むってのが当初の予定だったんですが、走り始めたシチリア島が楽しすぎて、結局パレルモに戻ることはできず・・・いやぁ、それにしても、ホント、ヨーロッパの天気予報ってよく当たるな。

 朝、出発する時点では、うちはまだ小雨が降ったりやんだりという程度だったのだが、走りはじめてしばらくしたら、本格的に降り始めた。

 もう、走っていられないほどの土砂降りになってきたので、どこかで雨宿りしようと思ったのだが、雨宿りしようにも、ただ田舎の道が続いているこのシチリア道、雨宿るところなんてどこにもない。家らしきものがあるので、近づいても、廃屋で屋根がなかったりして、雨宿り場所にならない。しょうがないので、少しは雨の弱まる木の下で、傘を差して、雨が止むのを待つ。

 ところで・・・今日向かっているのは、アラカモという町。パドヴァのドナッテラおばちゃんの知り合いが住んでいる町だ。その方とは相変わらず連絡が取れないままなのだが(パレルモを出発してから、ネットをつなげられる環境がなかったため、メールチェックしていないため)、とりあえず、アラカモに行ってみることにしまして。

 で、しばらく待っていたら、雨が止んだので、走り始める。が、またすぐに、バケツをひっくり返したような雨が降り始める。あ~、もう、とにかく、今日の雨はうざい。天気予報で雨とは言っても、島の天気のことだから、一時的な雨で、それさえやりすごしてしまえば、あとは、天気なんて回復するだろうと思っていたのだが、今日の天気は、全然そんなことなかった。一応雲は流れているのだが、雨雲が流れているだけで、雨が降ったり止んだりを繰り返すだけ。天気が良くなる気配は一向にない。

 晴れていれば今日も絶景続きのシチリア島だったんだろうけどなぁ・・・残念。

 そんなこんなで、アラカモまでは、余裕で辿り着ける距離だったのに・・・雨のため足止めされている時間が多すぎて、アラカモに辿りつく頃には、すでに真っ暗になっていた。

 相変わらず雨は降り続いているので、今日のテント泊は避けたい。というより、雨でびしょぬれになっているので、とにかく、カラダを乾かせる場所に行きたい、と思って、到着したアラカモで、宿を探し始めたのだが・・・ここ、アラカモ、シチリア島の中でも、高級リゾート地にあたるようで・・・宿はあるものの、値段がめっちゃ高そうな宿ばかり。

 ひょっとしたら見かけが高いだけで、実際は安いのかも。だってここは南イタリアだし・・・と思って、一軒トライしてみたところ、一泊44ユーロだと。撃沈。

 ああ、雨の中、がんばって走ってきたのに、最後もコレかよ。昨日は最高の一日だったのに、今日は一変、最悪の一日だぁ・・・

 これだったら、なんとしてもドナッテラおばちゃんの知り合いにコンタクトをとっておくべきだったよ、と激しく後悔。

 とりあえず、他の宿を探そうか、と探しはじめるも、他はもっと高そうな宿ばかり。う~ぬ、しょうがない・・・値段を聞いて撃沈したものの、今日、この雨ではどうしようもない、44ユーロを払って宿に泊まるか、と、先ほどの宿に戻る。

 が、宿の前で、「いやいや、やっぱり44ユーロはいくらなんでも高すぎでしょ。それを払うくらいなら、雨の中でも野宿しちゃった方がいいんじゃないの」と考え直す。幸い、アラカモの町はそんなに大きくはなく、町外れに行っちゃえば、野宿できそうな草むらが広がっている。濡れた地面としとしと降る雨、そして、びしょぬれの服と荷物さえ我慢すれば、野宿できないこともないのだ。

 よく考えたら、44ユーロは高すぎる。我慢して野宿することにしよう、と、町外れへ走り始めるオイラ。が、走っていたら、雨が強くなってきた。あぁぁ・・・やっぱり、この雨の中、野宿は嫌だぁぁぁぁ・・・と、再び、宿の方へ戻るオイラ・・・

 そんなことを繰り返していた時、一台の車がオイラの前で停まった。おお、濡れ鼠のオイラをかわいそうに思って、救いの手を差し伸べてくれるのかいな、とちょっと期待しちゃったのですが・・・この後の展開は、その期待を遥かに超えるものだった。

 なんと、その車から降りてきた男の人が、「キミはパドヴァのおばちゃんの知り合いのサイクリストかい?」なんて、言うじゃないですか。

 ええ!!!???ひょっとして、あなたが、おばちゃんの知り合いのトマッソさんですか!!!???

 そう、この停まってくれた男の人が、オイラがアラカモでお世話になろうとしていた、おばちゃんの知り合いトマッソさんだったのだ。

 トマッソさんは、たまたま買い物に来た帰りだったという。で、おばちゃんから「ジャパニーズのサイクリストが泊まりに行くと思うからヨロシク」と電話連絡を受けていたので、チャリ姿のオイラを見て、声をかけてくれたらしい(ちなみに、メアドは、どうやらアドレスが間違っていたみたいで、メールは届いていなかったみたい)。

 おばちゃんが連絡しておいてくれたからってのはあるけど・・・それにしても、この偶然。なんたる奇跡!!!!!!

 あらためて、自分には、旅の女神がついてくれているなぁと実感。

 時には悪戯する女神だけど、頼りになります、オイラの女神。

 大型バンに乗っていたトマッソさん、そのまま車後部に荷物を搭載したままファニーバニーを突っ込んで、家まで運んでもらうことに。

 結構郊外の方に走って、周囲にあるのは農場だけってところで車が停まる。到着したトマッソさん宅では、まずは、シャワーを浴びさせてもらって、乾いた服に着替え、そして、濡れた服を洗濯。ふ~、助かりましたよぉ。

 そして、お腹も空いているでしょ、ということで、出してくれたのが、レンタルズという豆パスタ。トマッソさんのお母さんが作り置きしてくれていたのを温め直して出してくれた。これが、激ウマ。一緒に出してくれたオリーブオイルをかけるとさらに旨みが増す。「めっちゃ美味いです!」と、トマッソさんに伝えると「そりゃそうさ。うちの母の料理の腕はピカイチだからね。そして、このオリーブオイルは自家製だしね」と。ええ、ホントにそう思いますわ・・・ちなみに、これ、全然肉系の素材を使っていない、完全ベジ料理。

 で、そんなディナーの卓には、もう一人女性が居まして。アリアナさんという彼女。最初、トマッソさんの妹さんかな?と思っていたのですが、話しているうちに、そうではなく、アメリカ、サンフランシスコ在住の旅人だということが判明。

 旅人として泊まっている・・・?ってことは、ここ、宿なんですか?

 実は、イタリアには、アグリトゥーリズモという仕組みがあるらしい。これは、農家の空き室を改造して、旅行者に手ごろな値段で提供する民宿のようなもので、ホテルのようなサービスは期待できないが、のんびりした滞在ができるという宿泊スタイルでして。この宿泊スタイル、その家の農家の人たちは、現役の農家なので、自分のところで取れた野菜やオイル、ワインなどを原価でふるまってくれたりと、素敵なメリットがあるので、ノンビリ旅旅行者には、密かな人気になっているらしい。

 ここ、トマッソさん宅は、まさに、そのアグリトゥーリズモだったのだ。実は、お世話になったこの時点では、オイラは、そんな仕組みがあるとはつゆ知らず。普通の家なのに、なんで、いくつも泊まれる部屋が用意されているんだろ?これまた、イタリアの居候は、謎だらけだ、なんて思ってしまっていたオイラだったのでした・・・