The other world
海を渡ると違う世界が待っていた

2012.11.26 / Italy→Albania(~Durres) 本日 自転車3km走行 : Total 42207km走行
天気:晴 ネット:1
朝飯→なし 昼飯→ケバブ 夕飯→ケバブ / 宿→Nais Hotel(4300レク)

(English)
 Today I arrived at Albania.



 寒いし、固い床のせいで体がきしみ・・・ぜんぜん寝れなかった。あ~、めんどくさがらずに、自転車を停めた駐車場に行って、マットと寝袋を持ってくればよかったよ。

 眠い目をこすりこすり、甲板に出てみると、遠くにうっすらと陸が見える。バルカン半島だ。今日は、もう、アルバニアに入国・・・ん?アルバニア・・・昨日は、とにかくシェンゲン圏外に脱出できる、という思いに舞い上がって、よく考えてなかったんだけど・・・

 アルバニアってどこですか?

 ローマに到着する直前まで、次はエジプトに行くつもりだったから、旧ユーゴ諸国周辺の国のことなんて、まったく調べていなかった。なので、「このフェリーは、アルバニアのドゥラスに行くよ」と言われても、アルバニア?ドゥラス?って感じだったのだ。

 そんな状況なのに、切符を買って、フェリーに乗っちゃうのもどうかと思うのだが・・・

 いや、ま、旅なんていうものは、そんな感じでちょうどいいのですよ。知らない場所へ行くってのが、旅の醍醐味。今のオイラは、久々に、未知の世界へ足を踏み込む感覚に、ドキドキしている。

 ヨーロッパ、といっても、日本人がよく知っているのは、西欧諸国だけだろう。フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、ポルトガル、オーストリア・・・オイラが今回の第一弾ヨーロッパ激走旅で訪れたヨーロッパは、日本によく情報が入ってくる、西欧諸国ばかりだった。なので、これまでのヨーロッパは、初めて訪れた地だったのに、だいたいどこも・・・知っていた。もちろん、実際に訪れたからこそ味わえた衝撃や、感動、楽しさ、みたいなものは、たくさんあったのだが、<未知な世界へ>という感覚は、まったくなかったのだ。

 ヨーロッパは狭いようで広い。いや、広いというより、実は、あまり知らない国々が、まだまだたくさんある。北欧、中欧、東欧・・・それらに区分されるヨーロッパの国については、オイラは、よく知らない。名前は聞いたことがあっても、その国が地図上でどこに位置するのかは分からない国だらけだ。

 アルバニアは、旧ユーゴ諸国の近辺に位置する・・・と言われても、旧ユーゴってどこだっけ?バルカン半島だとよ言われても、バルカン半島ってどこだっけ?状態。

 一応中学高校では、まじめに勉強してきたつもりなんだけどなぁ・・・

 理系だったけど、歴史や地理は好きだったから、ちゃんと授業聞いていたつもりだったんだけどなぁ・・・

 ええ、<つもり>だったんです。

 人間、必要に駆られないと、知識は身につかない。

 教えられた知識ではなく、知りたいと思って学習した知識のみが自分のモノになる。

 旅に出て一番考えさせられるのは<勉強>の意味。旅に出ると、<知りたい>と思うものが、次から次へと心から溢れてくる。そして、この気持ちに素直に従って、調べた(勉強した)ことは、自分の中に、確実に残る。自分の主体性なしで、ただ教えられたモノが、何回繰り返しても覚えられないのとは、真逆の現象だ。

 本来、<勉強する>とはこういう姿勢で臨むべきなんだ、ということを深く実感させられるようになる。

 もちろん、詰め込み教育を否定するつもりはない。繰り返しによって強引に覚えさせられた知識は、使えないまでも、心の中に残っていたりはする。それが、何かの拍子に突然、表出してくることもあるのだ。バルカン半島と聞いて・・・セルビア・・・世界の火薬庫・・・皇太子射殺・・・第一世界大戦勃発・・・コソヴォ紛争・・・と、キーワードが連想されるのは、歴史の授業で、詰め込まれたからこそ。この基礎知識があれば、その後の調べ(勉強)が、楽になるのは確か。

 なんてことを考えていたら、フェリーは、アルバニアのドゥラスの港に到着。ファニーバニーとともに、フェリーを降り、イミグレへ。ここも、何も問題になることなく、スムーズに、スタンプを押してくれた。で、押されたスタンプ、今度は、くっきりだったので、一安心。これで、シェンゲンを期限内に抜けたことを怪しまれることなく分かってもらえる。ちなみに、ドゥラスのスタンプ、スペインのタリファで押してもらった入国スタンプとそっくり。

 さて、イミグレを出て、フェリー乗り場から一歩出た途端・・・

 世界が一変した。

 どことなくやつれた感じの町並み、ゴミゴミした通りには、服装から判断して、あまり裕福そうではない人たちが、ウロウロしている。自転車を押していると、「お金もってたら、くれよ」と、その人たちが、寄ってくる。その人たちを振り払ったら、今度は「ハーイ、チーナ!マリファナ好き?」と、ヤンキー風な若者が寄ってくる。

 ここはヨーロッパなのか?

 これまでのヨーロッパとはまるで違っていた。どちらかというと、モロッコの雰囲気。雑踏。人でギュウギュウになった乗り合いバス。道に商品を並べて売る露天商。

 これまでのヨーロッパの雰囲気から、あまりにも変わってしまったことに驚いたのと、この怪しげな雰囲気、ひょっとして、アルバニアって危険な国なのか?という思いが、オイラにカメラを取り出させるのを躊躇させる。

 知らないで来ちゃったけど、ひょっとして、アルバニアって、来ちゃいけないところだったのかな?外務省HPを見たら<渡航はオススメできません>なんて書かれている国だったのかな?なんて、思いが頭をかすめる。

 アドリア海を渡るだけで、こんなにも世界が変わるとは・・・

 シェンゲン非加盟国は、シェンゲン加盟国のヨーロッパとは大きく経済状況が違うというのは分かっていた。国民所得を含め、格差がありすぎるために、シェンゲンに加盟したら、経済混乱が巻き起こってしまうため、加盟したくても加盟できないでいるのだ。

 そういうこと、知識としては知っていたケド、現実は、こうなんだ、ということを見せ付けられた。

 知識が、リアルと結びつく。

 これが<実際に旅をする>ということ。

 怪しげな雰囲気に気を引き締めながら、ちょっとした恐れと、驚きと、新鮮さが混じった複雑なドキドキ感で、ドゥラスの町を走る。

 と、町の中心に行くに従って、人が増えてきた。まぁ、人が増えること自体は、当たり前のことなんだけど・・・増え方が異常だった。広い道路なのに、道を通ろうにも、通れないくらい人が溢れているのだ。もちろん、車も通れない。というか、車はなぜか、通行止め。

 何事なんだろう・・・

 とりあえず、その人ごみをかいくぐり、宿にチェックインして、聞いてみたところ、今日は、ドゥラスの町が独立して100周年の記念日とのこと。ちなみに、アルバニアの独立記念日は二日後の28日なのだが、ドゥラスは、先んじて、独立を宣言した場所らしい。

 ただでさえ盛り上がる独立記念日が、今回は記念となる100周年。そりゃ、大盛り上がりなワケだ。街中が、アルバニアの赤い国旗で埋め尽くされていたのも納得。

 早速、町に出て、テンション高い、アルバニア人たちに混じってみる。到着した直後は、怖い印象しかもてなかった、ソフトモヒカンばかりのアルバニアの若い男の子達も、接してみれば、いいヤツばかりだったので、ホッとした。

 アルバニア、そんなにおびえる国じゃなさそうだ。

 アルバニアの人々は、よくみると、これまでのヨーロピアンとはちと違う。っていうか、なんか、いろんなタイプの人たちがいて、興味深い。この混血感を感じさせる多様な顔立ちは、ここ、バルカン半島が、異民族の侵略が相次いだ歴史的背景によるものなのだろうか。うむむ、そのせいなのか、女の子、エキゾチックな雰囲気を持つきれいな娘が多いぞ・・・