Mevlevilik
セマー体験

2013.1.20 / Turkey(Istanbul) 本日 自転車0km走行 : Total 43244km走行
天気:晴 ネット:1
朝飯→パン 昼飯→サバサンド 夕飯→サムゲタン / 宿→Tree of Life(ドミ8ユーロ)

(English)
 I stayed in Istanbul.



 トルコといえば・・・実はトルコ音楽にめっちゃ興味があったんですよ。モロッコ以上に多ジャンルの音楽があるって聞いてて。

 そんなトルコ音楽は、奥が深そうなので、短期滞在で、すぐに西アフリカに飛ぶつもりだった、今回の第一回目のトルコ滞在では、手を出すことなく、夏後、もう一度トルコに戻ってきた時に、ガッツリ聴いたりやったりしようと思っていたのですが・・・行こうと思っていたアフリカがああいう状況になり、様子をみるため、イスタンブールにもうちょっと居ることになったので、せっかく時間があるのだから、トルコ音楽に手を出してみようと思い始めたオイラ。

 ということで、今日は、アジア側へ行ってみるというリョウイチくんと一緒に宿を出て、新市街の楽器店が並ぶ通りってところに行ってみたんです。楽器店には、ダラブッカやフレームドラムがズラリと並んでいて、ウハウハ。

 そして、この楽器店通りを歩いていると、オイラにとって、慣れ親しんだ<ジルジャン>という名前の看板をあちこちでみかけた。ジルジャンとは、世界的に有名なシンバルメーカー。オイラも、日本でドラムを叩いていたには、ジルジャンのシンバルをメインで使ってまして。そんなジルジャン、もともと、トルコのイスタンブールに居たアルメニア人のシンバル職人が始めたメーカーだったんですな。そして、Aジルジャン、Kジルジャンとブランド分裂したり、工場がアメリカに移転するなど、紆余曲折。で、Kジルジャンの生産がアメリカに移される際、Kジルジャンを作っていたトルコの職人が、トルコの地で新たに作り始めたシンバルが、イスタンブールシンバル。イスタンブールシンバルも、有名で、名前を聞いたことあったんだけど、なるほど、ジルジャンとはそういう関係だったとは・・・コレ、ドラマーとしては、知っておきたい豆知識。

 さて、そんな楽器店通りを歩いていたら、一つの店からダラブッカの音色が聞こえてきた。店に入ってみると、一人のおじさんが叩いていた。そして、このおじさんが、めちゃ上手い。楽器を見るためだけに訪れたつもりだったのだが・・・この上手いおじさんをみていたら、やっぱり自分でも叩きたくなってきちゃって。おじさんに「教えてくれますか?」とお願いしてみることに。

 どうやらこのおじさん、イスタンブールの小さな子供たちに音楽を教えている先生らしい。教えるのは得意というおじさん、「明日からなら時間があるからいいよ」と快諾。で、気になる値段なんですが・・・1レッスン50リラ(2500円ほど)でどうだ、と言われまして。セネガルでのジャンベレッスンが、ダカールで、1000円だったことを考えれば、それなりに物価の高いトルコでは、まぁ、妥当といえば妥当な額かなぁ、とも思ったのですが、とりあえず、交渉をしてみたところ、1レッスン40リラ(2000円ほど)まで下がった。と、交渉してみたものの、相場を知らないので、下げた値段でも、実は、妥当な値段なのかどうかが分からない。なので、「ちょっと待っててください」と、別の店に行って、「太鼓のプライベートレッスンを受けるとしたらいくらくらいになりますか?」と聞いてみることに。すると、「まぁ、大体1レッスン1時間から1時間半で、100リラってところかな」と。おお、相場は倍以上するってことか・・・ということで、先ほどの自称先生にレッスンをお願いしてみることに。太鼓の腕は一応見せてもらって、この人だったらぜひ教えてもらいたいって、思ったんで、なにも吸収すべきところがなかった、なんてことにはならないだろうし・・・ま、試しで一日教えてもらって、よさげだったら、二、三日続けてみるか、と、軽い気持ちでお願いすることに。とりあえず、明日17時に来てくれと、いうことなので、うまくいけば、明日からダラブッカ修行開始。

 その後、引き続き、ブラブラ楽器屋を巡っていたら、一人の店員のおじさんが「俺が吹く笛を聞いていけ」と、笛を吹き始めた。あの・・・僕は笛には興味なくて、興味があるのは太鼓なんですけど・・・と、言いたいところだったのだが、せっかく吹いてくれているので、言いそびれ、しばし、おじさんの吹くネイという笛鑑賞。

 さて、歴史が古いトルコ。音楽も、古典音楽と呼ばれる、かつてのオスマン帝国の宮中音楽などが、今も演奏されたりしている。店のおじさんが吹いてくれたネイも、その古典音楽で使われる楽器の一つ。

 で、この楽器屋通り沿いに、そういった古楽器を集めた、古楽器博物館なる博物館がありまして。興味が沸いてきたので、行ってみるかな・・・と、古楽器博物館を訪れたところ・・・入り口のところで<Today Only>と書かれた札が下がっていて、なにかのチケットを売っていた。気になったので、聞いてみた所、どうやら、毎週日曜日にここで行われる<セマー>という踊りのチケットとのこと。<セマー>・・・そういえば、ガイドブックでなんかみたぞ。ひらひらする白いスカートが印象的だったんで、記憶に残っていた。

 一週間に一回しかないイベントが行われる日に、たまたま来たのは何かのご縁。チケット代は、40リラと、ちょっと高めだったのだが、買って見てみることに。

 で、古楽器博物館の中に入ってみると、広いホールみたいな空間に通された。どうやら、ここで、その<セマー>という旋廻舞踏が行われるらしい。

 舞台の周囲に囲むようにして並べられた椅子に腰掛け、待っていたら・・・舞台上方にある見下ろし台のような空間から、古楽器の厳かな音色が聞こえてきた。おお、演奏はそんな上でやるんかい。踊りも見たかったけど、オイラとしては、楽器演奏が見たかったのに・・・演奏している様子は、下からだと全然見えない。と、こちらからは見えにくい、その演奏ゾーンに、一人の男の人が出てきた。そして、古楽器演奏を伴奏にして、朗々と歌いだした。その歌は・・・アザーンにも似て、とても、神秘的。そして、この歌声によって、会場の空気が一気にあちらの空間のモノと化した。

 そして、この歌をバックにして、山高帽をかぶり、黒いガウンを羽織った数名の男たちが、一歩一歩、かみしめるように、ユックリと歩いて舞台に登場。ホール周囲をユックリと歩いて回った後、舞台端に座り込み、しばし黙祷。そして・・・ゆっくりと立ち上がり、羽織っていた黒いガウンを脱ぎ、白装束になったかと思うと、一人一人が、クルクルと回りだした。

 それは、まるで、風に吹かれて空へと待っていくタンポポの綿毛のよう。

 40リラも払って見に来て、こういうのもなんですが・・・実はあまり期待してなかったんですよ、このセマー。で、期待してなかった分、感動の衝撃がデッカク来た。

 物音一つさせず、ひたすら回り続ける男達。

 幻想的な空間が形成され、ここがどんどんリアルでなくなっていく感覚に襲われる。

 バックで厳かに鳴り響く古楽器の音色が途切れた一瞬だけ聴こえる、舞う白いスカートのこすれるかすかな音が、かろうじてリアルな世界へと引き戻してくれる。

 なんというか、他では味わえない、この独特の雰囲気。

 この旋舞<セマー>、今やショーみたいな形で観光客に見せてますが、れっきとした宗教儀礼。神と一体化するために行う、イスラム神秘主義(スーフィズム)のメウレウィー教団の修行の一つらしい。回ることで、軽い眩暈みたいなのが起きて、トランス状態になり、神と一体化できるんだという。

 もちろん、初心者がこの人たちのようにクルクル回っても、ただ目が回って気持ち悪くなるだけ。何度も何度も、何年もかけて回り続ける訓練をすることで、神と交信する高みへと登っていけるらしい。つまり、これは修行。クルクル回る、修行。

 う~ん、世の中には、こんな修行をして人生を過ごしている人たちもいるとは・・・

 世界は深い。