European hospitality
ロベルトのマシンガントークを聞きながら、欧州流<おもてなし>について考える

2013.10.3 / Poland(川下り中) 本日 自転車0km走行 : Total 48601km走行
天気:曇
朝飯→キャンプ飯 昼飯→キャンプ飯 夕飯→キャンプ飯 / 宿→川辺で野宿

(English)
 We went down a river in a kayak.



 日増しに寒さが厳しくなっているような気がする・・・今日の明け方は特に寒かった。テント内で寝袋にくるまっていても耐えられないくらい寒い。焚き火をして火で暖をとったほうが、よっぽど温まるよ、と、朝は早々に起きて、テントから出て、木々を集めて火起こし。ふ~、温まるぜ・・・

 いやぁ、それにしても、火のありがたさを改めて、シミジミと実感。これまで、自転車旅をしていながらも、火というものは、身近なようで身近でなかった気がする。もちろん、野外で飯を作る機会はこれまでも、たくさんあった。ただ、その時は、ガソリンストーブやガスストーブ、という便利な<道具>を持っていたし、バーベキューみたいなのをやる時でも、火を起こしやすい加工された炭という便利な<既製品>を使っていた。こういうものを介しちゃうと、火を上手くコントロールして使えるようにはなるんだけど、火本来のパワーってやつを、逆に感じづらくなっちゃうのだ。その点、焚き火は、火のパワーってやつを猛烈に感じることが出来る。薪を入れすぎた時の猛烈な火の勢いったら半端ない。道具や既製品だと、カットされてしまう行き過ぎたパワーも、焚き火だとそのまま放出されちゃうのだ。

 さて、そんな感じで、いろいろなことに気づかされるワイルドライフは、どんどん興味深くなってきているし、カヤック自体も、思っていた以上に面白くて、もっと続けたい気にはなっていたのだが・・・シェンゲンの縛りがあるオイラ。ポーランドでの川下りは、4~5日を想定していて、それ以上となると、なかなかキビシイ。いや、シェンゲンってのは言い訳に使っているだけだな。実は、もう、寒さにメゲテまして。うん、ベストシーズンだったら、後一週間でも漕ぎ続けられる。ええ、シェンゲン的にはそれくらいの余裕はまだあるんです。

 が、今の時期はホント寒すぎるんですわ。寒さが気持ちを萎えさせる。

 ロベルトも「ヨシ、もうちょっと早くくればよかったのに・・・やっぱり、もう、時期的に寒すぎたな。」と言うので、予定していた場所よりも手前の地点で、今回の川下りは切り上げることに。

 地図を眺めて、この先のルートを検討。「この辺にボートハウスがあるから、今回はここで終了して、冬の間はボートハウスにカヤックを預かってもらうことにするよ。で、その手前に、国道に近い川辺があるから、ヨシは、そこでカヤックを降りて、国道に出るといい。そこからバスに乗って、荷物を預けたレストランまで一本道で行けるからさ」と。

 昨日のペースで進めれば、新しく決めたゴールポイントには明日の昼頃には到着できる。ようし、あと二日だ、と、気合を入れなおし、出発。

 着水して、漕ぎ出す二人。カヤック漕ぎはもう、慣れたものになってきた。ロベルトとの息も合って、今まで以上のハイペースで進む。

 川沿いは、基本的に木々で覆われていて、人っけは、ほぼない。たまに釣りしている人を見かけることがあったが、それはホントに稀。動くものは鳥くらいしかいない自然の中をただ、一船のカヤックだけが、静かに水の上を進んでいく・・・

 ・・・って、いや、静かではないな。

 おしゃべりロベルトがずっとしゃべってくれているので、断じて静かではない。

 日本に興味のあるロベルト、最近映画<アウトレイジ>を見たらしく、やたらと「ヤグ~ザ」について聞いてきたり、「怪獣映画では、メカゴジラが最高だな。あれは日本の映画だろ?」と、怪獣映画論を展開するエンタメ文化話だったり、

 ポーランドの若い世代は、西欧に憧れていて、地に足がついていない。借金をして自分の身の丈以上の生活をしようとしているから、今や、ポーランドはローンバブルになりつつある、ってな社会問題話だったり、

 ヨシ、きみは、旅中、5年間も女はどうしているんだってな、プライベートな話まで、いろんな話題が飛び交う。

 ただ、ロベルトさん、自分で話をするのは大好きだが、人の話を聞くのはあまり好きではないらしい。オイラが「いや、それは違うのでは?」と反論しようとすると、「いや、ヨシ、待て。今は俺の話のターンだ」と言って、話し続け、オイラに発言権を与えてくれない。で、その後続く話がえらく長くて、「で、ヨシはどう思うんだったっけ?」と、オイラのターンに戻ってきた時には、すでに、オイラは反論する気がなくなっている。

 なので、「もういいや」っていうと、「ヨシ、議論を投げ出して感情的に拗ねるのは女のやることだ。キミは大学を出ているんだろ?大学でディベートを習わなかったのか?」と返してくるので、カチンときて「じゃぁ・・・」と反論しようとすると、「まぁ、待て。俺が新たに話し始めているじゃないか」と、今度は、新たに派生した別話が延々始まる・・・これがロベルトさんのディベートスタイル。口を挟むタイミングが分からない。ちなみに、日本の大学ではディベートってあまりやらないんですよ、ロベルトさん。

 こんな感じでマイウェイなロベルトは、大学の教授。今、ちょうど次の勤め先の大学を探しているところらしい。それを聞いて、平日なのに、オイラにつきあってくれることができるのを納得した。気分転換ってことで、今回オイラを川下りに誘ってくれたってワケだったのだ。

 で、次の働き口を探すのは結構大変らしい。表向き、民主的に募集しているようでも、結局決め手になるのは、コネだったり権威に左右されるからさ、とボヤいていた。ま、その辺は、日本も同じだよ、と言ったら、ロベルトは驚いていた。「日本は民主主義の最先端をいっているはずだろ?能力あるものが上に上がれるんじゃないのか?そういうしがらみは、旧共産圏のものなのに」「いや、日本の民主主義はなんちゃってなんだよ。共産圏とは言わないまでも、全体社会主義と言った方がシックリくるような社会構造になっているんだ」と、日本について説明・・・しようとしたのだが、オイラの英語力では、どこまで伝わったのやら。

 ちょっとマイウェイすぎるところがあり、一緒に居て大変だと感じることが多々あるロベルトですが、このカヤック旅が楽しいのは、ロベルトと一緒だからってのが大きな要因になっているのは確か。ロベルトがズケズケ言ってくるから、オイラとしても、全然遠慮せずに返せる(言い返すタイミングは難しいのだが)。その結果、気を使わなくていいから、楽でいい。それでいて、頼れるところは頼れるし。なにより、ホスト側でありながら、自分が一番楽しんじゃっている様子が、オイラにとっては気持ちいいんだよね。相手を遊びに誘っておきながらも、自分が一番楽しんじゃっている感じ。

 そういえば・・・ロベルトに限らず、スペインでお世話になったカルロスも、フランスでお世話になったステファンも・・・一緒に遊んでくれるヨーロピアンのもてなしが心地いいのは、彼らが友人をもてなす時、友人に楽しんでもらわなきゃという気持ちももちろんあるんだろうが、それ以上に、自分が楽しいことをやるから、ついて来いという姿勢が根底にあるからのような気がする。

 ・・・と、そんなことを、夜、焚き火にあたりながら、マシンガンのようにしゃべり続けるロベルトの姿を見ながら思うオイラであった。
























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